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これからの国土強靭化に対応する
設計支援ソリューションとは
解析ソフト活用で、安心・安全なインフラ構築へ
高性能で、使いやすいソフトで効率的な設計支援


▲東京大学大学院教授 古米弘明氏 ▲芝浦工業大学教授 守田優氏

──安心・安全な社会インフラの構築に向けて国土強靭化の取り組みが進められています。水工分野における国土強靭化の取り組みについてお伺いします。

守田教授  水害防止については、大河川の治水から始まり、続いて都市河川の治水が行われ、自治体によっては安全度が高まってきました。そういった中で、近年顕著になってきたのが、内水氾濫による水害です。
 これは、よく言われるように、気候変動により雨の降り方が大きく変わったことがその一因として挙げられます。1970年代には、時間50mmを超えるような雨はあまり発生していませんでしたが、現在は時間100mmを超える雨が頻発するようになってきています。
また、下水道の雨水整備計画は、60年代、70年代に時間50mm対応で策定され、整備が進められてきましたが、現在頻発する豪雨には時間50mmでは対応できないということが明らかとなって きました。
そういった中で、どのようにして水害を防止していくかということになりますと、時間や費用がかかる大構造物を整備するのではなく、既存の貯留管や調整池をうまく組み合わせて活用するですとか、貯留浸透施設を設置するですとか、大規模構造物を補う形で、いまあるものを効率的に組み合わせることが重要だと考えています。そして、都市河川、下水道システムを総体として、減災にいかに繋げていくかが課題となってくると思います。
 強靭化というとハード対策の印象が強く、それは間違いではないのですが、今後はソフト対策が重要になってくると認識しています。

古米教授

 国土強靭化は、英語で「ナショナル・レジリエンス」です。この「レジリエンス」という言葉には、“強くしっかりとした”という感じがありますが、“粘り強い”ですとか“しなやかに受け流す”という意味も含まれています。
東日本大震災を経験して、今後、既往最大以上の台風や局所的な集中豪雨が発生してくることを想定しないといけません。そうしますと、土砂災害や河川氾濫、内水氾濫など様々なタイプの災害が複合的に予期しない形でやってくると思います。
 先ほど、守田先生が提示されたように、これまで想定されていない災害には、既存のストックだけでは耐え切れません。ですから、ストックを最大限活用して、被害をゼロに抑えることは難しい現象が発生した場合でも、それをどのように受け流して被害を最小化するかという考え方が大事です。施設を見直して、補強を検討するなど、今ある施設能力を最大限発揮するように機能を追加していくことが必要です。
 そのためには、まず現有ストックの機能を定量的に診断・評価しなければなりません。機能を数値化してモデル化し、シミュレーションをかけて定量的に評価するということが非常に重要になってきます。
 そうしたときに、将来起こりそうな現象を予測するということについては、モデルはある程度不確実性があるので、そのモデルをしっかりキャリブレーションした上で、関係者全員が納得できるようなソフトウェア活用方法を確立することが必要です。
 それには、河川や下水道のデータを持ち寄り、様々なモニタリングデータ、観測データ、降雨情報、水位情報、流量情報などをモデルの検証用・検定用に“アーカイブ化”することが求められます。電子化されたアーカイブとして、共有できるデータを残すことで、モデルの検定・検証がレベルアップしていきますし、ストックの効率的な運用・管理につながると思います。

守田

 先ほど、雨の降り方が変わり、豪雨が多くなったと申し上げましたが、現在は非常に狭い範囲で降る局所的集中豪雨が増えています。こういった雨の降り方は、河川よりも下水道に負荷がかかります。これまでは、ハードで下水道からの溢水を防ぐというコンセプトだと思いますが、時間あたり100mmの雨が局所的に降りますと、現在のハード施設で完全に防ぐことが難しくなります。
古米先生がご指摘した通り、今後は“受け流す”ということが必要だと思います。そのためには、平常時からの準備、豪雨時の対応、浸水箇所の復旧までの全過程を一体的に考えて、対応することが必要だと考えます。
 そういったことを考えますと、先ほど、定量的な評価の必要性について触れられましたが、これからはまさに内水氾濫を精緻に解析するモデルが必要で、下水道の氾濫解析モデルはこれまで以上に重要性を持ってくると確実に言えると思います。
 
