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鉄道線形の入力 Part.2
 

前号において、鉄道線形を入力する概要をご紹介しました。今回は測量中心線の入力について少し詳しくご紹介します。

 測量中心線とは?

測量中心線とはひとつの路線の背骨の様なものです。ここでいう路線とは施設管理上の区分であり、列車の運転系統の意味ではありません。測量中心線を基にして各路線の距離程を定義します。鉄道線路の多くの施設はこの距離程によって、その位置が特定されます。距離程は通常は起点駅の駅中心を0k000m000とし、測量中心線に沿った実距離として表現されます。

測量中心線は鉄道路線の設計、施工、運行、保守のいずれにも重要ですが、施設の完成後には私たちの目には見えません。見ることが可能なのは、高架橋・トンネルなどの構造物および軌道です。これらにもそれぞれ中心線を定義しますが、ここでは詳細な解説は省きます。
鉄道の新設工事のとき一定期間だけ測量中心線をみることが可能です。まず施工の初期に線路の敷設予定地を粗く造成します。この上に路線の設計で位置を定められた測量中心線に併せて一定間隔で測量杭を設置します。この測量杭の列が測量中心線を表します。構造物や軌道などはこの測量中心線を基準として、位置の割り出しを行います。構造物等の工事が始まれば測量中心線の測量杭は原則として撤去されます。

なお、鉄道では測量中心線の他に「構造物中心線」「軌道中心線」の2種類の中心線を考えます。詳しい説明は省略しますが、例としては下図の様になります。

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■図1 測量中心点
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■図2 構造物中心線と軌道中心線
 線形要素について

線形要素の種類として、「直線」「円弧」「緩和曲線」の三つに大別されます。緩和曲線はさらに、「三次放物線」「サイン半波長曲線」「クロソイド曲線」に分かれます。主に使用されるのはそれぞれ、JRの在来線では三次放物線、新幹線ではサイン半波長曲線です。地下鉄など設置条件が厳しいところではクロソイド曲線が使用されることもあります。

実は、測量中心線において緩和曲線はあまり重要ではありません。線形の概略設計のとき作業を簡便にするため、軌道中心線の線形を測量中心線のオフセットとして作成する場合があります。このとき測量中心線に緩和曲線を考慮します。厳密には「緩和曲線のオフセット」は緩和曲線ではありませんが、概略設計ではその程度の誤差が容認されるとしています。したがって測量中心線での緩和曲線は「オフセットのための基準線」という程度の意味です。ちなみに、詳細設計時の軌道中心線については厳密に緩和曲線を取扱います。

 横断形状

それでは、実際に線形がどの様な手順で作成されるのでしょうか?以下に基本的な手順としてIP法を紹介します。

BP、IP、EPの決定

線形の検討結果から得られたBP(路線の起点)、IP(直線要素を延長した交点、複数可)、EP(路線の終点)の位置を入力します。ここでIPの両側の直線の交差角をIAと呼びます。

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■図3

各区間にどの断面が適用されるかについては、原則として現在地形と施工基面高の上下関係で自動的に設定されます。施工基面の方が高い場合は盛土または橋梁、低い場合は切土またはトンネルになります。


曲線諸元の決定

IPごとに、円曲線の半径、緩和曲線の種類と長さを入力します。

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■図4 

円曲線の設置

与えられた半径で、着目するIPの両側の直線に接する円を作成します。


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■図5

円曲線のシフトと緩和曲線の設置

緩和曲線についてその始点と終点の位置を計算により求めます。それにより得られる緩和曲線の円弧側の端点の位置まで円曲線を移動させます。


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■図6
上記の方法があてはめられない、設置条件が厳しい場所にはIP法は使用されません。設置条件が厳しいとは例えば以下のような場所です。
  • ヘアピンカーブなどの様にIAが180度以上になる。
  • 複心曲線(半径が異なる二つの円曲線がひとつの緩和曲線をはさんでつながる)を含む。
  • 反向曲線(緩和曲線の終点側の点が次の逆向きの緩和曲線の始点に一致する)を含む。
  • 卵形曲線(起点側緩和曲線の終点と終点側緩和曲線の始点が一致する)を含む。
一方、IP法は鉄道特有の方法ではなく、道路の線形設計でも使用されます。また、図面等の表記について、緩和曲線の始点の略記は道路では ‘KA’ですが、鉄道では‘BTC’(起点側の緩和曲線の始点)および、‘ECC’(終点側の緩和曲線の始点)、同様に緩和曲線の終点はそれぞれ、‘KE’、‘BCC’、および‘ETC’となります。

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■図7
 IP法以外の平面線形設置方法

UC-win/Roadでは緩和曲線の設置方法として、IP法の他に、円曲線や緩和曲線(クロソイドに限る)を単独で作成することもできます。この方法は、上記の「設置条件が厳しい場所」で使用されます。この場合には、事前に他のシステムを用いて、円曲線や緩和曲線の個別のIPの座標値、始点と終点の曲率半径を求めておかなければなりません。

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■図8
 バッチ型入力

上記の入力は、UC-win/Roadの画面上で対話的に行うものですが、同等のデータを所定のCSVファイルとしてMS-Excel等で作成し、一括してUC-win/Roadに与えるバッチ型の入力も可能です。本誌の編集の都合上、「IP法」とは別項目にしていますが、バッチ型入力のデータは実質的にはIP法によるものです。

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■図9
 その他

これまで述べたとおり、測量中心線は路線の平面形状を表現する概念上の線であり、現地での実体はありません。したがって、測量中心線に縦断曲線、横断面を与えることはできません。UC-win/Roadではシステムの便宜上、測量中心線の縦断形状を表示する画面がありますが、実務上は使用いたしません。

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■(左)小型鉄道シミュレータ (右)鉄道シミュレータ
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