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サポートトピックス / UC-win/Road |
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City Designツール Vol.5 (全7回) ImageToFacade |
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アリゾナ州立大の小林です。Forum8から公開されているCityDesignというツールの紹介をします。Forum8社のVRパッケージであるUC-win/Roadと、他の3DCGパッケージ間でシームレスに都市データを生成・変換するためのツール群の開発を目指しております。ここで紹介するツールはソースコードも公開しております。今のところ特定のサポートはとっておりませんので、バグなどの問題があっても責任は負いかねませんので、よろしくお願いします。今回の記事で、建築・土木関係の方で貴社のシステムに適した簡易ツールが欲しいというご希望があればお寄せください。
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前回まで、PovrayToMax、ImageToTerrain、AnimatedCharacte、ImageToCityというツールを紹介してきました。5回目である今回はImageToFacadeという建物のファザード生成のためのツールを紹介します。これまで紹介してきたツール同様、Autodesk社の3dsMaxのプラグインとして開発されたものです。
前回のImageToCityというツールは、短時間で都市全体をほぼ全自動で生成するため、建物のファザード・デザインはランダムに決定するようにプログラムされています。コンピュータが勝手にデザインを決めてしまうのです。ゲームのような仮想世界の都市データ作成には問題ないのですが、実際の都市データ作成の実務にはあまり向きません。1つ1つの建物を"それらしく"見せるように作成する必要があるからです。またハリウッド映画やゲーム開発と違い、VR都市データは限られた予算内に短時間で作成する必要があります。そのような需要にこたえるために開発したのが今回のImageToFacadeです。いままでの紹介してきたツールと多少違う点は、今回のツールは、"ツールを自動生成するツール"です。
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ツール紹介の前に、デザインについて少しお話をします。大学の建築学科でデザインを勉強しはじめてから、すでに20年以上もデザインの教育に携わっております。その中で私がもっとも感銘を受けた話を紹介したいと思います。
数学では、演繹法と帰納法という2つの手法が有名です。演繹法とはあたえられた「サンプル(例題)」に対して「解法」を用いて「解答」を得る推論方法であり、帰納法とは「解答」と「例題」から「解法」を推論する方法である。そしてもう1つの組み合わせである「解答」と「解法」から「例題」を作り出す行為こそ、デザイン行為というものです。
小学校から大学までは、多くの時間を演繹法の学習に費やします。足し算を例にすれば、3+5は?12+3は?といった問題が与えられ、足し算というルールから、答えを導きだす訓練をひたすら行います。一方、大学院レベルになると、規則やルールを推測して検証すること(帰納的な能力)を試されます。3@5の答えは8で、12@3の答えが15のとき、{@}というのはどういった規則であるべきかを推測します。上の定義によれば、この場合のデザインとは、答えが8(あるいは15)となる足し算をつくるという行為にあたります。デザインという、一見数学とは無関係な行為が、実は推論方法と密接に関連している(かも?)という話です。これ以降、デザインを数学的に解明するということが、私の研究目標となりました。
ところで、演繹法が短時間に解答を得ることを目的としており、帰納法はより一般的なルール抽出を目的としています。ではデザインの目的とは何でしょうか?実は、みなさんも知っているように魅力的・独創的なものをつくることです。何年も解くことができなった問題を解くためにはCreativity(独創性)が必要とよく言われますが、ここでもデザイン能力と深く関わっていると私は感じます。
答えが8になる足し算の例題として、「2+6」や「1+7」を考えることはあまり独創的とは言いませんが、足し算を勉強したての子供が「1+1+6」などの3つの足し算を即座に例題として作り出したりすると、ちょっと独創的だと感じてしまいます。1つの例題が、より多くの例題作成への牽引になることこそ、独創性が重要である理由であると考えます。そのような「独創性をサポートする」ツールの開発をしていきたいと思っております。
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デザインというのは例題を作るという話でしたが、ではどんなツールが独創性をサポートし、良質な例題を作成する手助けになるのでしょうか?様々な分野の研究者がこの「独創性(Creativity)」について研究しておりますが、私の立ち位置としては、独創性がなんであるかはよくわからないが、独創的な作品ができるかどうかは作り手によるものなので、せめて独創性を損なわないようなツールが必要であると考えております。今回は以下の仮説を立てました。“独創性をサポートする道具は、利用する作り手が十分自由に決定・選定することが可能であり、また柔軟に変更することができなくてはいけない。”
