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 FORUM8デザインフェスティバル2009-3Days

(Up&Coming 2010年 1月号)
 多様な土木建設デザインの先進ソリューション、VRの国際的研究アプローチが一堂に
 2009年11月18・19・20日の三日間、フォーラムエイトは「FORUM8 デザインフェスティバル 2009-3Days」を東京コンファレンスセンター 品川で開催いたしました。
 近年力を入れて開発に取り組んできた3次元(3D)プレート動的非線形解析「Engineer's Studio」が2月に、ラージスケール・マルチVR(バーチャルリアリティ)「VR-Studio」が10月にそれぞれリリースされ、2009年は当社にとって記念すべき年となりました。そこで、例年この時期に実施してきた「国際VRシンポジウム」および「3D・VRシミュレーションコンテスト」に加え、従来は別途行ってきた「デザインコンファランス」を統合。これらの新しいソリューションをはじめ当社の最新技術や内外の関連する研究動向を、規模を拡大して ご紹介すべく「デザインフェスティバル」として新たに展開することになりました。

▲代表取締役 伊藤裕二

 「デザインフェスティバル」を構成する3イベントのうち、「デザインコンファランス」のベースとなるのは、立体骨組み構造の3D解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」のリリース(2002年)を受け、2003年10月にスタートした「UC-win/FRAME(3D)協議会」。2007年からはこれを拡張し、「UC-win/UC-1ユーザ協議会」と併催する形で「デザインコンファランス」へと発展。今回で第3回目を迎えます。

 また「国際VRシンポジウム」はVRに関わる優れた研究や技術、アイディアを議論・活用することを目的としています。2007年、建築・建設系研究者から構成する3D・VRの国際学術グループ「World 8」を組織し、その研究成果を発表する場としてスタート。第3回目となる2009年の活動に当たっては参加する研究者の数をほぼ倍増。同グループによる活動の当初から代表を務めるアリゾナ州立大学計算・情報・意思決定工学部プリズム研究所研究員(FORUM8 AZ 代表)の小林佳弘氏を中心に「World 16」として取り組んできました。シンポジウムでは各メンバーにより従来に増して多様な専門を反映した研究成果が発表されています。

 さらに「3D・VRシミュレーションコンテスト」は2002年、3DリアルタイムVR「UC-win/Road」の「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー」受賞を機に創設。以来、今回で8回目を数えます。参加作品は年々高度化・多様化してきており、国内はもとより海外からの応募の裾野も広がっています。

 今回デザインフェスティバルは、[Day1]が「第3回 デザインコンファランス」のうち<設計・解析><建築・BIM><水工>の各セッション、[Day2]が同コンファランスの残る<CAD & VR><技術サポート>の各セッションおよび「第3回 国際VRシンポジウム」、[Day3]が「第8回 3D・VRシミュレーションコンテスト」 ― という構成で実施。とくに、海外から多くの講演者およびユーザの皆様をお迎えすることを考慮し、関連するこれらイベントを集約するとともにメイン会場では日/英/中/韓4ヵ国語の同時通訳を用意。さらに、メイン会場の講演については大阪・名古屋・福岡・北京・上海の各会場とTV会議システムで繋ぎ、参加していただきました。
 そこで同デザインフェスティバルの内容について、本号(83号:Day1およびDay3)・次号(84号:Day2)と2回に分けてご報告します。


[Day1]  ■第3回 デザインコンファランス

 三日間にわたるデザインフェスティバルの初日、当社社長伊藤裕二による主催者挨拶を受けて「第3回 デザインコンファランス」は始まりました。

 そのオープニングを飾ったのは東京大学大学院工学系研究科の前川宏一教授による特別講演「劣化したRC構造の非線形解析と知識構造化の方法」。近年注目されるマルチスケール‐多相物理化学連成解析の最新情報から、劣化構造のモデル化と応答解析、高サイクル疲労荷重と直接積分法による寿命推定、道路橋を対象とした合成床版の応答解析と寿命、について解説しています。

