はじめに
河川堤防の液状化対策の手引きに準じた設計計算例(国立研究開発法人土木研究所地質・地盤研究グループ土質・振動チームのホームページにて公開)が平成29年8月に更新されました。
この設計例の中で「地盤改良の設計計算」がサポートしている「固結工法による対策」の例「第5章 計算例3:固結工法による対策」についての設計の考え方に関わる変更点をご紹介いたします。
※ここでは、細かい数値の修正等には触れておりません。正誤表も公開されておりますので、そちらでご確認下さい。
受働側の壁面摩擦角度
旧設計例では、壁面摩擦角度 δ=φ/2としていましたが、新しい設計例では、「受働土圧係数の算定においては、壁面摩擦角度δが大きくなる場合、受働土圧が過大となるため、受働側の壁面摩擦角はδ=0°として適用する」が追記され、δ=0°で計算されています。受働側の壁面摩擦角度が大きくなると、受働土圧による鉛直成分(上方向の力)がその他の鉛直成分(下方向の力)を上回り、鉛直力が負で算定されるまたは極端に小さくなるケースがあります。土圧による鉛直成分の算定式は下記の通りなので、壁面摩擦角度δを0°とした場合は、受働側の土圧による鉛直成分は考慮しないという事になります。
※粘性土については、受働側の鉛直成分は考慮されません。
砂質土 |
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プログラムでは、壁面摩擦角度は、主働側、受働側それぞれで設定が可能です。上記の対応については、主働側の壁面摩擦角度を0°としてご入力下さい。
水平震度の深度方向の低減係数の算定方法
深度方向に水平震度を低減する場合、それぞれの算定位置深度で低減係数を算定していましたが、改良体底面深度を用いて低減するように修正されました。下記の文言が追記されました。
「改良地盤上面に載る盛土の慣性力の算定においては、改良地盤上面に載る盛土が改良地盤と一体で挙動すること、および改良地盤では振動が大きく増幅しないことが考えられるため、水平震度の深度方向の低減計算に用いる震度は、改良体底面深度とする。ただし、盛土が高い場合等、周囲地盤の挙動の影響が大きいと考えられる場合はには、別途考慮してもよい。」
プログラムでは、改良体底面深度での低減を行っていますので、変更はございません。
改良地盤の慣性力低減に用いる深度
改良地盤の慣性力の低減に用いる深度について、検討位置の深度を用いていましたが、改良体底面深度を用いるように下記の文言が追記されました。
「※ここで、改良地盤の慣性力の低減に用いる深度については、改良地盤中は地震動が増幅しないと想定されるため、改良体底面深度を用いる」
プログラムでは、改良体底面深度での低減を行っていますので、変更はございません。
抜け出しせん断照査における検討深度zの扱い
抜け出しせん断力の照査における検討深度zの取り方が地表面からの深度から改良体上面からの検討位置の深度に修正されました。考慮する受働土圧、主働土圧も改良体上面から検討深度までの範囲に修正されています。
プログラムでは、旧設計例に準じて地表面からの深度を用いていたため、Ver.6.0.5にて改良体上面からの深度とするように修正を行いました。土圧の適用範囲も改良体上面からに変更しております。
サンプルデータ
プログラムには「第5章 計算例3:固結工法による対策 (その1)」を参考にしたサンプルデータ「sampleLiq02.F4S」が付属しておりますが、平成29年版では、改良体のモデル(改良幅、形状)も変更となっています。Ver.6.0.5では、平成29年版を参考にしたサンプルデータ「sampleLiq03.F4S」を追加しておりますので、設計例と併せてご参照下さい。 |
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図1 検討深度の取り方 |
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図2 設計例のモデル |
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