Vol.11
UC-win/Road Ver.6 |
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太 |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー、有償セミナーを体験レポート |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望など、全12回にわたってお届けする予定です。
【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp |
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●はじめに
建設ITジャーナリストの家入龍太です。
3次元リアルタイムバーチャルリアリティー(VR)ソフトウェア「UC-win/Road」は、以前からの道路計画や設計のほか、まちづくりの合意形成、自動車開発、安全運転のトレーニング、洪水や津波など災害シミュレーション結果の表現ツールとしても用途が拡大しています。
さらに、最近はクラウド・コンピューティング化も実現し「VR-Cloud(R)」としてのサービスも提供されています。
このように様々な用途やユーザーを持ったUC-win/Roadの最新版、「UC-win/Road
Ver.6」が12月14日に、リリースされました。
●製品概要・特長
UC-win/Road Ver.6で強化された機能を見てみましょう。
まずは歩行者の群集移動をシミュレーションする機能です。歩行者同士が衝突を回避しながら動き回る様子をシミュレーションするもので、交差点や広場などで多数の歩行者が動く様子を表現できるようになりました。リアリティーが改善されたほか、歩行者の配置にかかる時間も大幅に削減されました。
歩行者一人一人の動きも、よりリアルになりました。「FBX 3Dモデル」のファイルにアニメーション機能を追加することにより、関節部分の自然な動きを表現できるようになったのです。このほか、キャラクターの登録機能や、シナリオ機能で利用することもできるようになりました。交通シミュレーションの機能では「レーンキープアルゴリズム」を改良することにより、よりシミュレーション結果がよりリアルになりました。
昨年3月に発生した東日本大震災の影響で、津波や洪水などの災害に対する関心が全国的に高まっています。「UC-win/Road
Ver.6」では、津波解析ソフトウェアと連携し、シミュレーション結果をリアルに表現できるようにしました。
ドライビングシミュレーター用の機能も追加されました。路上には踏切や特殊舗装など様々に変化し、路面からドライバーに伝わる振動や音も変わります。
それをドライビングシミュレーターの「フォースフィードバック」機能により、路面材料や路面形状に応じた振動を自動発生させ、路面の一部に特殊舗装を施した状態を再現できるようにしました。
煙は温度や空気密度、風などを考慮した煙粒子の挙動をリアルにシミュレーションする機能を強化しました。煙の通路(トンネル)を設定し、トンネル内でのみシミュレーションすることも可能です。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)用のデータ交換標準である「IFC形式」によるデータ連係機能を、BIMソフトだけでなく、土木設計ソフトや解析ソフトなどにも搭載しています。構造物や建物の形状とともに属性情報も同時にデータ交換ができると、設計業務の効率は飛躍的に高まります。
UC-win/Road Ver.6では、「IFC プラグイン」を搭載することにより、IFCフォーマットの入出力機能を充実させました。 UC-win/RoadをBIMモデルや都市計画のプラットフォームとして利用するために、IFC形式の入出力機能が充実することは戦略的にも重要です。
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▲左右のタイヤがアスファルト舗装と芝生に乗っている場合、別々の振動が発生する |
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▲群集移動では、一度に多数の歩行者を、より人間の挙動に近い動きでシミュレートできる |
●体験内容
2011年12月9日、フォーラムエイト東京本社で「UC-win/Road Ver.6 体験セミナー」が開催されました。午前9時30分から17時35分まで、最新機能や事例の紹介からデータ作成実習、様々なデモンストレーション、そして最後に「FORUM8認定
VRエンジニア試験」を行うという、充実したカリキュラムです。
「FORUM8 認定 VRエンジニア試験」とは、フォーラムエイトがUC-win/Roadの活用スキルについて認定するもので、合格すると認定証が交付されるほか、各種セミナーに無料で参加できるなどの特典があります。
VR-Cloud(R)では、フォーラムエイトのCADや解析ソフトなどのプラットフォームとなることを目指して開発していることや、世界一のスーパーコンピューター「京(けい)」などの活用も視野に入れていることが紹介されました。
UC-win/Roadの作業手順は、「地形の入力」→「道路定義」→「道路生成・交通流生成」→「編集・出力・VR
シミュレーション」という具合に進みます。それぞれの過程で、フォーラムエイトや他社の道路設計アプリケーションや交通アプリケーション、解析アプリケーションと連携することで作業が効率的に行えます。
実習もこの手順に従って、地形の作成から始まりました。UC-win/Roadには50mメッシュの標高データを内蔵しています。これに航空写真の画像データを張り付けることでリアルな地形モデルが手軽に作成できます。
実習では画像を挿入する原点座標を定義したあと、9つに分割した航空写真を順番に張り付け、地形モデルの作成を実際に行いました。しかし、実際は非常に多くの画像を張り付ける必要もあります。20キロ四方の航空写真を張り付けると大変、重いデータ量になります。
UC-win/Roadは線状構造物を扱いますので、道路沿いに細かく分けて張り付けます。
続いて、道路の入力です。地盤上の3点をクリックし、大体の線形を入力します。そこから起点と終点、方向変化点の座標などを入力し、平面線形を定義します。その後、縦断線形を定義するため、起終点の高さや勾配の傾斜角、方向変化点の位置、放物線の長さなどを入力します。
この作業で道路の立体線形が定義されました。その後、山の中を貫く部分にはトンネルを設定します。切り土部分には法面安定工のテクスチャーを張り、歩道部分には縁石や歩道のブロックなどを張ります。こうしたテクスチャーの設定は手間がかかりますが、道路の「グループ」に各断面に設定するテクスチャーを設定し、道路に対して適用すると自動的にテクスチャーが張り付けられ、変更もワンタッチです。これで、リアルな道路のモデルが出来上がりました。