 引き続き、午後1時からはメインストリームの<設計・解析>セッション、<建築・BIM><水工>の各技術セッションに分かれ4時間超にわたって実施しました。

▲東京大学大学院 工学系研究科教授
前川 宏一氏

 □ 設計・解析セッション(Stream-1)

 同セッション最初の発表は「Engineer's Studioと今後の展開」と題し、当社担当者がプレゼンテーション。Engineer's StudioおよびUC-win/FRAME(3D)の各製品概要、新機能、今後の開発計画を紹介。一部開発中の機能などについて手順を示しながら説明しました。

▲FORUM8 Brent Fleming

 続く特別講演は東京都市大学の青戸拡起研究員による「FRAME3D解析事例とEngineer's Studioの課題」。鋼アーチ橋を例にUC-win/FRAME(3D)を用いて確認した、アーチリブの初期応力状態の違い、あるいは床版剛性が動的解析結果に与える影響について説明。それらを踏まえたアドバイス、Engineer's Studioの今後の開発に向けた要望、ユーザとしての評価や留意点に言及しました。
 >>ユーザ特別講演レポート

▲東京都市大学研究員 青戸 拡起 氏

 さらに当社担当者より「FRAME3D解析事例と解析コンペ レポート」と題し、プレゼンテーション。UC-win/FRAME(3D)解析支援サービスの推移、水道施設耐震工法指針・解説の改訂、(独)防災科学技術研究所で取り組まれた大型橋梁耐震実験での解析コンテストに際して行った解析モデルのモデル化手法およびその解析結果などについて紹介しています。

▲FORUM8 甲斐 義隆

 セッション後半は、まず「地盤解析の現状と今後の展開」と題し、群馬大学大学院の鵜飼恵三教授が特別講演。弾塑性FEMによる斜面の安全率評価、地盤の液状化に対してFEMで予測・対策決定する手法、大地震による大規模地すべりの機構の動的弾塑性FEMによる解明について解説。そこでのFEMの有効性を改めて説きました。

▲群馬大学工学部教授 鵜飼 恵三 氏

 これを受けて(株)ブルドジオテクノ代表取締役の花田俊弘氏は「地盤解析ユーザ事例:設計概要と課題」と題して特別講演。崖を含む造成宅地の全体安定問題、ため池改修の地盤変形問題、既設擁壁の耐震診断などでGeoFEASを用いて解析した事例を紹介しています。 >>ユーザ特別講演レポート


▲(株)ブルドジオテクノ 代表取締役 花田 俊弘 氏

 最後に当社担当者が「地盤解析シリーズの最新機能と新土工指針対応"斜面の安定計算"」についてプレゼンテーション。GeoFEASやVGFlowなどの地盤解析シリーズとUC-1設計計算との連携、各種土工指針の改定のポイントとそこでの斜面の安定計算 Ver.8による対応を説明しました。

▲FORUM8 中村 淳


  □ 建築・BIMセッション(Stream-2)

 同セッションは、日経BP社イエイリ建設ITラボの家入龍太氏による特別講演「世界を超えた! "和魂洋才"で進化する日本のBIM」からスタート。Build Live Tokyoを通じ浮かび上がる日本のBIMの位置づけ、BIMの概要と海外の活用例、BIMによるイノベーションなどに触れながら、普及への期待を述べました。

▲日経BP社 イエイリ建設ITラボ 家入 龍太 氏

 続く特別講演は二部から構成。前半は、NEMETSCHEK Allplan社(独)のSven Elbl氏による「Allplan(Architecture)日本語版」。NEMETSCHEK社およびAllplanファミリー製品の概要から、BIMに対する考え方、そこでのAllplanの機能などを説明しました。後半は、韓国Basis社のKim Gibom氏による「Allplanの韓国における建築適用事例」。Allplanを使ったBIM適用プロジェクトを例に、さまざまな機能やメリットについて紹介しています。

