2010年上海万博に向けての都市計画事業南北道路の走行および施工シミュレーション
−短期間でのVR表現の実証およびその効果−
今回は、中国上海市に拠点をおく「上海市城市建設設計研究院(略称:城建院)
」をご紹介いたします。
城建院 は1963年に創立され、主に都市のインフラストラクチャー(学校、病院、道路、橋梁、鉄道路線、上水道、下水道、電気、ガス、電話等社会的経済基盤と社会的生活基盤とを形成するもの)に関する調査・設計・工事計画に従事した、総合設計研究院です。
城建院は上海市科学技術委員会によって「高度先端技術企業」として認定されており、この認定は、上海市及び中国発注事業の道路、橋、トンネル、地下鉄、モノレール、給排水、環境衛生、園林、国道業界(国道事業)、をはじめ、水利業界(都市治水)、建設業(建築工事)の工事に係る設計と都市計画及び、工事測量などの多方面に関する国家認定資格で、この資格のもと、技術開発、工法開発、素材開発等の研究開発に努めております。
城建院は(関連企業を除く)418名の技術者が在籍し、建設設計技術者は371人、他の専門知識人員は24人で構成されております。
|
●建設設計技術者
教授級階高級エンジニア 16人 (総合管理技術士と同等)
高級エンジニア 114人 (技術士・RCCMと同等)
エンジニア 93人
副エンジニア 57人
●専門知識人員
国家1級登記建築士 4人 (1級建築士と同等)
国家2級登記建築士 2人 (2級建築士と同等)
国家1級登記構造エンジニア 17人
国家登記公用装置エンジニア 8人 (建築設備士と同等)
国家登記電気のエンジニア 3人 (電気設備士と同等)
国家登記の土木(岩土)エンジニア 7人 (電気設備士と同等)
国家登記造価エンジニア 8人 (中国認定予算管理士)
城建院がこれまでに上海市、中国及び近隣都市から受注し、完工した工事は、大小あわせて5,000件に達し、その内容は、高速道路、都市部の大型ジャンクション、海底トンネル、交通コントロールシステム、給水施設、汚水処理施設、高層建築等多岐にわたっております。
創立以来、城建院は数多くの賞を受賞してきております。2年連続、全国プロジェクト設計研究院の100選に選ばれ、5年連続、上海市の鑑査設計研究院の10選に、さらに2005年「中国工程設計企業の60強賞」にも選出され、1999年以来、7年連続「上海市優秀会社」の称号を得ています。
また、1989年からTQCによって全面的な品質管理目標を達成した後、1998年と2001年に1994年版と2000年版のISO9000品質管理体系の認証を受け、2005年上海市質量協会によって、「上海市卓越績効先進企業」に選出されました。
■3Dの(VR)技術により自社開発技術の効果的演出 |
中国語版UC-win/Roadは2005年6月にリリースされ、城建院ではリリースとともに導入を決め、プロジェクト発表で大いに活用されております。
具体的な事例として、上海万博に伴う都市計画事業での活用例を示します。
上海市黄浦江両岸開発の推進とともに、2010年に上海万博が開催されます。
上海万博は都市の大きな発展に寄与するとともに、万博に向けての都市計画事業に対して大きな難問を投げかけてきました。
・慢性的な交通渋滞の緩和
・博覧会海上のアクセス向上
・都市の向上
・短期間での立案、設計、施工
この困難なプロジェクトに対して、市政府は実績ある設計院を選出し、各設計院に対して万博に向けての都市計画整備に関するプレゼンテーションを指示しました。
城建院も上海の代表的な設計院の一つとして選出され、劉偉傑副院長の指導のもと、傘下グループが協力し、6ヶ月に及ぶ研究、調査により、南北道路案を完成させました。城建院の他にも大きな設計院が2院プロジェクトに参加しており、城建院では、南北道路案の選定のためにプロジェクトのプレゼンテーションに、3Dの(VR)技術を採用しました。
従来、3Dは製作に時間を要する事、製作に費用を要する事などから、採用されたプロジェクトに用いられる事はあっても、プロジェクト採用前に作成される事はありませんでした。
特に今回の事例では、研究・調査に6ヶ月以上要してしまい、従来用いられているソフトでの3Dの(VR)作成は、時間的に困難と考えられていました。
ただし、城建院では早期にUC-win/Roadの導入を行っていたことにより競合他社が、スライド等でプレゼンテーションを行う中、ただ一社3Dの(VR)技術を駆使したプレゼンテーションを行い、南北道路案を選定させる事が出来ました。
3Dの(VR)技術を用いる事により、南北道路全体イメージを示し、設計者の設計意図と法案主体を表現しました。特に地下三次元の空間構造を明瞭に表す事によって、地下での交通状況(立体交差・流出入)と施工方法(埋設物の切り回し、新規工法)等、発注者の示した検討項目を、明瞭に示す事が出来ました。 |
|
▲上海市城市建設設計研究院・王 炯 院長 |
|
▲上海市城市建設設計研究院 |
|
▲研究院院内での協議状況 |
|
|
各路線に橋脚を
用いた場合 |
|
3つの路線に1本の橋脚を
用いた場合 |
|
|
|
▲上空からの視点 |
|
▲上空からの視点 |
|
|
|
▲車からの視点 |
|
▲車からの視点 |
|
|
|
▲歩行者からの視点 |
|
▲歩行者からの視点 |
|
UC-win/Roadを導入した事により、従来2次元で表現していたものを色々な視点(運転者の視点、歩行者の視点)で検討する事が容易に可能となりました。
本例では、従来経済性のみで橋脚構造を決めていた橋脚構造を、各路線に1本の橋脚とする案と、3つの路線を1本の橋脚とする案を比較しました。
3つの路線を1本の橋脚にする事により、運転者の視点から見た場合に開放感があり視野が広くなる事、同様に歩行者からも視野が広がり開放感を得られる事が視覚的に示す事が出来、景観を配慮した検討を容易に行なう事が出来ました。
UC-win/Roadは、簡単な操作で3次元空間をリアルタイムに操作でき、今後、道路計画、設計はもとより、各種公共事業や民間開発事業全般において、合意形成における関係者への共通言語として活用できるソフトウェアと考えられます。
このことから今後、UC-win/Roadは主要設計院、行政機関、大学他研究機構などに広く活用されると考えられ、道路、建築、鉄道、港湾、公園、地下空間、施工および災害事故シミュレーション等、空間表現を大いに援助すると考えられます。
今回のプレゼンテーションを期に、城建院ではUC-win/Roadを利用し、閔浦二橋,軌道11号線などの工事にも活用し、関係各所より好評を得ています。
今後中国で重要なプロジェクトには、欠かせないソフトウェアのひとつになることと思います。
|