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Vol. 21

年も変わり2017年に入りました、昨年はVR元年でしたので今年は2年目となるのでしょうが、そうそうカレンダーに合わせてVRの普及が進んでいる訳でもなく(むしろカレンダーより早いかもしれませんが・・)、このコーナーではしばらくはVR元年として進めたいと思います。皆さま本年もよろしくお願いいたします。

■執筆者 町田 聡(まちだ さとし)氏 プロフィール
アンビエントメディア代表 コンテンツサービスプロデューサー。プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、AR、3DメディアのコンサルタントURCF アドバイザー、(財)プロジェクションマッピング協会 アドバイザー。著書に「3D 技術が一番わかる」技術評論社、「3D マーケティングがビジネスを変える」翔泳社 などがある。弊社非常勤顧問。(財)最先端表現技術利用推進協会 会長。
  Twitter:http://twitter.com/machida_3ds
  facebook:http://facebook.com/machida.3DS
  HP: www.ambientmedia.jp

見渡せばVR元年(3)〜モバイルVRの実際〜

今VR業界ではスマホを活用したVRが大変注目されています。
その理由は、PCやゲーム機などの本体が必要なセパレート型や大掛かりなシアター型、あるいはスタンドアローン型のVRゴーグルに対して圧倒的に端末数が多いということと、手軽に持ち運べどこでもVRが楽しめるということがあげられます。
もちろん、解像度や3Dコンテンツのリッチさ、長時間使用ができる点では専用機にはかないませんが、今後スマホの機能向上を考えるとモバイルでのVR活用がVRの普及には欠かせないと思われます。その点ではVR専用機とモバイルVRとの住み分けが進み、よりVRのすそ野が広がることが期待されます。
今回は筆者が商品化に関わったモバイルVRサービスの事例を中心に、モバイルVRの可能性をみてみます。

■モバイルVRの構成要素

ゲーム機が数年に一度の機能アップであるのに対して、スマホは年に数回新機種が出ることを考えると、ここ数年での機能アップで、場合によるとゲーム機を超える機能も登場してくる可能性があります。
そのモバイルVRは下記の要素で構成されています。

スマートフォン本体
CPU、GPU、バッテリー、表示装置、カメラ(動画、静止画、in/out)、通信機能(Wi-Fi、Bluetooth、電話)、メモリー、音声入出力、各種センサー(位置センサー、方位センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーなど) ※機種により搭載機能は異なります。

VRビューア(HMD含む)
紙製の簡易なものからゴーグルタイプの本格的なものまで様々なバリエーションがあります。
ゴーグルタイプのものはゴーグル側からメニューの選択が行えるなどスマートフォンと一体になって使用することができるものもあります。

コンテンツ
360°撮影した映像コンテンツが、しばらくの間主流になると思われます。またゲーム同様に3Dモデルを使用したリアルタイムレンダリングタイプのコンテンツもスマホで楽しむことができます。今後はゲーム機のタイトルがスマホ用にも提供されることが多くなるでしょう

配信
現在は特定のベンダーが提供するアプリを介してコンテンツをダウンロードするタイプが主流ですが、今後はブラウザ側でVR機能をサポートすることでストリーミングタイプのコンテンツが増えると思われます。
現状では各配信ベンダー別のアプリが必要なものが多く、見るコンテンツによりアクセス先やアプリを切り替える手間があり、360°映像のビューアでの視聴手順が複雑になる要因になっています。

写真1 コンパクトに折りたためるモバイルビューア、
     折りたたんで持ち運べる紙製の例 Google Cardboard
写真2 コンパクトに折りたためるモバイルビューア、
     プラスチック製の例 Baseus
写真3 ゴーグル側からスマホを操作できるHMDの例 SAMSUNG Gear VR

■モバイルVRの課題

モバイルでのVRを考える場合、前述の要素をみてみると専用機と比べていくつかの課題があることが分かります。

  1. スマホを使うので電話がかかってきてしまう
  2. バッテリーの容量が少ないので長時間視聴に向かない→電源を接続すれば問題になりませんが、モバイル性が乏しくなります
  3. ビューアに関しては、ゴーグルタイプにおいては、結局可搬性が悪く、モバイル性が損なわれる。→紙製のものでも、バラして持ち運ぶとなると大きくてモバイル性に優れているとは言えません。
  4. 配信においては、アプリでのダウンロードタイプのサービスが多く、スマホ本体のメモリー容量が足りなくなるなど課題があります。また、高画質にこだわるサービスはデータ量が大きく通信容量の制限をあっという間に超えて、その後の通信に支障がでたり、別途通信料を支払うことになってしまいます。

■QUICK360モバイルVRプラットフォーム


筆者が関わったサービスでは前述の課題をなるべく改善して、モバイル性と簡便性を現時点で極限まで高めることにフォーカスしたVRサービスを目指しています。

このサービスは、株式会社シンク・デザインが提供する「QUICK360モバイルVRプラットフォーム」で、撮影から配信、モバイルVRビューアの全てをモバイルならではの簡便性を持って追及したサービスです。
特にモバイルVRビューアは「スマホケースと一体となるわずか9gのVRビューア」ということで話題になっています。それぞれのサービスは単独でも組み合わせても利用することができます。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
図1 QUICK360のサービス全体像 

QUICK360モバイルVRビューア
折りたたんでスマホケースと一体化できるビューアで、約5インチから6インチ程度のスマホで利用できます。このモバイル性が最大の特長で、スマホのケースに挟んで見たいときにすぐ組み立てて(公称4秒で組み立て可能)、360°VR対応コンテンツや立体視対応のコンテンツをみることができます。
パッケージには説明書が同封されており、オリジナル印刷にも対応しています。
主な用途は、製品の販売促進用、あるいは各種説明用のノベルティとして配布する用途ですが、コンテンツとのセットや、スポーツ、コンサートのライブ配信でのビューアとしても利用することができます。従来ここまで可搬性に優れたVRビューアはないと思いますので、今後新たな使い道を切り開くことができると期待されています。

 
 
写真4 上:QUICK360のパッケージ 下左:ケースに入れたところ
     下中:組み立てたところ 下右:ケースなしでも使える
写真5 オリジナル印刷の例

QUICK360コンテンツ配信サービス

QUICK360のコンテンツ配信は2017年の春以降にリリースされるとのことですが、従来の多くのサービスで利用されている、アプリを利用したコンテンツをダウンロードする形式ではなく、ブラウザがあれば利用できるアプリ不要のストリーミングサービスとなっています。
専用サイトにコンテンツをアップロードすれば、見る側にはURLを知らせるだけで即座にVRコンテンツを見ることができます。従来のようにアプリをダウンロードしてサービスサイト内での独自UI操作は不要となりスムーズにコンテンツを見ることができます。URLはQRコード化しておくことで、配布するビューアの説明書や、カタログなどの印刷物に印刷して配布することが可能ですので、特定のコンテンツを提供するには適した方法といえます。

写真6 コンテンツのURLを印刷して配布した例

QUICK360撮影・制作サービス

VR撮影用のコンシューマレベルの機材から放送や劇場映画にも耐えられるプロ用機材を使用した撮影まで、幅広く対応できますが、中でもコンシューマ用の機材を利用した手ごろな撮影サービスにも注力しています。これでVRに関する撮影、配信、視聴の全てにおいて手軽に活用できるプラットフォームが完成するわけです。
下記はYoutubeのVR配信機能で見ることのできるコンシューマ用のVRカメラで撮影したサンプル映像です。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
図2 QUICK360の制作サービスのサンプルンテンツ

参考リンク: http://www.think-d.com/quick360/
※社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。



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