そして、お化粧箱に注目してみました。私は化粧はしませんが、多くの女性はいろいろな道具を詰め込んだ化粧箱というのを所有しています。またプロの方になるとそれはまるで魔法箱のようで、多くの道具を効率よく作業ができるように整理・管理されています。新しい道具を追加したり、クライアントや仕事に合わせて道具を常に調合してから仕事に向かいます。私はこのような仕組みがデザインツールにも必要であると考えました。そして、このような仕組みを建物のファザード生成に利用できるように、以下のようなツールを提案しました。
- デザイナはあらかじめ、自分用のファザード生成用の画像を用意する。
- 用意された画像群は、独自にフォルダー管理しておき、仕事に合わせて組み合わせを変えたりできる。
- 画像群から、3Dデータを生成するツール(インターフェイス)が自動で生成され。(各々の画像に対して1つのボタンが生成される。)
- 生成されるツールの使い方は、いつも同じであるためツールの学習のために時間を費やす必要がない。
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ここでは、実際のワークフローを紹介します。
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まずユーザは、これから作成する町の建物のファザードをよく観察し、それらの分割ルールと窓のプロポーションなどの画像データを作成し、それらを同一フォルダに保存します。 |
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本プラグインを使い、保存したフォルダを指定します。 |
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保存された画像から自動でボタン群が生成されます。 |
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実際に利用するには、Quadメッシュを選択し、画像ボタンの1つを選択します。 |
5-6) |
選択されたQuadメッシュは再分割されます。その高さ情報は画像のAlpha情報による。128(中央値)を0として凹凸を計算しています。インチベースかメートルベースかを指定する必要がある。デフォルトはインチである。〔図1参照〕 |
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■図1 ワークフロー |
画像作成についは、多少制限があります。まずファザードの分割は色の違いによっておこなわれるため、アンチエイリアスなどがかかっていると、画素ごとに分割あれてしまうため、OFFにします。
また、黒(RGB)=(0,0,0)、白(RGB)=(255,255,255)、などの純色はマテリアルIDや窓の形変形に使うため避けることが必要です。
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アリゾナ州立大学の授業で学生にユーザースタディしたものを図2に示しておきました。3ds
Maxを使ったことのない学生達でしたが、1時間ほどで以下の建物を生成することが可能となりました。
デザイン学科の学生ではないので、建物をどのくらい簡素化すればよいかが最初はわからなったようです。いくつかサンプルを示してあげることで、あとは楽しみながら作業をしていました。作成された30もの建物はFBXファイルとして出力し、UC-win/Roadにインポートしました。
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■図2 学生の作品 |
また、夏のワークショップで訪問したベニスの街並みモデルも、図3の画像群を使い作成しました。
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■図3 ベニスの街並みモデルのためのファザード用画像群 |
図4(左)の簡易モデルから15分もかからずに最終モデル(右)を作成することが可能です。
また、Forum8から出版される書籍カバーの3Dモデルも本ツールをつかって作成しました。(図5参照)
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■図5 自動生成された城モデルとそのための12枚の画像群 |
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自分で使うツールを簡単なパターン画像群を用意することで柔軟に調整でき、しかもクリックすれば建物のファザードの幾何データとそのマテリアルも決定できてしまうことが可能となりました。次回は建物をVR空間でよりよく見せるための、AmbientOcclusionを反映したテクスチャ生成ツール、BakedTextureを紹介します。
