「擁壁の設計・3D配筋」の任意荷重は、集中荷重、分布荷重、モーメント荷重を自由に考慮できるため多くの方にご利用頂いておりますが、設定を誤ると想定通りに作用しません。今回は任意荷重設定時に直面しやすい問題について解説します。

任意荷重に関するお問合せの中で最も多く寄せられているのが「Ｕ型擁壁の側壁に任意荷重を作用させたが安定計算に考慮されない」というものです。これは、Ｕ型擁壁特有の設定方法に起因しています。

U型擁壁では側壁の照査方法として「底版一体」と「片持ち梁」の2つの方法を用意しております。「底版一体」は側壁，底版ともにフレーム計算を用いる方法で、「片持ち梁」は側壁は片持ち梁、底版はフレーム計算を用いる方法です。

「底版一体」は側壁と底版が同じ照査方法なので問題とはなりませんが、「片持ち梁」は側壁と底版が異なる照査方法であるため、任意荷重も個別に設定する必要があります。

ポイントとなるのが「載荷部材」の設定です。「載荷部材」は、側壁設計時に作用させたい場合は左側壁又は右側壁とし、安定計算時及び底版設計時に作用させたい場合は底版とする必要があります。

つまり、安定計算に任意荷重が考慮されていない時は、「載荷部材」として「底版」を設定していないということになります。安定計算、側壁設計、底版設計の全てに考慮したい場合は、図1のように少なくとも２つの荷重を設定して頂く必要があります。

Ver.16.1.0において任意荷重に起因する慣性力に対応しましたが、この機能追加により「任意荷重の荷重タイプが変更できなくなった」というお問合せを頂くようになりました。

通常、慣性力とは自重等の鉛直力に設計水平震度を乗じて算出します。そのため、図2のように任意荷重に慣性力を考慮する設定としたケースでは、荷重タイプは全て鉛直荷重固定で変更不可となります。 そのため、鉛直荷重以外の荷重タイプを設定したい場合は、別ケースで設定する必要があります。別ケースで設定した場合でも、荷重の組み合わせでは、複数の任意荷重ケースを組み合わせることができますので問題はありません。
		▲図2　任意荷重の慣性力設定

図3は竪壁基部位置より下に作用する水平荷重を設定した状態です。このケースでは、設定した水平力は安定計算にのみ考慮し、竪壁設計時には考慮しない設計者が多いと考えられます。

しかし、設定によっては安定計算、竪壁設計時ともに考慮されます。この場合は、「考え方−部材設計」画面の「竪壁設計」において、「任意荷重の適用範囲」（図4）をご確認下さい。鉛直力，水平力毎に考慮する範囲を選択することができます。

▲図3　部材に直接作用しない任意荷重	▲図4　任意荷重の適用範囲（Ver.17の画面）