VRの進化がもたらす新しい気づきの世界
Day2午後の部前半は、「第5回最先端表技協・最新テクノロジーアートセッション」を実施しました。
まず、最先端表現技術利用推進協会の長谷川章会長があいさつ。会長就任から1年を迎える中で斯界の技術の飛躍的な進歩への実感を述懐。その一端として、バーチャルな技術が現実の世界に多く入ってきたことで、時には「これは現実なのか、バーチャルなのか」とすぐに判別できないほどと語ります。また、お金や言葉、時間も引き合いに出しつつ、人間が生きていること自体もバーチャルなのでは。その意味で情報はすべて時間に管理され、しかも「過去の情報の集まりが情報」であり、「(私たちは)過去の社会に住んでいる(のと同義)」で「(それが)長く行われてきた」との観点を提示。コンピュータや5Gに象徴される通信の高速化により向かう先は、実はそれが「組織から独立した自分自身を知るための道具」になっていくのでは、との考え方を説きます。そうした思いを踏まえ、表現技術検定(まちづくり/建設ICT)やガイドブックの出版などこれまでの表技協としての取組を振り返ります。
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表技協 長谷川章会長 デジタル掛軸(DKFORUM)
Biennial of The Americas Denver 2019 |
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これを受け、ジャーナリストの服部桂氏が「VRが目指す次世代の情報環境とは?」と題して特別講演。1989年に最初のVRプロダクト(コミュニケーション装置)が公開された当時に遡る自身のVRとの関わり、当時と今日におけるVR利用環境の彼我の差について紹介。その上で、1990年頃の米日におけるVR(当時は「人工現実感」、その後訳語は様々に変遷)への見方と取組、それに遡るコンピュータの黎明期や冷戦時代を経て軍事的ニーズなどを反映したシミュレータやゲーム、宇宙開発、医療分野などにおける現在のVR利用に類似した(VRではない)表現技術の取組、その後の視覚のみならず触覚も含むVR利用技術の進展と適用分野の多様化、4K解像度や5Gといった先進ICTとリンクしたコンテンツの広がりへと話を展開。さらに、VRの中で高解像度の生態系が自律的に動く世界、VRに現実世界を付加したAR、様々な環境をVRにより完全なシミュレーション空間(現実世界とパラレル)にしてその中で自動運転などの試行と改善を繰り返すような使い方(ミラーワールド)などの例を列挙。このような情報の世界の中で個人の視点を取り戻す(自分自身を世界の中心に置き自分がどう動くかのメタファーとなる)のがVR、との見方を提示。加えて、コンピュータの進化したものがVRであり、AIを含め、これからは「役に立つ」ということが一層重要。したがって効率化や利益を得る目的のみならず、VRを通じ新しい人間としての気づきを得ることが出来れば、これまでとは大きく異なる世界が創出されてくるはずと説きます。
続いて、第3回となる羽倉賞発表と表彰式を実施。今年はハイレベルな作品が多数集まり、羽倉賞3作品/フォーラムエイト賞1作品/奨励賞3作品および、新たに創設されたノミネート賞3作品の、合計10作品が選出されました。
1作品目は、金沢工業大学・DK art cafeプロジェクト「金沢5G gate 2019 ”Mimassi”」。金沢市、民間企業、大学の連携により、5G技術を市民参加型のイベントに活用する初の試みが評価されました。
2作品目は、愛知工業大学 情報科学部 / ソニー / NTTドコモ「インタラクティブプロジェクションマッピング」。移動するカート側面の映像と池を表す床面投影映像が連動し、動きに反応して泳ぐ鯉が表現されたインタラクティブなシステムの技術が注目されました。
3作品目はWONDER VISION TECHNO LABORATORY株式会社「WV Sphere 5.2」。持ち運び可能な大型半球体スクリーンシステムが日本各地のイベントで活用され、複数人が同時に様々な空間体験を共有しました。
フォーラムエイト賞はONI「存在の音色 Sounds and colors of life」。立体音響、電子音楽生演奏、シャボン玉がプログラミングでコントロールされ、幻想的で優しい世界観を演出するインスタレーション作品です。
また、奨励賞は、理化学研究所/早稲田大学「Melody Slot Machine」、明治大学総合数理学部 福地研究室「3D能 葵上 - 船弁慶」、株式会社ソリッドレイ研究所「360°3Dシアター」がそれぞれ受賞。ノミネート賞は、宝塚大学東京メディア芸術学部
チームアステリズム「スペース -星の体験-」、NTTサービスエボリューション研究所/北海道大学HCI研究室「インタラクティブ360度テーブルトップ型
3D映像表示技術」、Juvenileプロジェクトピタゴラ班 立命館大学情報理工学部「MRピタゴラ装置」の受賞となりました。
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羽倉賞講評の様子:服部 氏(左)、長谷川 氏(右) |
受賞者の皆様 |
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