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スパコンクラウド(TM)「CGムービーサービス」は、UC-win/Roadを用いて作成された三次元バーチャルリアリティデータを、フリーの3DグラフィックソフトウェアであるPOV-Rayを利用してレイトレーシング出力し、高精細な動画ファイルを作成、提供するサービスです。レイトレーシングの最大の特徴は、光と材料の見え方を正確に計算できることですが、1枚の画像生成に数時間から数日かかる場合もあります。高品質の静止画を生成するために、UC-win/Roadの空間情報をPOV-Rayデータに出力する機能は以前よりありますが、レンダリング時間が長くなってしまうため、CGムービーの作成には利用できませんでした。スーパーコンピュータの利用によりレンダリング時間を大幅に短縮し、通常のパソコンやUC-win/Roadでは実現不可能な高精細の動画作成が可能となります。
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動画の作成にあたっては、UC-win/Roadで作成したVRシーンにPOV-Ray用の追加設定を行う必要があります。設定後は試験的にPOV-Rayで静止画を出力し、POV-Rayの設定及び特殊効果を確認、動画内容や、必要に応じてスクリプト等の調整を行っていきます。POV-Ray設定については、出力後にスクリプトファイルをエディタで修正することができ、フレキシブルに設定を編集することも可能です。調整完了後は動画の各フレームをPOV-Rayへと出力し、同時出力されるAVIやフレーム画像により、完成後のAVIを大まかに確認します。全ての確認を完了した後は、いよいよスパコンでレンダリングを行います。レンダリング結果をAVIファイルへと再構成・編集し、最終的にDVDディスク等で最終納品を行います。
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POV-Rayでは物体形状、表面特性、大気効果、光源、カメラ位置などの要素を調整することができ、UC-win/Road上でPOV-Rayプラグインを利用することで表示される各種の画面で、確認・追加設定を行うことも可能です。今回は、UC-win/Road上での追加設定が可能な数点の項目について、設定画面の表示方法と、基本的なパラメータを記載します。
表面特性(マテリアル)の表現
POV-Rayはオブジェクトの表面材質(テクスチャ)を定義するマテリアルの情報がスクリプトとして豊富に存在します。これらはUC-win/Roadの「3Dモデルの編集」ダイアログより編集を行うことができ、POV-Rayタブ内の「テクスチャ」タブをクリックして、テクスチャや表面材質、透明度などの設定を行うことが可能です。
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■図1 車の車体のマテリアル設定 |
光源の表現
POV-Rayは点光源、面光源、スポットライトをサポートしています。街灯・灯台などの3Dモデルを光源として使用する場合、「3Dモデルの編集」ダイアログより編集を行うことができます。POVRayタブにある各レイヤーをクリックして、テクスチャ、光源、ミストの設定を行うことが可能です。また、モデルの編集画面の「動作」設定で光源レイヤーを移動・回転させることで、灯台の光の回転のような動きを表現することも可能です。
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■図2 灯台の光源設定 |
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■図3 灯台のミスト設定 |
水の反射・波紋の表現
POV-Rayオプションでは、UC-win/Road上での水面をさらにリアルに表現することが可能です。湖沼を選択した際に表示される「湖沼の編集」ダイアログにある「POV-Ray」ボタンから設定の編集を行い、水面の反射や波紋に関する設定を行います。
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■図4 水面、海上のPOV-Ray設定 |
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POV-Ray動画の出力解像度とフレームレートについては、LowRes(512*384 15fps)、DVD解像度(720*480
15fps)、Blu-ray解像度(1920*1080 24fps)の3種類の解像度を用意していますが、大画面用の超高解像度サイズである6k(5760*2160)ムービーを出力することも可能です。6k解像度の場合は非圧縮状態で容量が1秒あたり1GBと非常に大きくなるため、そのままでは一般的な動画再生ソフトで再生を行うことができませんが、高効率のデータ圧縮を利用することで再生を実現しています。
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■図5 POV-Rayにて建物、車両のマテリアルを編集し、レンダリング |
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■図6 POV-Rayにて車両のマテリアルを編集し、レンダリング |
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■図7 POV-Rayにて光源、水の反射等を設定し、レンダリング |
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(Up&Coming '11 晩秋の号掲載) |
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