UC-win/Road Ver.8は、2012年10月にリリースされた最新のVR(バーチャルリアリティ)ソフトウェアです。本バージョンでは、ログ出力プラグイン・オプションの追加や大規模地形への対応など、多くの拡張を行っています。今回は、これら追加した機能の中からいくつか活用方法をご紹介いたします。 |
ログ出力プラグイン・オプションは、ドライビングシミュレーション機能を用いて運転する場合の車両の座標や向き、速度、ハンドル舵角などの情報や、周囲を走行する交通流や歩行するキャラクタなどの情報をログ出力するプラグインです(有償オプション)。本プラグインは、CSV形式で保存するだけでなく、ネットワークを通じてリアルタイムにUDP出力する可能もサポートしています(図1)。
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■図1 ログ出力の基本動作 |
ログ出力データ |
基本データ |
シミュレーション時間、モデル名、モデルID、種別 |
座標、姿勢 |
X,Y,Z座標、ピッチ角、ヨー角、ロール角、ベクトル |
動力、速度 |
エンジン回転数、ギヤ番号、車速、速度制限 |
入力 |
ハンドル角、アクセル開度、ブレーキ量、自動運転 |
■表1 ログ出力データの例
本プラグインを用いることにより、運転状況の分析や様々な研究に利用できるものと考えられます。以下に例を挙げます。
安全運転支援システムの研究
近年、交通事故の発生数は減少傾向にあるものの、その数は依然として多く、ドライブシミュレータを用いた危険度評価や事故を未然に防ぐ安全運転支援システムの研究開発が盛んに行われています。ログ出力プラグインは、運転を行う自車だけでなく、周囲の他車両や歩行者のログを出力することができますので、例えば、自車と他車両、自車と歩行者との相対距離や相対速度を計算し、次図および次式による衝突余裕時間(Time-to-Collision,TTC:現在の相対速度が維持されると仮定したとき、自車が先行車に衝突するまでの時間を予測する指標)や衝突余裕度(Margin-to-Collision,MTC)などをリアルタイムに計算することが可能です。ドライブシミュレータとこれらの評価指標を用いた研究開発が考えられます。
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■図2 安全運転支援システム |
ここに、
tc:衝突余裕時間(s)
xr:自車及び他車両の車間距離(m)
vr:自車及び他車両の相対速度(km/h)
xf,xp:自車及び他車両の位置(m)
vf,vp:自車及び他車両の速度(km/h)
ECOドライブの研究
UC-win/Roadでは、自動車走行による二酸化炭素の排出量を計算するECOドライブプラグインを用意しています(Ultimate,Driving
Simに搭載。または有償オプション)。本プラグインは、旅行時間T、旅行距離D、車速変動特性等を用いて、以下に示す計算式により二酸化炭素排出量E(kg-C)を解析していますが、例えば、下記とは異なる計算式により二酸化炭素排出量や燃料消費量などを評価したい場合にログ出力プラグインを用いることが考えられます。ログ出力プラグインでは、これらの計算に必要なパラメータをCSVファイルやリアルタイムUDP出力を行うことができますので、これらを用いた評価、研究が可能です。
※大口・片倉・谷口「都市部道路交通における自動車の二酸化炭素排出量推定モデル」土木学会論文集No.695/IV-54,125-136,2002.1
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VRの3次元空間上の3Dモデルは、ポリゴン(多角形)の集まりで構成されていますが、複雑でクオリティの高いモデルを表現しようとすると必然的にポリゴン数が多くなる傾向にあります。しかしながら、ポリゴン数が多くなると、描画パフォーマンス(一般に1秒間に何回描画したかで評価される。単位はFPS)が低下するため、パフォーマンスを確保する為にあえてポリゴン数の少ないモデルを使用することも少なくありません。
UC-win/Road Ver.8で追加された3DモデルのLOD機能は、高いクオリティのモデルを用いてもパフォーマンス低下を最小限にすることが可能な機能で、近距離のモデルの描画には高品質な詳細メッシュモデルを、遠距離の(視点からの距離が遠い)モデルの描画には低ポリゴンのパフォーマンス重視モデルを適用します。この考え方を示したのが図3で、Ver.8のサンプルデータの例を示しています。高品質なモデルはなめらかな曲線で構成され、車内やホイールも精緻に表現されますが、ポリゴン数が多く描画の負荷が大きくなります。逆に遠距離用のモデルは簡略化されて角張った形状をしていますが、ポリゴン数が少なくパフォーマンスが向上します。ただし、遠距離ではモデルが小さく描画されますので、同程度の見栄えを保ったままパフォーマンスだけを向上させることができます。また、図4もVer.8のサンプルデータを示しています。バスの車内まで精緻にモデル化されていますが、適宜簡略化したモデルに切り替えることにより、大きなパフォーマンス低下を防ぐことができています。データの作り込みを行ったとき、描画パフォーマンスが低下してしまう状況となった場合、本機能の活用をご検討ください。
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■図3 LOD(Level of detail)の考え方 |
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■図4 車内まで精緻にモデル化された
Ver.8のサンプルデータ |
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Ver.8では、GIS関連のオープンソースライブラリであるGDAL(Geospatial Data
Abstraction Library)を用いた地形データのインポートに対応しました。これにより、GDALがサポートする様々なファイルフォーマットのインポートが可能になっています。表2に、代表的なフォーマットの特徴と入手元を示しますのでご参照ください。
これらのデータを用いることにより、国土地理院の数値地図を利用する際の制限をいくつか回避することができます。例えば、最大で20×20kmの領域しか生成できない制限がなくなり、100kmを超えるような地形を生成可能になります。また、BMNGを用いれば、海底地形を生成することもできます。海底からの高さとして解析された津波のシミュレーション結果の可視化等において利用することが考えられます。
■表2 GDALがサポートする代表的な地形データ
※GDAL:http://www.gdal.org/
※対応フォーマット:http://www.gdal.org/formats_list.html
※USGS からもダウンロード可能:http://gdex.cr.usgs.gov/gdex/
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■図5 海底地形の例 |
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運転シミュレーション時に車両の挙動の詳細を保存することはできますか?
Ver.8.1より、複数のスクリプトを組合わせて再生するアニメーション(グルーピング)機能をサポートしました。これにより、どのスクリプトを、どの順番で再生するかを設定できるようになりました(図6)。本機能により実現されるメリットを以下に示します。
- 一つのスクリプトを細分化して作成することが可能。各パートの動作を完成させたあと連結させることができるため、一部分の追加・修正を確認するために最初から全て再生する必要がなくなり、効率化が図れる。
- 一度作成したスクリプトを他のスクリプトで再利用できる。
- スクリプトを組み合わせて利用できるため、一部分のみ異なるスクリプトを容易に作成可能。
本機能により作業の効率化や利便性が向上します。スクリプトの作り込みが容易になると思いますので、是非ご活用ください。
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■図6 スクリプトのグルーピング(アニメーション)機能 |
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(Up&Coming '13 新年号掲載) |
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