誌上セミナー ●情報化講座 (6) |
監修 :
田中 成典 教授
関西大学
総合情報学部 |
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●GISの構築に関するデータ・モデルの重要性
近年、GISデータを使用して、交通システムの整備(道路整備計画、交通事故対策など)、災害対策(地震被害情報、洪水対策など)が行われています。しかし、土地の標高、洪水情報、住所情報などシステム間で、データの設計、品質、記述方法などが異なると整合がとれず、データが不確かなものになってしまいます。データで表現されている意味(情報)を正しく伝えるために、異なるシステム間でGISの標準化が必要です。また、空間データの種類、特性、品質、入手方法など情報の属性を詳細に示した情報であるメタデータの作成・表示方法の統一化、品質評価・表示の共通ルールの策定、利用者サービスの明確な目的も必要になってきます。
・プロダクト・モデルの共有
利用者サービスを実現するには、データの共通部分を構造化する作業が必要になります。この構造化する作業に関しては、データにおいて扱う全ての「情報」の相互関係を明確化し、階層構造を持つ体系として関係付ける情報モデルを使用します。
・地物と地物カタログ
GIS標準化の一つとして、データの整合性の問題があります。異なるシステム間でデータの整合性を取るには、共通の文法と辞書が必要になります。何が共通しており、共通していないのかをまとめると、共通の文法では地物に関する定義が必要になることがわかります。また、共通の辞書では、地物カタログの形式を統一して互いにデータと合わせて交換できるようにする仕様を策定する必要があります。
地物 |
実空間上の位置と直接的、間接的に関連付けられた事象を整形(抽象化)し、地図を構成する個々の要素(山、海、建物、橋など)のこと |
地物カタログ |
様々な分野で共通的に使われる地物の意味や性質、地物に加えられる情報操作などをあらかじめ決めておき、それらを集めたもの |
その標準化の一つとして、データプロダクトが作成仕様書で定めた内容からどの程度乖離しているかなどに基づいて品質を定義した品質ラベルが挙げられます。品質ラベルは、より詳細な品質要素によるデータ項目ごとの記述で構成されています。
・完全性: completeness ・論理整合性: logical consistency ・位置精度:
positional accuracy
・時間精度: temporal accuracy ・属性精度: attribute curacy
これらは、縮尺によって精度が異なる地図データ間で、プロダクト・モデルを共有する場合などに使用されます。また、データ作成・購入時の要件定義にも利用されます。
しかし、地物を共通の枠組みとした場合、問題も発生します。多くの利用者は「道路」や「建物」など、より具体的に定義された地物を共通に使用しています。地物だけが共通の枠組みだと、分かり切った「道路」、「建物」をデータ交換する際も、地物カタログを添付する必要があり、手間がかかってしまいます。決まったデータを交換・共有する場合は、地物をより細かく定義した共通地物があると便利です。
・統合型GIS
共通の地物、地物カタログを利用し、その仕様を共通化したGISを統合型GISといいます。
統合型GISは、地図データ作成の重複を防止し、様々なデータの共通基図を媒介として統合し、最終的に地域において共有できる空間データの基盤となります。統合型GISを実現するには「標準化」が不可欠です。異なるシステムで蓄積されたデータを共有化し、共通基図を構築する作業が必要になります。
●CALS/ECとGIS
JACIC(財団法人日本建設情報総合センター)が取り組んでいるCALS/ECアクションプログラム2005では、共通の情報交換としてCADデータ交換標準が策定されています。その一つである『CAD-GIS連携の手引き書(案)』では、CADからGISのデータ交換にあたり、必要となる基準類、その作成手順などの考え方をまとめています。これは『道路工事完成図等作成要領(案)』をもとに整理されています。この要領案は、道路に関するデータ(完成平面図、施設台帳)を電子納品後、完成平面図は道路基盤データ、施設台帳は道路施設基本データへとGISデータとして変換し、データを共有・活用することができるように定めています。すでにこの要領案を使用してCAD-GISデータの共有を進めている自治体もあります。(http://www.gis.nilim.go.jp/index.html)
●GISの今後の展開
データ交換、利用者サービス、品質など、情報を記述する枠組みは次々と標準化されてきていますが、オンラインベースのデータ統合、サービスの自動化までは統一されていません。これらを標準化するにはコミュニティの範囲、データ交換・サービス連携の強度に応じて、セマンティックスの統一が必要になってきます(セマンティックスとは特定の表記にとらわれず、表現された意味に着目することです)。その際、共通化すべきセマンティックスの抽出を行い、共通化の意義・効果を明確化できる手法が必要になります。
●当社のGISへの取り組み
FORUM8では、UC-win/Road Ver.3.3のプラグインとしてUC-win/RoadShape fileプラグインを開発しております。このプラグインでは、Shapeファイル構造の交換だけでなく、GISへのデータ交換も可能になります。また、このプラグインとは別にGISプラグインも開発を計画しております。 |
参考 : ケンセツ21 CALS/JAPAN
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(Up&Coming '07 晩秋の号掲載)
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