「デジタル・コンストラクション・コンソーシアム」2017年度第1回勉強会では、建設分野での施工事例や、マスカスタマイゼーションを建築生産に適用するための他分野の事例などが紹介されました。ここではその内容について簡単にレポートいたします。
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開催概要
日時:2017年6月2日(金) 15時〜18時
会場:慶應義塾大学三田キャンパス東館4階セミナー室
主催:慶應義塾大学SFC研究所 |
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建設生産とデザインを総合的に扱うデジタル技術の応用を模索 |
「デジタル・コンストラクション・コンソーシアム」は、慶應義塾大学SFC研究所の主催により、建設生産とデザインを総合的に捉えたデジタル技術の具体的な応用展開を目的とした情報交換ネットワークづくりとして進められているプロジェクトです。勉強会をはじめとして、シンポジウム、ワークショップ、データベースの整備などが計画されており、フォーラムエイトも一般会員として活動に参加しています。
「デジタル・コンストラクション」の技術的背景と社会的背景 |
近年、JCTの建設応用に関する動きが活発化しています。建設業界において「自動化 施工」「省力化施工」「情報化施工」といった枠組みで行われてきた研究・開発が実用化に結び付き始めたことに加え、こうした活動をさらに発展させる目的から国土交通省主導の新しい枠組み「i-Construction」が展開されたことがその主な要因と考えられます。
一方で、こうした動きが活発化した技術的背景としては、関連するJCT分野(IoT、VR/AR、 ドローン、デジタルファブリケーション)が分野的成熟を迎えることで、実用化ハードルが急速に低下したことが挙げられます。
また BIM/CIM といった、建築・建設分野に関わる様々な異分野・異業種が情報データ連携を行うプラットフォームが提示され、それが普及してきたことも大きな要因と言えます。このように建築・建設分野におけるJCT応用は、各個別分野の業務をそれぞれに高度 化・拡張すると共に、これまでは実現できなかった様な異分野間・異業種間の協働につながるワークフローの変革を起こし始めています。
一方で建設業界は、「一品受注生産」「現地屋外生産」「労働集約型生産」という特徴を持っており、業界の宿命として生産性向上が難しいという課題を抱えています。しかし超高齢社会に突入した日本においては、就業人口や専門技術者数の減少といった就業構造の変化によって、省力化による生産性向上が喫緊の課題となってきています。
さらに近年では、建築・建設に求められる条件・性能などが高度化・複雑化してきています。また建築・建設に関わる職域自体も拡大してきていることで、業界的な省力化の要求に
逆行する形で業務自体は増加傾向にあります。
こうした業界的な課題の解決に対しても、前述したJCTの活用が注目を浴びており、その効果に期待が寄せられています。
■2017年度第一回勉強会プログラム内容
- はじめに
1.1. 「デジタル・コンストラクション」の目指すものについて(池田靖史)
1.2. 「デジタル・コンストラクション」コンソーシアムの活動内容について(池田靖史)
- 「デジタル・コンストラクション」の「コアビジョン」醸成のための講座
2.1. 「デジタル・コンストラクション」に関する先導的事例の紹介(丹野貴一郎)
2.2. 海外における「デジタル・コンストラクション」に関連する活動の紹介
-「MassCustomization and Design Democratization」の視察報告(池田靖史)
- 「デジタル・コンストラクション」コンソーシアムの参加者を繋ぐプラットフォームづくりに関して
3.1. コンソーシアムWebサイト/データベースサイトの企画説明(池田靖史)
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本コンソーシアムの活動は、BIMなどのデジタル情報技術の建築生産への応用により生まれつつある、施工における精度確保、安全性向上、短工期化といったイノベーションを背景としています。従来の規格化部品による矩形の建物だけではない複雑な形状の建物が可能となり、建築のデザインを革新し、新しい価値を生み出すことが期待されています。
2017年6月に開催された今年度第一回目の勉強会に、フォーラムエイトも参加いたしました。今回の講座では、清水建設株式会社の施工事例や、池田氏によるマスカスタマイゼーションを建築生産に適用するための他分野の事例などが紹介されました。
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この勉強会は、VDWCの実行委員長でもある池田靖史氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科教授)の研究室が主体となって開催されています。
最初に池田氏より、コンソーシアムのコンセプトや活動予定についての説明があり、技術的背景、社会的背景、創造的視点を軸としたデジタル・コンストラクションの具体的実施例の実現や、最新研究動向に関する講座、先導的事例の紹介、勉強会とシンポジウムおよびデータベース構築による連携、ワークショップ運営などの活動方針が挙げられました。
データベース構築は、コンソーシアム参加者による連携ネットワークを目的として、デジタル・コンストラクションに関連するコンソーシアム参加者の技術・設備・事例などを集約したものとして進められる予定です。参加者が各々の興味?関心?目的に応じて繋がり、連携ネットワークを構築するために、データベースは利用技術の種類、実施者、キーワードなどの共通点・類似性によって、多様な検索?閲覧が可能なものを目指していくことが述べられました。
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【デジタル・コンストラクション・コンソーシアム活動方針】
- 「デジタル・コンストラクション」推進に向けて共有すべき
「コアビジョン」の醸成
- コンソーシアムの参加者同士を繋ぐ連携プラットフォームを構築
- コンソーシアム参加者のコラボレーションを誘発する参加・体験
ワークショップを運営
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池田氏より、MassCustomization and Design Democratizationの視察報告が行われました。2000年頃よりのマスプロダクトからマスカスタマイゼーションの流れをふまえた上で最近の事例が紹介され、建設産業でも新しい動きが起こせるのではないかということが述べられました。
コンソーシアムでは、今夏に1日程度の予定で、参画企業・大学参加によるワークショップが企画されており、参加各社の技術を融合することにより新しいソリューションが生み出されるきっかけづくりとして期待されています。
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