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ユーザ紹介第61回
社団法人 日本建設機械化協会 施工技術総合研究所
Japan Construction Method and
Machinery Research Institute, JCMA

施工技術総合研究所のホームページ
http://www.cmi.or.jp

建設ロボット向け3次元情報表示技術への活用、
広がる3次元リアルタイムVRの新たな可能性


 今回は、富士山のふもと富士市に位置し、15万uの広大な敷地に大規模かつ多様な試験施設などを擁する、社団法人日本建設機械化協会の附属機関「施工技術総合研究所」をご紹介いたします。

 フォーラムエイトの「UC-win/Road」を導入いただくきっかけとなったのは、同研究所の広範に及ぶ業務の中でも、情報通信技術(IT)やロボット技術をベースに新たな施工システムの開発を目指そうというプロジェクトへの対応から。とくに、人と建設ロボットとが協調して作業を行う際のインターフェースをどうするかという研究で、情報を3次元的に視覚化するツールとして注目されたことによります。そこで、同プロジェクトに加え、情報化施工に関するさまざまな取り組みを統括しておられる、同研究所研究第四部次長の上石(あげいし)修二氏にお話を伺いました。

■主として公的機関からの委託受け多様な研究開発を実施

 建設事業の機械化促進を通じ、国土の開発と経済の発展に寄与することを目的として50年に発足した「社団法人日本建設機械化協会」。「施工技術総合研究所」はその中で、建設機械および機械化施工全般に関わる試験研究を実施し、建設機械の技術向上や建設事業の合理化をターゲットとする研究機関として64年に設立(当初は「建設機械化研究所」、02年に改称)されました。

 雲以外に遮るものの何もない雄大な富士山の大パノラマ。この恵まれた環境の研究拠点(東西450m・南北350mのエリア)には、一周750mのテストコース、音響パワーレベル測定場、骨材破砕試験設備、大型疲労試験機はじめ各種試験機・試験場 ― など多彩な屋内・屋外施設を設置。併せて、職員74名(そのうち、事務職員14名、土木・機械・資源・地質・電気系の技術職員60名:04年11月現在)を配置。土工、岩石工、コンクリート工、トンネル工、基礎工、ダム工、橋梁工といった建設工事全般にわたる機械化施工法や建設機械に関する調査研究、開発、試験研究、技術指導などが実施されています。

 もともと協会が国内の主な建設機械メーカーやそのユーザである建設業者らを中心に構成されていることもあり、同研究所では基本的に国土交通省や地方公共団体、各種インフラ整備発注機関からの委託を受ける形で社会的もしくは業界共通のニーズに基づいてこれらの業務に取り組んでいます。

 上石修二氏はそうした側面を示す特徴的な開発事例として、「無人化施工技術(吹付けロボット)」を挙げます。これは、富士山西側の山頂から中腹にかけて土砂が流下し続ける「大沢崩れ」に対し、国の直轄砂防事業が69年から、さらにその発生源(源頭域)への調査工事が82年からスタート。とくに源頭域は急峻かつ狭隘、高標高の危険箇所である上、景観や環境への配慮も求められたことなどから、国交省富士砂防事務所の委託により同研究所が98年以降、安全を確保しつつそれらの難題をクリアする手法として「無人化施工技術」の開発・導入を進めてきたもの。その結果、崩れやすいスコリア層への吹付けはもちろん、多眼ステレオカメラを用いた距離測定装置などにより吹付け厚さ分布と勾配の出来形も遠隔操作で管理することが可能になりました。

 「もう一つ、ちょっと変り種の『飛行船によるシールドトンネル監視システム』があります」
 これは、飛行船がシールドトンネル内にぶつからないよう走行しながら周辺の映像を記録するという点検システム。もともと人が目視により点検するしかなかったシールドトンネルの維持管理をシステム化しようというもので、同研究所が04年度に開発、試行運用も実施されています。


■情報化施工ではビジョン検討から各要領(案)策定、ISO化まで関与

 「一連の建設事業プロセスにわたって情報を利活用することでの、とくに施工プロセスにおける便益を想定、そのためのさまざまなアプリケーションについて検討を行ってきています」

 上石修二氏は自身が関わる主要業務の一つ、「情報化施工」に対する取り組みをこう説明します。
 国交省が01年3月に策定して以来、情報化施工具体化のベースと位置づけられてきた「情報化施工のビジョン」。その内容は、そもそも同省が97年度から「情報化施工促進検討委員会(委員長:大林成行元東京理科大学教授)」において進めてきた検討に基づいています。同研究所はその事務局の一端を担っており、いわば、情報化施工のスタート時から関わってきたことになるわけです。