次はクルマを走らせるために交通流を生成します。シミュレーション制限時間や生成台数を入力した後、走行方向や初期速度などを設定して「走行ボタン」をクリックすると、先ほど作成した道路やトンネルなどをクルマやバスが走ります。
走行中の車両を選んでCtrl+Altを押しながらクリックすると、その車両に乗り込んでドライビングシミュレーションを行えます。
クルマに続き、歩行者に歩道を歩かせるための設定です。UC-win/Road Ver.6では多くの群集を素早く配置できる機能が搭載されました。
歩行者が歩くルートをクリックにより設定し、続いて歩かせる人物の種類を選びます。そして初期人数や1
時間当たりの歩行者数を設定し、「交通流を開始」のボタンをクリックすることで群集が表現されます。
道路脇をクローズアップしてみると、多くの人がリアルに歩いているのが分かりました。雑踏の中で向かい合って歩いている人の動きをよく見ると、衝突を避けてあるいています。
人物にはビジネスマンやキャリアウーマン風の人から、スニーカーを履いた子供まで、様々なキャラクターが用意されています。場所によってふさわしい人物を選ぶことで、より実感的なVR
を作れます。
人物のキャラクターや動きについて、さらにリアリティーやオリジナリティーを追求したいときには、「FBX形式」の人間モデルを読み込み、人物の動きを定義したアニメーションを適用することで、オリジナルの人物に自由自在な動きをとらせることができます。
実習では半袖ポロシャツの男性モデルを選び、歩道を走らせることにチャレンジしました。歩道の上に「飛行ルート」を設定し、アニメーションファイルで「走り」の動きを選んで「再生ボタン」をクリックすると、歩道上を走る人物ができました。
一通り、基本的な機能を体験した後は、他のソフトとのデータ連携に挑戦しました。その一例として、「UC-1シリーズ駐車場作図システム」で設計した駐車場のモデルをUC-win/Roadに読み込み、これまで作ってきた街並みのモデルと合体させるのです。決められた地形やスペースに駐車帯の白線を描くためには、クルマの旋回時の軌跡や余裕を適切に考慮する必要があり、専門のソフトを使うと安心、確実です。
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▲国土地理院50m(5m)メッシュから地形を読込み、地形を編集 |
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▲道路3次元線形が出来上がるとトンネルや法面のテクスチャーを設定する |
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▲クルマの台数などを設定し、交通流を発生させたところ |
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▲FBX形式でオリジナル人物のモデルを読み込み、アニメーションを設定できる |
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▲街並みに群集を発生させる作業 |
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▲UC-1で作成した駐車場のモデルも読み込める |
●イエイリコメントと提案
今回のバージョンアップで、UC-win/Road Ver.6は人々や車の動き、煙や炎の表現がより実感的になり、振動や音までより精密に再現されるようになったことでドライビングシミュレーターでの使用時もぐっとリアリティーが増しました。
まさに「仮想現実感」そのものに近づいたわけです。
UC-win/Road Ver.6は、人間の知覚に影響するこれらの要素も含めて表現できるため、さらに現実を体験するのに近づきました。将来、できる街の迫力や人々の動き、そして音や振動を現地に実際に行ったかのように、迫力と緊迫感をもって体験できるのです。
この特徴を生かして、UC-win/Roadは、まれにしか起こらない事故などへの対応を訓練する目的でも使われています。
例えば、フランス・ボルドー市のBMIA社では、道路トンネルの交通監視システムや換気ファン、信号の制御施設を模した「トンネルシミュレーター」をUC-win/Roadをベースに開発しました。このシミュレーターは、トンネル内の事故や火災などを発生させることができます。
トンネル管理者は、UC-win/Road によって再現された監視カメラ画面などを見て事故の状況を把握し、信号や電光表示器でドライバーに危険を知らせたり、消防車やパトロールカーなどの緊急車両を指揮したりといったトレーニングに使われています。
このシステムの開発によって、フォーラムエイトとBMIA社は、「2011 NCEInternational
Tunnelling Awards」(国際トンネルアワード)のセーフティ・イニシアチブ・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
UC-win/Roadによって同様のシステムがいろいろと作れそうです。例えば、バーチャル避難訓練とか、地震で被害を受けたライフラインの復旧計画、鉄道ダイヤ混乱時の復旧作業計画などのトレーニングツールです。
「VRで救える命がある」と言っても過言ではないでしょう。
●製品の今後の展望
UC-win/Road Ver.6のリリースで、VRソフトとしての機能はかなり向上し、入力するモデルや人、クルマ、気象などの設定をしっかり行えば、非常にリアルなVRシーンを再現することができます。
ただ、一般の人が一からモデルを作り、自然に見えるように各種の設定を行うとなると、かなりの試行錯誤が必要でしょう。
そこで、期待したいのは、様々な建物や構造物のモデルや、人物、動き、気象状況などをあらかじめプロが設定したモデルを「VR部品」として提供するのです。
道路や線路などの構造物のテクスチャーや規格は、公共発注機関や鉄道会社などの設計標準に合わせたものをセットにしておくと、ワンタッチで各発注者の仕様に合ったVRが作れるでしょう。
こうした実用的なコンテンツが十分にあれば、UC-win/Roadによる生産性はさらに高まるでしょう。 |
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(Up&Coming'12 新年号掲載) |
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