Day2は「第3回 最先端表技協・最新コンテンツセッション・CRAVA社」として、(一社)最先端表現技術利用推進協会会長の町田聡氏による「最先端表現技術普及活用支援の取り組み」で幕を開けました。
町田氏は表技協の新たな取組みとして、現在社会で必要とされる人材育成のために各分野におけるITを活用した表現やコミュニケーション全般の知識・技術を身につけることを目的とした「表現技術検定(建設ICT)」について紹介。併せて「羽倉賞」の結果発表・表彰式が行われた(詳細は「表技協レポート」を参照)。
記念すべき羽倉賞の第1回受賞作品は、以前ネットニュースなどでも話題を集めた株式会社資生堂の「Tele Beauty」に決定。もともと販促ツールであった自社のメーキャップシミュレータを、テレビ会議システムに画像処理とCG処理を組み合わせることで、社会性の高い技術として消化した点がチャレンジングであるとし、高く評価されました。「化粧品会社が化粧品を使わないことを奨励する」という意味でも、ビジネスではなく社会貢献の観点からの取り組みとなっています。
さらに、羽倉賞に続いて奨励賞3作品を発表。VR技術奨励賞は金沢美術工芸大学 中安 翌氏による「Luminescent Tentacles」で、ソフトウェア、ハードウェアの技術はもちろんのこと、自然界の生物の動きを取り入れて再現している特徴的なアクチュエーターが高い評価を受けての受賞となりました。映像技術奨励賞には、和歌山大学 天野敏之氏の「日本橋三越本店天女像音と光のインスタレーション」。通常のプロジェクションマッピングはあらかじめ映像を用意する必要がありますが、この作品では事前に映像を用意せずカメラ画像の画像処理のアルゴリズムを構成してリアルタイムにマッピングを行っており、エンターテイメントのみでなく産業界での活用が期待できます。表現技術利用促進奨励賞は、和歌山大学 尾久土正己氏の作品「実写全天映像を使ったスポーツ・観光の新たな映像表現の普及で、天頂にまっすぐではなく斜めに投影する技術が用いられている。ドーム型大スクリーンにおけるVR映像やシステムは普及の一途ですが、全天球パブリックビューイングの新たな見せ方、観光業への貢献度、将来性が受賞の決め手となりました。 |
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第1回羽倉賞は資生堂「Tele Beauty」が受賞 |
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(一社)最先端表現技術利用 推進協会
会長 町田 聡 氏 |
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「VRゲーム開発と今後の展望」は、この後に紹介する国際VRシンポジウムを挟んでの実施となりました。講演者の株式会社CRAVA代表取締役 香月蔵人氏は、UC-win/Roadとオンラインゲームのコラボレーションについて紹介し、溶岩ステージでの火の表情や動きを再現してドライビングシミュレーションでコインを回収していくデータや、花の道路などのファンタジーな世界観の表現を紹介しました。また、粘土の模型をカメラで撮影し3Dモデルデータに変換する技術の活用や、UC-win/Roadの線形モデリング機能で道路断面を透明にし、画像が流れるようなリアルタイムのグラフィックデータを作成する手法なども解説。HMDとの連携で体験できる「鉄道運転士VR」のシステムや、PlayStation
VRで使用する「鐵」の映像も披露しました。 |
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株式会社CRAVA 代表取締役
香月 蔵人 氏 |
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「体育」から「スポーツ」への転換、社会の意識変化に期待
Day2午後の部前半は、スポーツ文化評論家の玉木正之氏により「スポーツは語る! 〜日本社会は『体育系』から『スポーツ系』へ変化できるか?」と題する特別講演で始まりました。同氏は冒頭、外国人に相撲の説明をすることの難しさと、日本人が身近なスポーツについて知らないことの多さを対比。後者の背景として、明治時代に欧米から様々なスポーツが外来文化としてもたらされた際、一旦は「sports=遊戯」と翻訳。しかし、日本が軍事力の強化に力を入れる中で軍隊がスポーツを採用、学校教育に軍事教練が導入されてくるとともに「sports=運動あるいは体育」に改訳。つまり、個々のスポーツについて深く理解することよりも、それによって体を鍛えることが目的化したことが大きいと言います。その解釈は長年かけて定着。戦後の高度経済成長期には体育会系のサラリーマンが大活躍。また1964年に東京オリンピックが開催され、翌年からはそれを記念して「体育の日」が設定されるに至ります。 |
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スポーツ文化評論家 玉木 正之 氏 |
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その後、スポーツをする場のウェートが学校から校外のクラブなどへ移ってくるとともに、スポーツを体育に限るのではなく、知育を含む文化として大きく捉える動きが現出。2020年東京オリンピックに向け「体育」を「スポーツ」に置き換えようという流れの中、日本社会の根本的な考え方もドラスチックに変化して欲しいとの思いを述べます。 |
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UC-win/Road利用のハッカソンを通じ進取の開発競う