▲独Nemetchek社 Sven Elbl 氏

▲韓国Basis社 Kim Gibom氏

 次いで、当社担当者が「Build Live Tokyo 2009 UにおけるBIMソリューション」と題してプレゼンテーション。日本IAI主催コンペ「Build Live Tokyo 2009 U」への当社の取り組み、そこでのAllplanはじめ当社の各種ツールを駆使した解析・シミュレーションによるBIMソリューション、エンジニアリング賞受賞に至るまでを振り返りました。

 セッション後半のトップは、Formation Design Systems社(豪)のJake Hannah氏による特別講演「Multiframe Ver.12、板要素対応」。まずMultiframeソフトの機能や関連製品などを紹介。その上で、Multiframe Ver.12の最大の特徴である板要素解析に焦点を当て、プレートモデルはじめ他の平板なアイテムへの利用例について実演を交え説明しました。

▲豪フォーメーションデザインシステムズ社 Jake Hannah 氏

 その後はいずれも当社担当者よるプレゼンテーションで、まず、「エネルギー解析 Design Builder Ver.2」では、建築シミュレーションを行うDesign Builderと建築エネルギーシミュレーションを行うEnergyPlusを連動し、建築物の温熱環境やCO2排出量などをシミュレーションする手順を解説。Design Builderと当社各種製品との連携がもたらす可能性に触れます。

 「火災・避難解析EXODUSの適用事例と提案」では、避難シミュレーションを行うEXODUSと火災シミュレーションを行うSMARTFIREの各特徴や機能と併せ、集合住宅避難検討、高層ビル火災避難訓練、トンネル車両火災避難検討へのEXODUS適用事例を紹介しました。

 さらに、「UC-win/Roadが提供する解析機能 〜騒音・風解析、照明シミュレーション〜」ではUC-win/Roadの新しいオプション機能である騒音解析機能の特徴、音の伝搬に対する考え方、前処理から入力、解析計算、出力、後処理に至る手順などを説明。そのほか、風解析機能や照明計算シミュレーションの開発状況にも言及しています。


  □ 水工セッション(Stream-3)

 同セッションは「浸水対策技術セミナー 〜浸水対策と流出解析モデルの活用最新事情〜」とのテーマを掲げるxpswmmユーザー会(主催:SWMMユーザー会、後援:NPO法人 水環境創生クラブ、FORUM8、XP Software社)を兼ねて実施されています。

 冒頭、広島大学大学院工学研究科の河原能久教授が開会挨拶を述べた後、「洪水氾濫解析技術の汎用化に向けた課題」と題して特別講演。航空レーザ測量データと非構造格子を組み合わせる解析法、建物−流体間の相互作用および計算格子より小さな現象のモデル化、河川からの氾濫流量の推定法について解説しました。

▲広島大学大学院 工学研究科 教授 河原 能久 氏

 次いで、NPO法人 水環境創生クラブの石川高輝氏による特別講演は「気候変動に対応する今後の流出解析モデルの活用について」。流出解析モデルの普及経緯、気候変動による降雨の変化、効果的な設計手法への転換、1Dおよび1D/2Dモデルによる解析事例、内水ハザードマップ、今後の流出解析モデルの利用方法と求められる機能などを説明しました。

▲NPO法人 水環境創生クラブ 石川 高輝 氏

 続く特別講演は芝浦工業大学工学部の守田優教授による「都市雨水排水における洪水リスクの定量化と洪水リスクマネジメントへの応用」。洪水リスクマネジメントとは何か、浸被害予測モデル、洪水リスクアセスメントの手法、洪水リスクアセスメントの応用などへと展開しています。

▲芝浦工業大学 工学部 教授 守田 優 氏

 セッション後半はまず、3氏がリレー形式で特別講演。初めに日本水工設計(株)の山田龍男氏が「水・物質循環解析ソフトウェア共通プラットフォーム(CommonMP)の動向について」と題し、国土交通省が進めるCommonMP開発の目的と特徴、その開発・運営方針とそれを受けたコンソーシアムの設立、開発メリット、開発状況とロードマップを紹介しました。

