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ユーザ紹介第80回
姫路市
市長公室 総務部 システム管理課建設局 道路部 街路建設課
System Management Div., General Affairs Dept.,Mayor's Office,
Street Construction Div., Road Dept., Construction Bureau ,
Himeji City
姫路市のホームページ
http://www.city.himeji.lg.jp/

市の総合計画および情報化計画に沿って全庁的IT活用環境の整備に力
 −3D空間シミュレーションの可能性に着目、世界文化遺産・姫路城はじめ歴史的資源に関わる
  多様な事業検討の支援を展開

 古くから交通の要衝という立地条件に加え姫路城の城下町として栄え、今日では海外からも数多くの観光客を集める姫路市。同市はその豊かな歴史遺産に支えられた観光産業はもちろん、伝統産業と先進技術が共存するものづくりの面でも着実な発展を遂げています。今回焦点を当ててご紹介するのは、同市のシステム管理課において、とくに地理情報システム(GIS)の整備・運用、庁内情報システムの構築などを担う庁内通信担当です。
 姫路市では「姫路市総合計画」および「姫路市情報化計画」をベースにGISをいち早く導入するなど、各種社会資本整備における情報技術(IT)の有効活用を積極的に進めています。そのような流れの中で同市はまた、VR(バーチャルリアリティ)・CG(コンピュータグラフィックス)技術を駆使した3次元空間でのシミュレーションやプレゼンテーションの可能性に注目。システム管理課がその運用主体となってフォーラムエイトの3DリアルタイムVRソフト「UC-win/Road」を導入、複数の事業担当部署と連携してさまざまな都市空間創造シーンで具体的な活用が図られています。
 そこで、この3D空間シミュレーションシステムの利用環境を整備・運用する観点から同市市長公室総務部システム管理課係長の藤本康樹氏、同課の三木一伸氏および中西理恵氏に、一方、同システムを社会資本整備に活用する観点から同市建設局道路部街路建設課係長の柳川裕史氏に、それぞれお話を伺いました。


■ 姫路城はじめ地域特性を活かしたまちづくりへ

 姫路市は兵庫県南西部に位置し、そのエリアは播磨平野を中心に北は中国山地と接し、南は瀬戸内海の島しょ部に至ります。人口は約53万6千人(2009年5月1日現在)。
 市のシンボル的存在として広く知られるのが姫路城です。築城されたのは14世紀、現存する城の骨格が構築されたのは慶長年間(17世紀初め)とされています。1931年に国宝に指定され、1993年にはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界文化遺産にも登録されました。今年は築城400周年を記念した各種イベントが開催されている一方、秋からは大天守の保存修理工事が段階的に進められる予定です。
 姫路市はまた1996年、全国で初めて「中核市」に指定されています。これは、地方自治法の改正(1995年)により新設された制度。人口30万人以上という要件を満たし、当該地域で中核的な機能を果たしている都市に対して、政令指定都市に準じ都道府県の一部事務権限が移譲されるもの。市民サービスの充実や地域特性を活かした個性的で魅力あるまちづくりにも繋がり、地方分権時代のモデルともなり得るとして注目されています。
 同市では、長期的展望に立って時代のニーズに的確に対応、持続的成長を確かなものにする指針として「姫路市総合計画」を位置づけてきました。そうした中、2006年に周辺4町と合併したこともあり、市の都市構造や産業構造は大きく変化。加えて、人口減少社会の到来や市民ニーズの多様化など社会環境も転換点を迎えています。これらを受けて同市は今年3月、2020年までの12年間を対象期間とする新たな総合計画「ふるさと・ひめじプラン2020」を策定しました。
 その前総合計画に当たる「姫路21世紀プラン」(計画期間2001年度〜2012年度)が2000年度に策定されており、そこでは電子市役所の推進に関連し、電子化による行政サービスの質的向上を狙いとした統合型GISの整備に言及。現総合計画でもその拡充を行うとの方針が引き継がれています。
 併せて、同市はこの総合計画を情報化の側面から推進するため「姫路市情報化計画」を定めています。したがって、2007年度に策定された現行の情報化計画(対象期間2007年度〜2011年度)も、今年3月に改められた総合計画との整合を図るべく改訂されています。


■ 3D空間活用の着想と庁内通信担当の役割

 GISをはじめITの活用に姫路市がもともと積極的であるのに加え、今回VR・CGベースの3D空間シミュレーションシステムを近隣の自治体に先駆けて導入するに至った背景について、藤本康樹氏は前述の電子市役所推進の流れと、各種情報の活用が見込まれる都市計画に対する市長の理解を挙げます。
 その上で「今回の取り組みに当たって、全庁的に3D・VRを活用するための環境を整えるのがシステム管理課における私たち(庁内通信担当)の役割」と語ります。
 同市の市長公室では、市長・副市長の秘書業務から市政全体に関わる多岐に及ぶ業務をカバー。そのうちシステム管理課は、住民票の写しや税証明書の発行など住民福祉関連業務向けにホストコンピュータを運用・管理する電算管理担当と、GISの整備や市の基本地形図および航空写真の閲覧・提供、庁内情報システムや電子市役所の構築などを行う庁内通信担当から構成されます。
 電子市役所に関しては、後者による業務の一環として市の総合計画および情報化計画に沿う形で推進。とくにGIS整備では庁内用やWebサイト閲覧用のほか、合併町域を反映した基本地形図の整備、3D・GISへの対応にも力を入れています。そうした流れの中から3D空間シミュレーションシステムの利用を着想。具体的な適用シーンとして、各種事業の比較検討や建物の配置検討、まちづくりにおける景観検討などでの可能性が注目されました。