特別講演に続いて「第10回 国際VRシンポジウム」がオープン。まず、進行役の「World16」代表・小林佳弘氏(アリゾナ州立大学、FORUM8 AZ代表)が世界各国・各分野から16名の大学研究者が参加するWorld16プロジェクトの概要、毎夏実施されるワークショップとメンバーの研究成果を発表するため毎秋開催されるシンポジウムの位置づけ、今回10回目を迎えた同プロジェクトのこれまでの活動ポイントを概説。2017年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で行われたサマー・ワークショップについては、UC-win/Roadを利用しフォーラムエイトの技術者とともに取り組むハッカソンを課題として設定。各メンバーがアイディアを出し合った後、チーム分けして2日間にわたり検討・開発し、3日目にその成果を発表。シンポジウムにはそのうち4チームが参加し、夏の成果をさらにグレードアップした形で発表する、といった流れを説明しました。
なお、今回参加できなかった2チームの取組みについては、1)トーマス・タッカー氏とドンソー・チョイ氏(いずれもバージニア工科大学)は、点群データの取得から3Dモデル作成まで短時間で行う手法を模索。LiDARでMITのオフィス内をレーザースキャンして3D点群データを取得、それをメッシュ化し、作成した3DモデルをUC-win/Roadを使いVR空間として可視化、2)ワエル・アブデルハミード氏(バーレーン大学)はバーレーンで実際に行われている遺跡の発掘調査に対し、UC-win/Roadマイクロシミュレーションプレーヤーを利用し、時系列的な発掘データの比較を試みた ― とメンバーに代わって小林氏が紹介しています。
World16メンバーによる最初の発表は、コスタス・タージディス氏(同済大学)とアマル・ベンナージ氏(ロバートゴードン大学)のチーム。近くの建物など場所に関係するストーリーをたくさん創造して旅行客にとってインタラクティブな環境を作りたい(ベンナージ氏)、ドライブ中に幼い子供が喜ぶようなストーリーテリングシステムを開発したい(タージディス氏)、といった2つのアイディアを統合するアプリケーションを着想。予め場所そのもの、あるいは食べ物やファッション、映画、音楽など子供から大人まで有用な各種コンテンツを用意しておき、AR(拡張現実)技術やニューラルネットワークを活用することで、利用者がクルマや徒歩で移動する際に特定の場所に差し掛かると、その移動手段や目的、状況などに応じて適した情報が得られる仕組みを提案しました。VR上での体感も可能なメリットにも触れます。
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コスタス・タージディス氏(左)
アマル・ベンナージ氏(右) |
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続いて、パオロ・フィアマ氏(ピサ大学)とルース・ロン氏(シェンカル工科デザイン大学)はそれぞれの専門に応じた各種情報を、UC-win/RoadおよびOpenMicroSimの機能を活用し建物の3Dモデルと連携させて可視化、新しいアプリケーションの可能性を探った取組みを発表しました。ロン氏は、時間の経過に伴う環境の温度変化を可視化しようと2年前、サーモグラフィカメラで居住用建物のファサードを3時間毎に一日撮影し取得した温度変化のデータを、OpenMicroSimを利用しUC-win/Road上で建物モデルにテクスチャマッピングして表示。今回はそこで居住する人々にフォーカスした試みを紹介しました。一方、フィアマ氏は欧州の建築・建設分野のニーズに対するデジタルツールの新しい可能性を探索。今回はその中でUC-win/Roadにパラメトリックな各種の情報を与えることにより、企業が建設のプロセスでニーズに応じた要素の組み合わせを選び、時間軸に沿って可視化するアプローチを提案しています。
3番目は、異なるアプリケーションやHMIを使うユーザーがUC-win/Roadとインタラクティブに繋がり、協調して3D・VRを操作・設計できるデザイン・インターフェースの開発に取り組むマシュー・スウォーツ氏(ジョージア工科大学)とマーク・オーレル・シュナベル氏(ヴィクトリア大学)のチームが発表。シュナベル氏はその目指す「新しい環境」について、あらゆる異なるインターフェースに対応するサーバを有し、様々な方法で3Dモデルを作成するユーザーがWebインターフェースを介してそこに繋がることで、UC-win/RoadのVR環境の開発やVRデザインを連携して行え、スマートフォンなどを使ったゲームも共に楽しめる世界を描きます。スウォーツ氏は開発プロセスにおけるJavaScriptによるインテグレーションのメリットに触れるとともに、特に、そのタンジブルなユーザーインターフェースとしての側面に注目。そこに繋がったユーザーが3Dモデルを更新し、UC-win/Road内のVRに反映されるのはもちろん、その機能の物理的な建物・都市空間への展開の可能性にも言及します。
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マーク・オーレル・シュナベル氏(左)
マシュー・スウォーツ氏(右) |
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福田知弘氏(大阪大学)とマルコス・ノヴァク氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)によるWorld16最後の発表は、両者が連携して取り組む3Dモデルの画像処理のためのフレームワーク開発について。UC-win/Road上で技術や人間性、工学、数学、芸術、科学を結びつけ一つの環境への統合を目指すアプローチとして、ノヴァク氏はそれまでの機械学習や人工知能などへの取組みを踏まえ、セグメンテーションの考え方をVRの作成プロセスに取り入れてきた流れを振り返ります。福田氏はオブジェクト毎に分けて処理するセグメンテーションの手法、それにより可能なアーティスティックな表現や科学的な説明を例にそのメリットを解説。その半面、自動運転やスマート点検システムといった現実世界とVRを絡めて使うケースではそれまでエラーを生じるなど制約もあったことから、新たに拡張してきたセグメンテーションの各種機能について説明しました。