▲日本水工設計(株) 東京支店 山田 龍男 氏

 また同じく日本水工設計(株)の川崎重紀氏は「地表面氾濫解析を用いた浸水リスク軽減対策」と題し、浸水常襲地区の住宅地を重点地区とした浸水対策によるリスク軽減策の考え方を示しました。

▲日本水工設計(株) 総括主査 川ア 重紀 氏

 さらに、中日本建設コンサルタント(株)の長縄清貴氏は「XP-SWMMによる河川と地区内水路網の統合解析」と題し、トンネル部を有する二級河川および外水氾濫を受ける低平地水路網でのxpswmmを用いた水理解析を例に、浸水メカニズムの解明と浸水対策の検討について説明しました。

▲中日本建設コンサルタント(株) 水工技術本部第2部第2課・課長 長縄 清貴 氏

 これを受けてXP-Software社(豪)のAshis Dey氏は「開発者講演:都市域における洪水流のモデリング 〜1D/2D統合モデリング解析事例」と題してプレゼンテーション。水文学および水力学の基礎とそこでのxpswmmの機能や可能性について解説した後、1D/2D統合モデリングの解析事例を紹介しています。

▲XP-software Pty Ltd. Principal Water Dr. Ashis Dey 氏

 セッション最後のプレゼンテーションは、当社担当者による「氾濫解析の3次元VR、UC-win/Roadが提供するxpswmm連携機能と水工設計シリーズの開発」。UC-win/Road for xpswmmプラグインの機能と事例、UC-1上下水道・河川設計ソフトウェアの開発予定、水道施設耐震工法指針・同解説の改定概要などについて解説しました。

■ デザインコンファランス・ユーザ特別講演レポート

●特別講演2 『FRAME3D解析事例とEngineer's Studio(R)の課題』 東京都市大学研究員 青戸 拡起 氏


 東京都市大学客員研究員の青戸拡起氏には、初日11/18のStream-1「設計・解析セッション」において「FRAME(3D)解析事例とEngineer's Studio(R)の課題」と題しまして特別講演を頂きました。


 UC-win/FRAME(3D)を用いた解析事例として、鋼アーチ橋に対して「1.初期応力状態の違いが与える影響」「2.床版剛性が動的解析結果に与える影響」のご検討結果を発表頂きました。Engineer's Studio(R)につきましては、従来製品との関係をベースに、今後の方向性についてご提案を頂いています。


 Engineer's Studio(R)は、UC-win/WCOMDと同様の鉄筋コンクリート構成則をサポートしています。UC-win/WCOMDと比較すると、大変位解析にも対応可能であること、そして、新しいインタフェースによる表現力の向上が、大きな利点です。Engineer's Studio(R)は、UC-win/WCOMDのユーザにとっても利点が多い製品と言えます。


 また、今後のEngineer's Studio(R)の課題として、地盤要素を導入することで地盤(FEM)+構造物(FRAME)の連成解析が可能になり、大きく汎用性が向上することを挙げていただきました。その他にEngineer's Studio(R)(面内)の非線形解析対応版の開発など、ユーザのご立場から積極的な開発提案を頂きました。
 まとめとして従来の土木構造物を対象にしたものから建設業界全体と対象を拡げ、業界に革新を起こしたいと力強く語っていらっしゃったのが印象的でした。
 今後も弊社と青戸氏は強力なパートナーシップのもと、新たな製品・サービスを提供していく予定です。



●特別講演4 『地盤解析ユーザ事例:設計概要と課題』 (株)ブルドジオテクノ 代表取締役 花田 俊弘 氏


 (株)ブルドジオテクノ代表取締役花田俊弘氏より「地盤解析ユーザ事例:設計概要と課題」と題して特別講演を頂きました。当社「弾塑性地盤解析(GeoFEAS)2D」を用いた実施例3例から、FEM解析の設計業務への活用方法を紹介して頂くとともに、地盤解析における課題、注意点などを、実務者ならではの経験からご指摘して頂くことができ、大変興味深いご講演でした。


