道路橋の動的解析では3波形の地震動を与えます。今回は、各波形の最大加速度の符号と抽出キーの関係について考察します。
地震波形の最大加速度と解析結果の例
図1は、日本道路協会から提供されている「タイプT、V種地盤」の3波形です。最大加速度はそれぞれ正側、負側、負側にあります。
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図1 日本道路協会「タイプT、V種地盤用」の3波形 |
この場合に多くみられる抽出キーの結果は表1のとおりです。Max、Min、Absはそれぞれ最大、最小、絶対値を意味します。表中の数値は一例です。この結果は、入力した波形の最大最小加速度と呼応しています。たとえば、波形2に着目すると、地震波形の最大加速度は負側にあり、最大応答値も負側に発生しています。波形1、波形3も同様です。
製品名 |
波形1 |
波形2 |
波形3 |
平均 |
Max |
12 |
4 |
8 |
8 |
Min |
-6 |
-10 |
-11 |
-9 |
Abs |
12 |
10 |
11 |
11 |
表1 最大応答と平均値
表1では、各波形の最大応答を平均した結果も掲載しています。表より、Absが11で最も大きな値となっています。MaxやMinは11よりも小さい値です。この理由は、各波形のMaxどうしの平均、Minどうしの平均を求めているからです。
このように、抽出キーの種類によって応答値の平均が変わります。一見すると抽出キーの種類としてAbsを採用しておけば設計上安全側のように思いますが、常に安全側になるとは限りません。断面の配筋状態が上下あるいは左右に非対称な場合は、非対称型のM−φ特性を用いることがあり、せん断耐力も上下あるいは左右で同じになりません。断面や構造が非対称な場合には、抽出キーとしてAbsを採用できません。
3波形の最大加速度を揃える
波形の加速度の正負には物理的な意味はありませんので、図2のように3波形とも正側に最大加速度が存在するように、波形2と波形3の正負を逆転させた波形を使うと、抽出キーの結果は表2のようになります。各ランの最大応答はMax側に揃います。平均の結果をみると、抽出キーMaxと抽出キーAbsは同じになります。これは抽出キーの取り方によって異なる結果を招くという設計ミス防止につながり、さらには、解析結果の解釈も容易になるという利点があります。
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図2 日本道路協会「タイプT、V種地盤用」の3波形 |
製品名 |
波形1 |
波形2 |
波形3 |
平均 |
Max |
12 |
10 |
11 |
11 |
Min |
-6 |
-4 |
-8 |
-6 |
Abs |
12 |
10 |
11 |
11 |
表2 正側に揃えた波形による最大応答と平均値
最大加速度を揃えた地震波
最大加速度を正側に揃えた波形(*.esx)がインストールフォルダに収録されています。デフォルトのインストール状態では下記の場所です。ぜひ、ご利用ください。
C:\Program Files (x86)\FORUM 8\Engineers Studio 8.0.1\Samples\Waves\BridgeDesign-H24
L1-I_II_III.esx (レベル1、T種、U種、V種地盤用の3波形)
L2-TypeI-I.esx (レベル2タイプT、T種地盤用の3波形)
L2-TypeI-II.esx (レベル2タイプT、U種地盤用の3波形)
L2-TypeI-III.esx (レベル2タイプT、V種地盤用の3波形)
L2-TypeII-I.esx (レベル2タイプU、T種地盤用の3波形)
L2-TypeII-II.esx (レベル2タイプU、U種地盤用の3波形)
L2-TypeII-III.esx (レベル2タイプU、V種地盤用の3波形)
まとめ
抽出キーAbsを採用しておけば、いつでも設計上安全側のようにみえますが、断面の配筋状態や構造物が非対称な場合はAbsを採用できません。そのような場合にMaxあるいはMinの平均値が最大となるように、波形の最大加速度の符号を揃えておくことが重要になります。 |
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(Up&Coming '19 春の号掲載) |
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