『水道施設耐震工法指針・解説』におきまして、配水池のレベル2地震時の設計方法は、静的非線形解析による照査方法を採用するように示されています。これに基づき、本プログラムでも従来から、ファイバーモデル、または、M-φモデルを考慮したプッシュオーバー解析を採用しています。荷重増分法により逐次発生断面力をチェックして(弾性、ひび割れ、降伏、終局のどの状態にあるかをステップごとにチェックして)、次のステップの部材剛性の評価と、同時に地盤ばね特性を考慮し、解析モデルを再構築後、次のステップの計算を繰り返す、という処理を最終荷重ステップまで行っています。
上記のような非線形解析を行った際、エラーで解析が中断されてしまった経験は無いでしょうか。お問い合わせの頻度が高い2つのエラーとその対処方法を紹介いたします。
初期荷重の載荷時に生じるエラー
レベル2地震時の解析が始まると、まず、地震時の荷重ケースを用いて線形計算を行います。この段階でエラーが生じることは無く、おおよそ次の非線形解析時に発生いたします。次の非線形解析では、まず初期荷重を載荷して解析を行います。この段階で収束しない場合、図1のエラーが生じます。
エラーの文章に主な原因が示されておらず、さらに「入力エラー」というタイトルが入力の不備によるエラーであるかのように誤解を与えてしまっているため、このエラーに対する解決方法のお問い合わせが多く寄せられています。
本エラーの原因は、初期荷重を載荷した段階で、既にモデルが耐えられる強度を持ち合わせておらず、解析が収束しないことです。主に古い既設の配水池に対して『水道施設耐震工法指針・解説(2009年版)』の基準で照査し直した場合に多く見受けられます。本来ならば、この初期荷重を載荷して解析を行った後、ステップごとに荷重増分を行って断面力をチェックしていきますが、初期荷重を載荷した段階で解析が収束しない場合、その後の解析を行ったとしても、得られた解に妥当性や信憑性がありません。そのため、本ソフトウェアでは、考え方画面に解析が収束しない場合に解析を打ち切る設定(図2)があります。
荷重増分解析中に生じるエラー
非線形解析において荷重増分解析中に生じるエラーが図3です。
本エラーは、主に解析途中で終局してしまい、解析が収束しないまま終了している場合に生じます。こちらのエラーも部材厚あるいは鉄筋量を増やして部材剛性を補強しないと現在の載荷状態に耐えられない、という状況を示しています。この場合の水平震度−水平変位曲線の例は、図4です。ステップ7の時点で解析が打ち切られたことにより、エネルギー一定則に基づいて、弾性応答によって蓄積されたエネルギーに等しい弾塑性応答時のエネルギー量となる点を求められていません。
また、稀に上記とは真逆の原因で本エラーが生じる場合があります。例えば、幅や高さが小さい配水池は、受ける荷重やそれによる変形量も小さくなり、弾性解析に基づくエネルギーを超える位置が正しく求められなくなります。
解析が収束しなかった場合でも、この「プッシュオーバー解析時の水平震度−水平変位曲線」画面上でグラフを確認できます。レベル2地震時の非線形解析実行後、図5の箇所から上記の画面を表示することができます。是非、ご活用ください。
図5 「プッシュオーバー解析時の水平震度−水平変位曲線」画面の表示方法