■土壌・地下水汚染とは
土壌汚染とは、土中にあって、人の健康あるいは生態系に影響を与える有害性物質によって土壌が汚染されることをいいます。
現在、日本国内で問題となっている物質は、重金属類・有機塩素系化合物・農薬・ダイオキシン類・環境ホルモン・放射性物質・病原性微生物類等です。この中で、土壌汚染対策法の規制対象になっている物質は、重金属類・有機塩素系化合物・農薬です。なお、ダイオキシン類については、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、別途環境基準が設定されています。図1に、土壌汚染の広がり方と汚染経路の模式図を示します。重金属については土壌の吸着能が高いため移動しにくく、揮発性有機化合物は水より重く拡散しやすくなっています。
■土壌汚染対策法
顕在化する土壌汚染の増加を背景として、土壌環境保全対策の制度の在り方について調査・検討を経て、平成14年5月29日に公布され、平成15年2月15日より施行されました。
土壌汚染対策法の目的は、国民の安全と安心を確保するため、環境リスクを適切に管理し、人の健康への影響を防止することにあります。そのため、汚染の可能性の高い土地については、有害物質を取り扱う施設の廃止時等の一定機会をとらえて調査を実施すること、また、土壌汚染が判明し、それによって人の健康に係る被害が生ずる恐れのある場合には必要な措置を講じることが定められています。
■特定有害物質と指定基準
特定有害物質とは、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずる恐れがあるものです。
特定有害物質には、(1)汚染土壌を直接摂取することによるリスク(直接摂取によるリスク)、(2)汚染土壌からの特定有害物質溶出に起因する汚染地下水等の摂取によるリスク(地下水等の摂取によるリスク)があります。
土壌・地下水汚染に係る有害物質としては、揮発性有機化合物、重金属等、農薬、ダイオキシン類および油類(石油系炭化水素)があり、「土壌汚染対策法」では、第一種特定有害物質として揮発性有機化合物(VOC)を11種、第二種特定有害物質として重金属等を9種、第三種特定有害物質として農薬とPCBを5種の合わせて25種類を特定有害物質と定め、それぞれについて指定基準を定めています。表-1に特定有害物質の基準値一覧表を示します。
表-1 特定有害物質の基準値一覧表
■ 土壌・地下水汚染調査法
土壌・地下水汚染調査の目的は、汚染発生の有無を判定し、汚染が有ると判定された場合には、適切な措置を講ずるための基礎資料を収集することにあります。また、汚染が発生している場合には、汚染発生源の究明にも努める必要があります。図2に、一般的な土壌・地下水汚染調査フローを示します。フロー中のシミュレーションは、一般に移流拡散モデルに対応した浸透流解析計算ソフトを用いて行われます。UC-1地盤解析シリーズ「VGFlow」においても移流拡散モデルに対応する予定です。
土壌・地下水調査でのポイントは、「汚染源の特定」、「垂直水平方向における拡散性と拡散速度の把握」、「対策工法別ごとの効果と二次汚染リスクの評価」です。
上記の3項目を把握するのに必要な要素を表2に示します。
■土壌・地下水浄化対策
汚染土壌を直接摂取することによるリスクや汚染土壌からの特定有害物質溶出に起因する汚染地下水等の摂取によるリスクの低減を図るための土壌・地下水浄化対策には、図3に示すようなものが考えられます。また、対策工においては、地下水変動の影響解析を当社UC-1地盤解析シリーズ「3次元浸透流解析(VGFlow)」で解析可能です。
参考文献:
・土壌・地下水汚染の調査・予測・対策
(社)地盤工学会、平成14年5月、p.22、p.26
・土壌汚染対策法のしくみ
環境省・(財)日本環境協会、2003年3月 |
▲図1 土壌汚染の広がり方と汚染経路
調査項目 |
汚染源 |
拡散方向性 |
対策工リスク |
地形 |
表層拡散の最上流を特定 |
表層拡散の方向性を特定 |
表層改変による二次拡散を評価 |
表層土壌 |
汚染物質濃度の水平比較評価 |
表層拡散速度の評価 |
汚染度除去における処分リスクの評価 |
土質・地質構造 |
広域拡散時の最上流を特定 |
広域拡散時の方向性を特定 |
吸引法等による二次拡散リスクの評価 |
水質・水理構造 |
植生・
植物汚染 |
表層拡散の最上流を特定 |
垂直拡散構造把握印紙 |
植物(木根)による垂直拡散評価 |
▲表2 地盤汚染調査での調査項目
▲図2 一般的な土壌・地下水汚染調査フロー
▲図3 土壌・地下水汚染対策の分類 |