 まず、国交省により情報化施工の第一弾として03年12月に策定されたのが「TS-GPSを用いた盛土の締固め情報化施工管理要領(案)」。これは、トータルステーション(TS)やGPS(汎地球測位システム)を使いリアルタイムに締固め機械の位置を測定することで盛土面の締固め回数を把握、同時に盛土の品質管理を面的に行えるというもの。続いて現在は、
(1)出来形管理に必要な設計情報や出来形情報を3次元データ化し、TSで出来形の3次元座標データを取得して専用プログラムにより施工管理や帳票管理を行おうという「TSを用いた出来形管理要領(案)」
(2)3次元設計データで直接重機を制御し、さらに締固め機械の作業位置を連続管理しながらTSによる3次元測量データで出来形を測定するという「舗装工の情報化施工要領(案)」 ― などの来年度策定を目指した動きが見られます。

 これらについても、同研究所では主導する国交省の各地整や同省国土技術政策総合研究所(国総研)、独立行政法人土木研究所(土研)などと連携しながら、事前の施工実験や要領(案)に基づく試行工事に取り組んできています。

 情報化施工の導入が次第にさまざまな現場へ広がるのと並行して、それぞれのシステムで扱われるデータ交換の標準化も求められてきました。現在、データフォーマットのISO化が取り組まれており、上石修二氏自身も委員として参加。とくに「ISO/TC/127/WG2(土木機械及び走行式道路建設機械−施工現場情報交換)」においては現在、日本が情報モデルやデータ辞書の作成に当たって主導的な役割を果たしています。


■建設ロボットでは3次元情報の扱い、人とのインターフェースがカギに

 研究所内で上石修二氏が統括するもう一つのテーマが建設ロボットの研究です。これについては、国総研による「3次元情報を用いた施工管理技術の開発」と、土研による「建設機械のIT施工技術の開発」という同時進行中の、それぞれのプロジェクトが取り組みの核となっています。

 そのうち前者は、施工管理に関する情報が3次元CADデータあるいはプロダクトモデルでやり取りされる将来を想定。今年度までの予定で、3次元情報の計測・管理とその利活用技術という切り口から「どのようなモデルで現場に渡し、その結果をどう評価するか」の検討と併せ、国総研が中心となって提案された土工の標準的なモデルを基に実証実験が行われています。
 同研究所はその中で、とくにモデルおよびそのベースとなる情報利用部分の整理、実証実験、新たに必要となる施工管理基準の検討などに力を入れています。

 一方、後者では建設ロボットの位置づけを、単に自動化する機械としてではなく、さまざまな情報の利用が可能な環境で働くものと捉えており、上石修二氏自身そのように指向していく必要があると見ています。

 そこでまず、リアルタイム施工状況を3次元情報として計測することを狙いに、ロボットに必要となる外界センサーの機能面からレーザーシステムとステレオ処理に関するシステム開発に努めています。

 また、「人と建設ロボットがいかに協調して作業していくか」というインターフェースが非常に重要となるとの観点から、07年度までの5ヵ年にわたるプロジェクトでもその検討が進められています。その一例が「3次元のオペレーター支援ビューア」の研究です。これは、3次元CADデータから作成される建設ロボットの施工目標と外界センサーから得られる情報とを比較。さらに、オペレーターとも対話できるといったシステムを想定。とくにそこでの、3次元CADデータと現地の形状、あるいは映像などをいかに処理し、オペレーターへ情報として受け渡すかについて、「UC-win/Road」をベースとした検討が続けられているわけです。

 「多発する自然災害に対し、小型飛行体などにより取得した情報から被害状況をいかに早期把握するかといったことが、研究所の新たな検討課題として位置づけられてきています」
 そこでも、人が目視により判断してきた部分にITを導入しようという従来のアプローチを施工から維持管理へと広げていくことで、情報の新たな活用可能性につながるものと考えられます。

 また、無人化施工技術はもとより災害復旧シーンに応用できる可能性が高い。そのため、上石修二氏はそうした対応を図る際にも、これまでの取り組みの発展形となる新しい建設ロボットのあり方が重なってくるはずとの見方を述べます。

 お忙しい中、取材にご対応頂いた関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。
施工技術総合研究所
▲施工技術総合研究所 本館

研究第四部のみなさん
▲研究第四部のみなさん

研究第四部 上石修二次長
▲研究第四部
  上石修二次長
UC-win/Roadサンプル画像
UC-win/Roadサンプル画像
UC-win/Roadサンプル画像
施工技術総合研究所の業務内容
▲施工技術総合研究所の業務内容
敷地内での実験風景
▲敷地内での実験風景
無人化施工技術(吹付けロボット)の機械構成
▲無人化施工技術(吹付けロボット)の機械構成
飛行船によるシールドトンネル監視システム
▲飛行船によるシールドトンネル監視システム




  
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