リオデジャネイロ・オリンピックで日本代表選手が、史上最多41個(金12銀8銅21)のメダルを獲得したこともあり、常に人気のある野球やサッカーや大相撲だけでなく、水泳、柔道、レスリング、それに卓球、バドミントン、カヌー……といった競技の話題も、テレビや新聞で取りあげられるようになった。
このスポーツの人気は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ますます盛りあがっていくことだろう。
が、ここでひとつ注意したいのは、どれだけスポーツ人気が高まったところで、われわれ日本人はスポーツのことをあまり知らない……という事実である。
たとえばバレーボールってどういう意味?と訊かれて、答えられる人がどれくらいいるだろう? また、ドッジボールは誰もが子供の頃に遊んだ経験があるだろうが、それは、どういう意味? と訊かれて、あなたは答えられますか?さらに、野球の左投手のことを、なぜサウスポーというのか?「サウスsouth ポーpaw」は「南の手」という意味。それが何故「左利き投手lefty pitcher」という意味になるのか?
その答えは……?
少々ツムジ曲がりの性格を自覚している私は、それらの質問をテレビや新聞のスポーツ担当記者にぶつけ、彼らが答えに窮するのを見てニヤニヤ笑うことを趣味にしている。じっさい、彼らのなかで正解を答えた人には、まだ一人も出会ったことがないのだ。
とはいえ、じつは私も、スポーツライターという肩書きを名乗りながら、40歳近くになるまで、それらの疑問に答えることができなかった……という以上に、そんな疑問を抱くことにすら気づかなかった。
そもそもスポーツsportsとは外国語(英語)で輸入文化。だから日常的にアルファベットを使う人々なら、バレーボールとは volleyball
のことで、それはテニスのボレーvolleyや、サッカーのボレーシュートvolley shootと同様、ボールが地面に落ちる前に空中に弾き返す行為であると難なく理解することができる。
ドッジボールのドッジdodgeも「避ける」という意味で、それがボールに当たらないように避ける遊びだとわかる。さらにメジャーリーグの野球チームのロサンゼルス・ドジャースdodgersが、かつてはニューヨーク郊外の下町ブルックリンのチームで、細い道に大きなトロリー・バスが走り、道ばたで遊んでいる子供たちに向かって母親が常に「ドッジ!ドッジ!(避けろ!)」と叫んでいたので、ブルックリンの子供たちのことはdodgersと呼ばれるようになり、野球チームの名前にまでなった……というエピソードにもつながる。
ところがアルファベット(英語)を日常的に使うことのない我々日本人は、バレーボールと言えばネットを挟んでボールを打ち合う球技、ドッジボールと言えばボールをぶつけ合う遊び、という程度にしか理解しないまま、サウスポーsouthpawも正しい意味などわからないまま、「左利き投手」のことと思い込んでしまうようになってしまった。
じつはサウスポーとは、ナイター設備のない時代に、西日が右打者の目に入らないよう、「本塁から二塁方向は東北東を理想とする」と野球場の方角がルールで定められ、左投手の手pawが南southから出てきたためsouthpawという言葉が左利き投手のこととなったのだ。
ほかにもスポーツには、我々日本人が意味を知らないまま使っている言葉が山ほどある。フットボールfootballなら何となく「足foot」を使うボールゲームだとわかるが、では、サッカーsoccerとは、どういう意味?
それは次回に書くことにして、言葉の意味がわかってくると、スポーツは、ますます面白く楽しめるようになってきますよ。
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