 実施例の1例目は「造成宅地(がけ)の全体安定問題」で、せん断強度低減法による斜面安定解析例でした。FEM解析結果については、極限平衡法でチェックを行い、両者がほぼ一致することを確認しているとのことでした。2例目は「ため池(改修)の地盤変形問題」で、マルチステージ解析によるで低水位時と高水位時について地盤解析変形解析を行うライフラインへの影響検討事例でした。3例目は「既設擁壁の耐震診断」で、15年前に施工した擁壁の背後地にRC4階建マンションを建てた場合の擁壁断面照査を、FEM解析による変形量から荷重を算出し、耐力照査を実施した事例でした。


 解析業務においては、「モデルにより結果が違う」「時間との戦い」「精度アップの悩み」が、常につきまとう問題であり、例えば、解析範囲を変更するだけ結果が異なる場合もあり、その原因究明、適正検証を含め、1つの解析業務で、500から1000ケースの解析が必要になるなど、まさに時間との勝負、経験が重要であることを力説されておられました。


 最後に、GeoFEASについては、計算精度に対する信頼性が高く、群馬大学の著書、論文が多く助かっていること、CPD認定の講習会を行っていることなどについて、お褒めの言葉を頂戴しました。今後も実務者のご意見をプログラムに反映するように努力してまいりたいと考えております。



[Day2]  ■第3回 デザインコンファランス   第3回 国際VRシンポジウム
(Up&Coming 2010年 3月号)
 Day 2は「デザインコンファランス」(後編)と「国際VRシンポジウム」により構成

 「FORUM8 デザインフェスティバル 2009-3Days」 ― 。フォーラムエイトは、それまで大きく二度に分けて実施してきた「デザインコンファランス」と、「国際VRシンポジウム」および「3D・VRシミュレーションコンテスト」を統合。新しいコンセプトのフェスティバルへと発展させ、2009年11月18・19・20日の三日間にわたり、東京コンファレンスセンター 品川で開催いたしました。
 これはこの年、各シリーズの新たなフラッグシップ製品として開発を進めてきた3次元(3D)プレート動的非線形解析「Engineer's Studio」およびラージスケール・マルチVR(バーチャルリアリティ)「VR-Studio」の両製品をそれぞれリリース。2009年が当社にとって記念すべき年となったことを受け、これらの新しいソリューションや当社の最新技術、内外の関連する研究動向を、規模を拡大してご紹介することにしたものです。
 その初めての催しとなった今回デザインフェスティバルの構成は、[Day 1]が「第3回 デザインコンファランス」のうち<設計・解析><建築・BIM><水工>の各セッション、[Day 2]が同コンファランスの残る<CAD & VR><技術サポート>の各セッションおよび「第3回 国際VRシンポジウム」、[Day 3]が「第8回 3D・VRシミュレーションコンテスト」。
 本コーナーでは同デザインフェスティバルの内容をシリーズでご紹介します。前号(83号)でDay 1およびDay 3についてご報告したのに続き、本号(84号)はDay 2に焦点を当てます。

[Day2] ■第3回 デザインコンファランス

 デザインフェスティバル二日目の「第3回 デザインコンファランス」(後編)は、大ホールを二会場に分け、その一つを使って<CAD & VR>セッションが開催されました。また、別の会議室に設置された<技術サポート>セッションでは当社開発担当者および技術者が常駐。UC-1/UC-win製品および当社ソリューションのユーザの皆様からのさまざまなご質問・ご要望に対応いたしました。


  □CAD & VRセッション

 同セッションのオープニングは、一般社団法人IAI日本代表理事の山下純一氏による特別講演「建築の設計・生産に対するBIMのインパクト/仮想ライブ競技設計(Build Live Tokyo 2009)について」。データ共有化による相互運用を目的に3D建物モデルの標準化を進めるIAIの国際的な取り組み、その一環として参加チームがインターネット上でコラボレーションしつつBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を実践する様子をリアルタイムで公開した「Build Live Tokyo 2009」について紹介。その上でBIMが必要となった背景、BIMが建築設計や生産プロセスに及ぼす影響などを説明しました。

