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LECTURE MEETING 4

■講師プロフィール

井嶋克志「イジマ カツシ」 <工学博士>

専攻: 構造工学
経歴: 九州大学工学部土木工学科卒業後,九州大学大学院,佐賀大学理工学部建設工学科講師,助教授を経て,現在,佐賀大学理工学部都市工学科教授
受賞: 1985年土木学会論文奨励賞



■講演レポート

 井嶋先生は、耐震工学を主とした研究がご専門で、幾何学的非線形解析にも詳しく、弊社UC-win/FRAME(3D)計算部の開発者であります。また,研究室では、UC-win/FRAME(3D)を卒業研究にご活用いただいております。

 近年は、桁衝突について研究を進められ、今回は現道路橋示方書耐震設計編に述べられている「十分な遊間の確保」について相反する内容となる「地震時桁衝突について」と題してホットな内容を講演していただきました。本講演骨子を以下に紹介します。

遊間の現状と桁変位抑制:
ゴム・免震支承は、主として桁慣性力の低減および橋脚、橋台への分散を目的に設置されている。また、支承破壊までの靱性が大きいという特徴を有するため、斜橋,曲線橋に使用し、支承が破壊しなければ落橋は発生しない構造システムとしている。このシステムを維持するため現行示方書では十分な遊間が確保することが必要とされている。
 それに対して、桁の温度伸張内に遊間を留め、桁と橋台を衝突させることで桁変位を抑制する方法も考えられる。この設計概念は、ニュージーランドにおいてノックオフ構造(写真1)として利用されている。橋台が小さくて済み、ノックオフ構造によるエネルギー吸収により桁変位の抑制も期待できる。

地震時桁衝突振動の不確定性:
検討の対象は、斜橋,曲線橋とし、回転を考慮する。シミュレーション、実験ともにモデルへ2方向地震波を入力する。もっとも単純な1自由度弾性衝突挙動であっても、定常入力に対するカオス性の研究でも示されているように、桁の衝突応答は非常に複雑である。そのため、斜橋,曲線橋は、初期値鋭敏性と相通じる入力時振動の僅かな差異で大きな応答差異を招くことがシミュレーション、実験の両方で示された(図1,図2)。さらに、図より変位が小さいほどカオス性が生じず理論解ともほぼ一致している。

桁衝突事象の確定的事項:
変動が激しい応答特性においては、シミュレーションとしての衝突応答時刻歴の精度向上に力点を置くよりも、その最大応答値の上限に着目し、これを予測することが緩衝装置の効果や衝突箇所の破壊状況を解析する上で有用である。時刻歴がカオスであっても衝突振動事象はエネルギー原理に支配されるため、最大応答値の上限を規定することは可能である。この上限値を簡便に得ることが高精度応答時刻歴を求めるより安全性評価に適する(図3)。

まとめ:
1. 桁衝突振動の時刻歴応答は不確定性を有する現象である。
2. 不確定現象であっても次の確定事項が成り立つ。
1) 遊間が小さければ,変位は小さいことは当然であるが,衝突速度も小さい
2) 最大応答には不確定現象であっても、上限が存在する。
3. 最大エネルギーに基づく最大衝突速度の上限値は実験値およびシミュレーション値の結果を比較的良い精度で推定している。



参考文献

応答スペクトルを用いた単一任意形状の地震時最大衝突速度予測,構造工学論文集,Vol.50A,土木学会,pp457-466,2004.3
薩摩佳祐,井嶋克志,帯屋洋之,川崎徳明:橋梁桁衝突振動応答の不確定性に関する実験的研究,土木学会第60回年次学術講演会,I-124,2005.9


講演日/講演会場
 ・2005年10月 6日(木)/福岡会場

▲教授 井嶋 克志 氏


▲セミナー会場


▲写真1 ノックオフ構造


▲図1 曲線桁の地震時最大衝突速度


▲図2 斜桁の地震時最大衝突速度


▲図3 曲線桁最大衝突速度上限値
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