2020東京大会の次は、2024年パリ大会。そこを本拠地としているサッカーチームのパリ・サンジェルマンは、昨年独自に仮想通貨の発行に踏み切った。いくつかのサッカーチームは選手もそれに続いているが、オリンピック(世界のスポーツ界)が仮想通貨に手を出す日は来るのか?
いよいよ来年2020年のオリンピック・パラリンピックが開幕する7月24日まで、あと1年と少し……という秒読み段階に入った。
はたして日本の夏の猛暑はどれほどの影響を与えるのか? 無事に2週間の競技を終えることができるのか? ……という心配もあれば、東京五輪招致の段階で動いた2億円以上のカネが「賄賂」の疑いがある、とフランス検察庁が捜査を続け、このままではJOC(日本オリンピック委員会)の竹田恆和会長が逮捕され、東京五輪は開催権をIOC(国際オリンピック委員会)に取りあげられるかもしれない、と危惧する人(政治家?)もいる。
日本の招致委員会から出たカネは、シンガポールにあったブラック・タイディング社というコンサルタント会社(幽霊会社という人もいる?)に振り込まれ、最終的に国際陸上競技連盟の元会長でIOC元委員でもあったラミン・ディアク氏という人物に渡ったのではないか……、それは招致活動の段階でアフリカのIOC委員の票の取りまとめを依頼した前金と成功報酬だったのではないか……と疑われているのだ。
前回のリオデジャネイロ・オリンピックで、招致委員会と組織委員会の会長として活躍したカルロス・ヌズマン氏も、フランス、アメリカ、ブラジル検察の合同捜査で、ラミン・ディアク氏に約2億円のカネを渡し、票の取りまとめを依頼したことが賄賂と認定され、逮捕されている。
だから……とはいえ日本の招致委から出たカネがディアク氏に渡ったという証拠はまだ出ていないらしく、竹田JOC会長も、それは正当なコンサルタント料と主張。また、フランス検察の動きは、日本の検察がカルロス・ゴーン元日産会長を逮捕したことに対する意趣返しで、東京の五輪開催には実質的には問題ない、と断言する人物もいる。
さらに、フランス検察庁の動きから竹田氏がJOC会長を辞めないと東京五輪開催が不可能になるかも……と過剰反応するのは、竹田会長をスポーツ界から追い出そうとする政治的策謀だ、と言う人物(JOCに近い人物?)もいる。
今年になって来日したIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は、東京五輪の準備の状況について「何の問題もない」と太鼓判を押したことでもあり、おそらく東京2020オリンピック・パラリンピック大会は(よほどの天変地異でもない限り)99%確実に開催されるだろう(と言う人が今のところ多いようだ)。
が、東京大会以後のオリンピックを考えると、少々暗い気分に陥らざるを得ない。
というのは今回の東京大会もそうだが、昨今のオリンピックの開催運営費の異常なまでの高騰で、開催立候補都市が激減。2024大会に立候補したのがパリとロサンゼルスという、いずれも3度目の五輪開催を目指す2つの都市だけに限られてしまった。
そこでIOCは、とりあえず近い将来を安定させる作戦に打って出て、この2都市を2024年パリ大会、2028年ロサンゼルス大会に早々と決定したのだ。
これはある意味で、絶妙な決定だった、と言えるかもしれない。
パリ大会は、1900年の第2回大会、1924年の第8回大会以来3度目。オリンピック創設者であるクーベルタン男爵の故郷へ戻ることになるわけだが、それ以上に気になるのは、パリをホームタウンとしているサッカーの強豪人気チーム、パリ・サンジェルマン(PSJ)の存在だ。というのは、PSJは昨年、チーム独自に仮想通貨を発行したからだ。
この仮想通貨PSJを買ったサポーターは、選手との交流会に参加したり、選手のユニフォームのデザインや色を決める投票権を得ることができるという。今は、その程度だが、独自の仮想通貨PSJの使える範囲を徐々に延ばして、将来的にはチームのキャラクター・グッズはすべてPSJ通貨で取引するようにしたり、選手の契約金や年俸、チーム職員の給料も、将来的にはPSJ通貨を使用するようにしたいという。
サッカー・チーム独自の仮想通貨はPSJだけでなく、イングランドのプレミアリーグのアーセナルや、イベリア半島(スペイン)のイギリス領ジブラルタルのサッカーチームなども独自の発行を開始。FIFA(世界サッカー連盟)もその動向に注目しているという。
将来的には、FIFAが独自に仮想通貨を発行し、世界のサッカー界の取引を独自通貨で行うことは可能かどうかという調査を開始し始めた、という情報を口にする人もいるのだ。
世界のサッカー界で動くカネは莫大で、選手の年俸も数十億円単位。そこで、それを「信用」に、元ブラジル代表選手のロナウジーニョは「RSコイン(ロナウジーニョ・コイン)」を発行。ファンクラブで通用する通貨として、サッカー学校の設立資金集めを始めている。
またコロンビア代表のハメス・ロドリゲスや、ヴィッセル神戸入りしたスペイン代表のイニエスタなども、ファンクラブをネットワーク化して交流を深める手段としてトークン(限られた地域や組織だけに通用する疑似通貨)を発行し、サッカー関連事業の資金集めに利用しているという。
そこで、それらスポーツ関係の仮想通貨に、IOCも注目しはじめているというのだ。
|