▲IAI日本 代表理事 山下純一氏

 続く特別講演は二部から構成。前半は、NEMETSCHEK Allplan社(独)製品管理ディレクターのSven Elbl氏による「Allplan(Engineering)日本語版」。NEMETSCHEK社およびAllplanファミリー製品の概要を紹介した後、BIMに基づく3D補強による生産性向上について事例を交えながら解説しました。これを受けて後半は、韓国Basis社シニアマネジャーのChris Kim氏が「Allplanの韓国における土木適用事例」として、BIMとは何か、BIMソフトとしてのAllplan、そのメリットと適用事例へと話を展開しています。

▲(独)NEMETSCHEK社 Sven Elbl氏

▲韓国Basis社 Chiris Kim氏

 午前最後の特別講演はグレイテック社最高執行責任者のAlexandre Tartas氏による「仏グレイテック社のモデリングから設計への建設統合プロセス」。環境やエネルギーなど21世紀におけるさまざまな課題を視野に建設産業が求められる対応から、それに関連した同社の提供する各種BIMソリューション、Advance Steelを通じた生産性向上の具体的アプローチにも言及します。

▲グレイテック社 Alexandre Tartas氏

 セッション後半のトップは、いずれも当社担当者による二部構成のプレゼンテーション。まず、UC-win/Roadの最新情報として「VR-Studio/UC-win/Road Ver.4」と題し、VR-Studioの主な特徴と基本機能、開発中の機能、UC-win/Road Ver.4の新機能および開発中の機能について説明。次いで、「最新のVRシステム開発事例と提案」として3Dステレオビューのシステム、MR(複合現実感)/AR(拡張現実感)システム、各種ドライブシミュレータ(DS)とその応用システムの構築例を紹介しました。
 また、特別講演「国産3次元CADエンジンの開発」において関西大学総合情報学部の田中成典教授はまず、2次元CADデータの交換標準基盤「SXF」については仕様がフィックスして対応するソフトも提供されてきたとした上で、建設分野では国産の安価な汎用3次元CADが提供されておらず利用が進んでいない現状に着目。そこで自ら中心となって取り組む「建設分野に特化した国産3次元CADエンジン」の開発構想、その中核となる「関西大学ガイザー・プロジェクト」、3次元CADエンジンの全体像、さらにその将来構想について解説しています。

▲関西大学総合情報学部 田中成典教授

 続いて当社担当者が「3D配筋シミュレーションをサポートした"橋脚の設計Ver.7.01"」と題しプレゼンテーション。従来の2次元図面のみによる配筋チェックに対し、3次元空間内の配筋状態を容易に目視確認できる新機能について説明した後、それを最初に搭載する「UC-1橋脚の設計」の新バージョンを使い、デモンストレーションしました。
 休憩を挟んで終盤最初のプレゼンテーションは当社担当者による「測量土木CAD、12d ModelとUC-win/Road連携」。初めに、測量・土木エンジニアリング統合ソフト「12d Model」の基本機能と今後の開発予定について説明。併せて、デモを交えながらその利用法および具体例、UC-win/Roadとの連携やその開発状況などを紹介しました。
 さらに「土木構造物の設計成果チェック支援システムの開発」と題して当社担当者がプレゼンテーション。(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成21年度「イノベーション推進事業(産業技術実用化開発助成事業)」で採択された同システム開発の背景と経緯から、システムの考え方・機能・特徴・構成といった概要、システムの開発工程を概説。さらに、全体システムを構成する個別システム(A・B・C・D)のうち、当面のターゲットとなるシステムA・Bの概要、その後開発を目指すシステムC・Dのイメージにも言及しています。
 同セッション最後の特別講演は、東京都市大学総合研究所の吉川弘道教授による「エンジニア教育/大学教育におけるソフトウェアの役割と活用 ― 構造解析はかくもエキサイティング! ―」。冒頭、構造解析や耐震設計における商用ソフトの格段の進歩を踏まえ、それらの活用により構造エンジニアの更なる成長への期待を説きます。その上で、UC-win/FRAME(3D)によるさまざまな解析事例を示しつつ、それらのポイントを解説。また、自身が大学教育で実践しているRC橋脚の耐震設計に市販ソフト(UC-win/Section)と土木計算の携帯ツール(モバイルUC-1)を併用した試みとして、3段階から成る演習課題の手順を紹介。その効果への実感を述べました。