■ システムの導入検討から調達、研修、運用の流れ

 VR・CG技術に基づく3D空間のメリットを活かし、市として実際にどのようなプロジェクトに適用していくか ― 。こうした観点から2005年度、システム管理課(当時は情報化推進室)を中心に都市計画部門・区画整理部門・建設部門の関係者が参加して「3次元空間シミュレーション導入検討会」を組織。導入システムの種類やその用途、活用の範囲などが議論されました。一連の検討を通じ、「出来れば外部委託するのではなく、職員自ら3D空間のデータを作成し、シミュレーションなどのシステム操作を行えるソフトウェアが望ましい」とのスタンスが描かれました。
 翌2006年度には検討会を「3次元空間シミュレーション運用委員会」として再編。同委員会の下、建設コンサルタント3社が参加して実施された提案コンペを受け、検討会の要望に対応するUC-win/Roadを中心としたシステムが採用されています。システム導入後は職員自らデータ作成するための研修に続き、姫路駅から姫路城周辺の現況、さらに姫路城周辺地区の歴史的なみちすじの整備(通称「歴みち事業」)の一部「東部中濠(なかぼり)線」の3D・VRデータ整備が取り組まれました。
 2007年度からは職員向け研修の対象を拡大。システム管理課が庁内関係部門から15人を募り、3日間にわたって実施。2008年度はデータ作成からプレゼンテーションまでシステム機能の概要をより広く事業担当者に理解してもらうため、1日のみの研修を10人ずつ3回、合計30人に対して行っています。
 当初は事業の各担当者が自らデータ作成することとされました。ただ、事業担当者はそれぞれ本来業務を抱えている上、システムのライセンスキーやパソコンなど物理的な制約もあることから、各自がデータ作成する中で中西理恵氏がそのサポートをするという体制でスタート。それでもシステム調達以降、実質的なデータ作成は次第にサポート側に委ねられるウェートが増していた、と三木一伸氏はその間の経緯を説明します。
 それが最近になって、都市計画部門へ異動したシステム管理課の前任者らを中心に、事業担当者が自らデータを作成しようという流れも浸透。たとえば、各担当者がGoogle SketchUpやPhotoshopを用いて個々のモデルを作成、中西理恵氏がそれらをUC-win/Road上で統合するという連携作業が進んでいます。


■ 「歴みち事業」など複数事業に適用、新たな期待も

 3D空間シミュレーションシステムの導入検討が始まって以降、事業担当者サイドから一貫してこのプロジェクトに関わっているのが柳川裕史氏。同氏はまず、「歴みち事業」の一部を成す「東部中濠線」をその適用対象事業として運用委員会に提案しました。
 「歴みち事業」は歴史的市街地に特有な交通量の集中と複雑な地区内道路網がもたらす問題に対し、安全性と生活環境に配慮した整備を図ろうというもの。姫路城周辺地区にはとくに歴史的・文化的遺産が多く存在することから、中濠沿いの散策ルートを中心に歴史的なみちすじをネットワーク化する「歴史の道」が整備されています。「東部中濠線」はその主要対象区域の一つ。姫路城の中濠に沿った現道を活かし、「内京口門跡」周辺から「久長門跡」を通り、城東線に至るみちすじを散策空間として再整備しました。その際、昔のみちすじをイメージした石組側溝や地道風の舗装材が用いられたほか、電線類を地中化、各種遺構について路面標示するなどの配慮もなされています。
 そこで、同事業の景観検討において3D空間シミュレーションが有効な手法になり得るのではということで、初めに当該区間の現況を3D・VRで再現し、それを基に無電柱化や周辺建物の改築、姫路城への眺望確保などの改修ポイントをシミュレーションしました。これについてはその後、2006年10月に地元姫路市で開催された「歴みち事業」に関する全国規模の協議会(歴史的地区環境整備街路事業推進協議会)で発表。3D空間シミュレーションの映像が「分かりやすい」という感想とともに、予想以上に質問が集中する結果になったといいます。
 同市ではこれ以外にも、「大塩学園通り」プロジェクトにおける計画案の比較検討、家老屋敷跡公園および美術館での景観シミュレーション、岡田交差点の交通シミュレーションなど、同システムの可能性を探るさまざまな試みも実施。それらを通じ、庁内や協議会など行政関係者向けプレゼンテーションでは一定の成果を上げてきたと振り返る一方、今後は住民説明会など市民サービスにこれをどう繋げていくかが課題と位置付けます。そのためにも、システム管理課ではより多くの職員が本来業務と並行して同システムを有効活用できるような環境を提供していきたいとしています。
 お忙しい中、取材にご対応ご協力いただいた関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。
▲左から、市長公室総務部システム管理課係長 藤本 康樹氏
建設局道路部街路建設課 係長 柳川 裕史氏
市長公室総務部システム管理課 三木 一伸氏、中西 理恵氏


▲姫路市役所庁舎


▲研修会の模様

▼【東部中濠線】無電柱化、周辺建物の景観を配慮した改築、姫路城への眺望を確保 (無電柱化、高木の移設)



▼【家老屋敷跡公園・美術館】記念樹を植樹した場合の景観検討 (上:家老屋敷跡公園  下:美術館)



  
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