ファイバー要素を用いたモデル化に関して、H29道路橋示方書X編p.177には「鉄筋コンクリートラーメン橋脚の終局水平耐力を精度良く算出するためには,橋脚を鉄筋要素やコンクリート要素に分割し,これらの応力度−ひずみ曲線に基づく非線形解析を行うのが望ましい」と解説されています。しかし、具体的なモデル化方法については触れられていません。
そこで、国立研究開発法人土木研究所の土研資料第4262号「鉄筋コンクリート橋脚の地震時限界状態の評価手法に関する研究」(平成25年3月)を参照します。当該資料にファイバー要素を用いた解析事例と具体的なモデル化方法が記載されています。ここでは、その解析事例を参考にした設定例を紹介いたします。
図1に示すように、単柱式鉄筋コンクリート橋脚に対して基部をファイバー要素とします。要素長は塑性ヒンジ長Lpとします。
ファイバー断面は、コアコンクリート部(黒色部分)とかぶりコンクリート部(青色部分)に分けてメッシュ分割します(図2)。
コアコンクリートの応力ひずみ曲線
コアコンクリート部は横拘束効果を考慮できますので、カテゴリを「Hoshikuma」とし、鉄筋による横拘束効果を設定します(図3)。
かぶりコンクリートの応力ひずみ曲線
かぶりコンクリート部もカテゴリを「Hoshikuma」としますが、横拘束筋がなく、横拘束筋の体積比が0の場合、最大応力後の下降勾配を算出することができないという問題があります。そのため、土研資料第4262号では、横拘束筋体積比を十分に小さな値として0.05%を入力して下降勾配を算出しています(図4)。
ここで、参考のためにコアコンクリートとかぶりコンクリートのヒステリシスを重ねて比較すると図5のようになります。
コファイバー要素のM−φ履歴応答
ファイバー要素のM−φ履歴応答を図6に示します。比較のために、M−φ特性を緑線で表示しています。M−φ特性は、圧縮側のかぶりコンクリートの応力負担を考えず、側方部分のかぶりコンクリートに横拘束効果を考慮した応力ひずみ曲線を設定して算出されたものですので、ファイバー要素と条件が異なり、単純に比較できませんが、概ね一致していると言えます。
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