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自立式のChangの方法による根入れ長で、土留め壁の剛性の
大きなものほど根入れ長が長くなるのはなぜか。 |
「道路土工 仮設構造物工指針(平成11年3月)社団法人日本道路協会」(以下、「仮設指針」と略します)P.152に、自立式土留め工の設計について記載されています。これによると、従来までは、受働土圧によるモーメントと主働土圧によるモーメントのつり合いを基本とし根入れ長を求め、このときのつり合い位置を固定端として断面算定を行っていましたが、実際の土留め壁の挙動とは異なる場合があるとして、「弾性床上の半無限長の杭」(Changの方法)で設計することにしたとあります。
このChangの方法によると、自立式土留めの根入れ長(lo)は、式@にて算出することになります。式中のβ値は、杭の特性値と呼ばれているもので、式Aで求めます。
ここに、
kH:水平方向地盤反力係数で、通常、1/βの範囲の平均値(kN/m3)
B:土留め壁の幅で、親杭は杭幅、鋼矢板の場合は単位幅(m) E:土留め壁のヤング係数(kN/m2) I:土留め壁の断面二次モーメント(m4)
今、kH=100000(kN/m2)(N値15に相当)、E=2.0×10^8(kN/m2)として、鋼矢板のV型、W型を例に、β値、並びに、根入れ長を計算し比較した結果を表-1に示します。表からも明らかなように、W型の方が根入れ長が長くなることがわかります。これは、土留め壁の剛性Iを大きなものにすると、特性値β(式A)の分母が大きくなり、結果的にβ値が小さくなるために、2.5/βは大きくなるという訳です。
▼表-1 鋼矢板V型、W型の根入れ長比較結果
鋼矢板 |
断面二次モーメント(m4) |
特性値β(m-1) |
根入れ長lo(m) |
V型 |
17400×10^-8 |
0.9206 |
2.715 |
W型 |
38600×10^-8 |
0.7544 |
3.314 |
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土留め壁の剛性を増したのだから根入れ長は小さくなるはずと錯覚しがちですが、計算式の仕組み上、根入れ長は大きくなりますので注意が必要です。
似たような計算結果として、図-1に示すように、自立状態での必要全長(L1)が、2次掘削時の必要全長(L2)より長くなる場合が稀にあります。前者はChangの方法、後者はモーメントのつり合い法による考え方の相違に起因するものです。このような場合に、土留め壁の長さをL1にするのか、L2にするのかは大変悩ましい問題であると思われますが、この点につきましては、設計者のご判断に委ねるものとし、ここでは、L1がL2よりも長くなるチェックポイントの1つに土留め壁の剛性が絡んでいることをご理解頂きたいと思います。
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▲図-1 必要全長が「自立時(L1)>2次掘削時(L2)」となる場合 |
なお、余談ですが、2.5/βの「2.5」倍について仮設指針では次のように説明しています。「一般に、土留め壁の根入れ長は杭が半無限長とみなせる長さとして3/β以上といわれていますが、2.5/βと比較して、杭頭変位及び曲げモーメントの差が数%であることや、根入れ長が長い場合に、土留め壁を引抜く際の周辺地盤への影響が大きくなることなどを考慮して根入れ長と定めた。」としています。
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(Up&Coming '06 盛夏の号掲載) |
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