World16各チームの発表を受け、フォーラムエイト執行役員VR開発テクニカルマネージャのペンクレアシュ・ヨアンが今回プロジェクトに対する見方を概説。併せて、一部の開発成果を反映したUC-win/Roadの機能拡張や開発中の関連機能などを紹介しました。
最後に小林佳弘氏は今回シンポジウムを総括。発表された4つのプロジェクトそれぞれのポイントを挙げ、当該分野における更なる検討の可能性への期待を述べました。
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全セッション終了後の懇親会で行われた
表彰式の様子 |
アカデミー奨励賞を受賞したアマル氏とコスタス氏(左)、
マシュー氏とマーク氏(右) |
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ワールドカップ賞にディープラーニングによる運転警告システム
UC-win/RoadやVR-Cloud®の伝送システムを使ったソフトなどのプログラミングを競う学生クラウドプログラミングワールドカップは今回で5回目を迎えました。
最優秀の「ワールドカップ賞」は、韓国・国民大学校のチーム「VAEGIS」による「Car that Knows Before You Do via Deep Learning」(ディープラーニングで予知するクルマ)という作品でした。
この作品は、AI(人工知能)のディープラーニング(深層学習)を使って、ドライバーの運転操作を分析し、これから遭遇する可能性のある危険について、事前に警告を出してくれるシステムです。余裕をもって危険を回避したり、危険に備えたりすることができるので、事故を未然に防ぐことができます。このシステムを開発するために、カメラやアイトラッカー、ヘッドトラッカー、CANインターフェースをドライビングシミュレータに装備し、運転時のデータを取得しました。そして、複数の感覚ストリームの予知・融合を合同で学習し、シミュレーションソフトと連動する感覚融合型ディープラーニングアーキテクチャを開発しました。このほか、各審査員から審査員特別賞が授与されました。
その他のノミネート作品および作品の詳細は以下のバナーからご覧ください。 |
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受賞者の皆様 |
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ワールドカップ賞に国立高雄大学の持続可能なヤンゴン開発案
7回目を迎えた「学生BIM&VRデザインコンテスト オン クラウド」のテーマは、ミャンマーの大都市、ヤンゴンの交通渋滞や洪水による衛生問題、そして電力不足などの問題を解決し、歴史的な建築物や豊かな緑地、湖などを生かした都市開発案を提案することでした。
最優秀の「ワールドカップ賞」を受賞したのは、台湾の国立高雄大学のチーム「Living labs」による「Yangon green labs」という作品でした。熱帯モンスーン気候に位置するヤンゴンの緑の広がりを街に広げ、地元の洪水問題を改善するために「スポンジ都市」のコンセプトを組み合わせたグリーンフィンガーシステムを提案しています。都市部の混雑問題の改善には、部分的に地下鉄を使った交通迂回システムを導入する案です。
洪水の状況を改善するために洪水シミュレーションソフト「xpswmm」を使用し、交通流の転換プロセスには「UC-win/Road」による分析とシミュレーションを行い、庭園都市として知られるヤンゴンで持続可能な都市開発を行うという提案でした。 |
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受賞者の皆様 |
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また、優秀賞も国立高雄大学のチーム「Three People Studio」による「Golden Hub」という作品に贈られました。
その他のノミネート作品および作品の詳細は以下のバナーからご覧ください。 |
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ますますレベルアップした小中学生のVR作品
一般財団法人 最先端表現技術利用推進協会の協力を得て、2017年の冬休み、春休み、夏休みに実施した「ジュニア・ソフトウェア・セミナー」に参加した小中学生を対象に行ったコンテストです。「UC-win/Road」で作ったVR作品は昨年よりますますレベルアップし、ゴールドプライズが6人に、シルバープライズが3人に、ブロンズプライズが6人にそれぞれ贈られました。
昨年に引き続き、11月16日に行われた第3回の表彰式では、プレゼンターの阿部祐二氏が受賞者ひとり一人にインタビューを行った。ゴールドプライズ受賞作に選ばれた星のまちや動物参加のオリンピック、タイムトラベルなどの個性豊かな作品には、会場に詰めかけたVRのプロたちも思わずほほえんでいた。
ジュニア・ソフトウェア・セミナー作品賞の詳細は以下のバナーからご覧ください。 |
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司会の阿部祐二氏による受賞者へのインタビュー |
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コンテスト総括
これらのコンテストには、海外から優秀な作品が多数応募され、国際色あふれる表彰式となりました。特にCPWCでは中国からのチームが大半を占め、VDWCでは台湾、ベトナムからの受賞が目立ちました。一方、3D・VRシミュレーションコンテスト
オン・クラウドでは、安心安全の分野での利活用が増えており、これまでの景観シミュレーションという概念は薄くなってきています。これからのあり方という分野について、非常に多くのヒントを与えてくれる作品が多くありました。 |
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