古米
   
 台風や局所的な大雨でも、浸水被害が起きやすい土地は、低平地の可能性が高く、そういったところでは、ポンプ運転をどうすればいいのかが課題となります。そうすると、河川部局と下水道部局との共通認識の中で、ポンプ運転が行われ、下流側の洪水防止とともに上流側の内水氾濫を最低限に抑えながら、全体の最適化を図ることが期待されると思います。また、浸水エリアや浸水継続時間をシミュレーションするとともに、XバンドMPレーダ(XRAIN)の情報と、気象庁の情報である降水短時間予報や降水ナウキャスト情報などを組み合わせて活用できれば、数時間先の雨の降り方を想定した形で浸水の可能性を予測することができます。
 こういったことができれば、住民に対して「以前浸水したときの雨の降り方と似ているから、気を付けてください」と情報提供することもできます。
 今は、ここまで出来ていませんが、これができれば、水害・都市浸水を軽減・予防する有効な雨水管理技術として、日本だけでなく、海外にも輸出できると思います。


──さまざまな意見があがりましたが、守田教授から他に意見はございますでしょうか?

守田  浸水に関しては、これまで浸水深度しか考えられていませんでしたが、浸水の滞留時間や浸水時の流速など、もっと細かな状況が表せるようにしなければならないと考えています。
 ハザードマップには、避難場所が示してありますが、地表の勾配など浸水箇所の地形によって流速が違いますので、流速が速いところでは、そこを渡って避難することは非常に危険です。ですから、浸水に関しては、滞留時間、流速まで計算できるモデルが必要になってきていますし、ハザードマップ作成時には、このような観点も加えて策定してほしいと思いますね。
 私はXPSWMMを使っていますが、このソフトもそういった細かなところまで計算できますし、そういう対応ができるまでソフトウェアの開発が進んでいるんですね。


──今後の国土強靭化には、雨水流出解析ソフトなどが欠かせません。ソフトの課題や今後の研究・開発の方向性はいかかでしょうか。

守田  雨水流出解析ソフトは、条件をダイアログボックスに入れるだけで簡単に計算できるなど、非常に使いやすくなっている反面、計算する場合の条件が制約されてくるというトレードオフの関係があります。
 たとえば、浸透率を計算する場合を考えてみると、家の屋根に降った雨は、雨樋を通じて下水道に繋げなくてはいけませんが、実際には繋いでないところも多く、正確な浸透率がでないといったことがあります。
 また、われわれの目標は、浸水をシミュレーションするのではなく、モデルから計算して被害予測を行い、浸水被害を軽減する点にありますが、その点でも課題があると思っています。現在、浸水被害を計算するために、浸水モデルで計算して、また別のモデルに入力して被害を計算しています。将来的には、さらに被害額まで予測するモデルが要求されるでしょう。ですから、一つのソフトで、浸水シミュレーションから被害予測、被害額までを予測するものを開発してほしいですね。
 
古米
   
 xpswmm、Infoworks、MOUSEなどのソフトウェアがありますが、それぞれ特徴をもっていて、高いレベルで開発されてきています。下水道と河川をリンクして計算できるようになっていますし、ツールとしては非常に完成度が高いと思います。
 守田先生もご指摘のように、非常にユーザーフレンドリーなシステムとなっていて、デフォルトも設定された上で、採用可能なサブモデルも多数用意され、状況や目的に応じて最適なものを選んで使うことができるようになっています。その反面、あまり経験・技術がない方が間違った使い方をしても結果だけは出せてしまうといった懸念があります。ソフトウェア提供側もモデル利用の研修を行っていますが、人材がしっかり育ったときに本当に役に立つツールになるんだと思います。

守田
   
技術者の能力の問題は非常に大きな課題だと認識しています。ソフトがレベルアップすると、それを使う技術者の能力もそれに対応して高くないと、うまく使いこなせないことになりかねません。
以前は自分たちでモデルをつくって経験を積みながらやっていましたので、結果が出ても“これはおかしい”とわかるセンスを身につけてこられたということがあったと思います。
大都市では、データが揃っていますが、小規模都市では、データが揃っていないことが多くあります。その中で、解析や被害分析を行うときは、データ不足という制約がありますが、経験がある人であれば、データが不足していてもある程度、合理的で客観的な計算ができます。ですから、現場や計画策定などの業務で経験を積むことが非常に重要です。大学では時間が足りず、学生にそこまで教えることができませんが、経験することの重要性は伝えています。
 
古米
   
技術者の能力を向上させるには、解析ソフトの資格試験や検定試験を創設することも方法の一つです。そして、自治体も解析ソフトの資格を有している技術者がいるコンサルタントに仕事を出すようにすれば、結果としてみなさんがしっかり勉強されますので、技術力の底上げにつながると思います。


──そのほかに、ソフトに求められることや、必要な取り組みはございますか。

古米  ソフト自体はしっかりしていますが、降雨や下水道施設、地表面、標高、浸透率などの入力データが十分に揃っていないと計算精度が落ちてしまうといった課題があります。中小規模都市の下水道施設はまだまだ電子化データがそろっていませんので、正確な解析を行うためにもしっかりデータ整備をしていだきたいですね。
 また、地下街を含めて解析するソフトをパッケージ化できると、さらに大都市の都市浸水対策に役に立つと思います。さらにXRAINなどの降雨情報や、国土の地理情報、下水道の情報をコンバートして取り込めるようなインターフェースが機能向上すればいいですね。
 
守田
   
地下街の問題が出ましたが、局所的集中豪雨では、地下空間に大きな被害が発生しますので、地下空間をどうモデルに組み込んでいくのかが、これから大事になってくると思います。

古米
   
リアルタイムコントロール(RTC)に適応したソフトの開発も必要だと考えます。予測精度を上げるには、河川に加えて、何十万本もの下水道管渠データを入れるとともに、XRAINなどの雨量情報を250mメッシュで取り込んで、膨大な情報量を高速で解析しなければなりません。そうすると、計算をするのに数時間かかってしまいます。リアルタイムで対応するには、当然5分、10分で計算できることが必要になってきます。ソフトを使って事前に施設設計するとか、対策効果を評価するときには、数時間かかってもいいのですが、RTCで使おうと考えると、いかに精度を保持して高速化するかというのが課題になります。
 また、RTCの観点も重要ですが、個人的には過去の降雨のパターンを数多くデータに取り込んで予め分類し、実際に豪雨が発生したときに、どのような浸水被害が発生するのかといったことをナレッジベース化することが重要だと思います。
 ナレッジベースの情報をユーザーにとってわかりやすい形でデータベース化されていれば、その知識情報を活用して、最新の計算結果と照らし合わせながら、被害の軽減を考えることができ、迅速な対応・復旧にもつながると考えています。
 
守田
   
例えば、利根川や荒川などの大河川ですと台風のコース別の雨の降り方がデータベース化されています。雨の降り方が局地的になっていますので、ここに降ったら、どういう浸水のパターンとか、データベースに整理しながら、ナレッジベースとすれば、たしかに行政にとって有用なシステムとなると思います。
 
古米
   
そういった意味では、国が流域単位でナレッジベース化するように制度化するように指針のようなものを出していただければありがたいですね。


──これまで数多くのご意見・ご提言をいただきましたが、最後に水工学のナショナル・レジリエンスという観点からお二人に一言ずつご意見をいただけますか。

古米  工学でナショナル・レジリエンスを向上させるためには、IT活用が大事です。例えば、シミュレーションツール、XRAINの雨量データ、現象を把握するとき用いる河川や管きょの水位データなどを統合して上手に使うことだと考えます。
 ITの役割は非常に大きいですけれども、それを使う人材が何よりも重要だと思っています。それは、現場で起こっている現象を把握し、また、その現象の原因や影響因子までわかっている人だけがシミュレーション情報などを正しく使いこなすことができるからです。
 
守田
   
 水害の問題は市民にとって非常に身近な問題です。浸水を防ぐことは非常に重要な仕事で、若い人にとっても、やりがいがある仕事だと思います。現在は、情報が氾濫し、情報を処理する技術も向上していますが、だからこそ本物の技術者が要求されていると思います。本物とは何か?
 それは現情報・データを使いこなせ、手にした情報の裏側まで読めるような技術者だと思います。そういった技術者を育てるためにも、良い経験が積める仕組みを構築していきたいですね。



(出典:水道産業新聞(2014年7月17日記事より)


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