▲東京都市大学総合研究所 吉川弘道 教授

 


[Day2] 第3回 国際VRシンポジウム 「新時代のVRシミュレーション」

 世界の建築・建設分野で進化するVR利用技術、
   2期目迎え拡充した国際学術Gの注目される最新研究


 「FORUM8 デザインフェスティバル2009-3Days」二日目(2009年11月19日)のもう一つのイベント「第3回 国際VRシンポジウム」は、東京コンファレンスセンター 品川・大ホールの、デザインコンファランスと隣接する会場で並行して開催されました。

 フォーラムエイトは、新戦略VR製品としてラージスケール・マルチVR「VR-Studio」を同年10月に、また従来製品の最新バージョンである「UC-win/Road Ver.4」を12月に、それぞれリリース。今回シンポジウムはまさにその間を繋ぎ、建築および建設を中心に都市開発、交通、エネルギーに関わる広範な分野でVR利用の新たな針路と可能性を示すものとなりました。
 現アリゾナ州立大学計算・情報・意思決定工学部プリズム研究所の小林佳弘研究員(2009年初めよりFORUM8 AZ代表も兼務)からの提案を受け、フォーラムエイトが3D・VRモデリングに関する建築・建設系研究者による国際的な連携の枠組みとして「World 8」を組織したのは2007年。同年11月にそうした活動について広く表明する形で最初の国際VRシンポジウムはスタート。その後、「World 8」のメンバーを中心とする「VRワークショップ at ASU」(2008年8月)、次いで「World 8」の一年間にわたる活動を整理しその成果を発表した「第2回 国際VRシンポジウム」(同年11月)を実施しています。

 2009年には前述の「VR-Studio」リリースが予定されていたことなどもあり、国際学術グループの規模を倍増し、「World 16」として再編。新たなプロジェクトへと引き継がれました。同年5月の「第10回 UC-win/Road協議会 VR-Studio協議会」で「World 16」の概要と一部新メンバーを紹介した後、「サマーワークショップ in Japan」(9月)を経て、その研究成果を発表する今回国際VRシンポジウムへと至っています。


  欧州の交通・エネルギー分野でのVR利用と「World16」最新研究動向

 「第3回 国際VRシンポジウム」は、午前の部として英国SIAS社開発ディレクターのピート・サイクス氏、英国ティーズサイド大学理工学部建設イノベーション研究センター長のナシュワン・ダーウッド教授がそれぞれ特別講演。続いて午後からは、「World 16」の各メンバーによる研究発表、FORUM8ヨーロッパの担当者によるプレゼンテーション、最後に「World 16」メンバーに対するアカデミー奨励賞発表、という構成で実施されました。


  □特別講演 1

 シンポジウム最初の特別講演は、SIAS社(本社:英スコットランド・エジンバラ)開発ディレクターのピート・サイクス氏による「交通マイクロシミュレーションの適用と事例」。交通計画や都市問題に関わるコンサルタント業務、およびマイクロシミュレーション・ソフト(S-Paramics Microsimulation)の開発・販売・サポートを行っている観点から、従来手法とマイクロシミュレーションとの差異を中心に交通計画用ソフトやツールの革新について解説。次いで、実際にマイクロシミュレーションを用いた複数プロジェクト例を挙げ、それぞれ詳しく紹介。その上で、マイクロシミュレーションによるアニメーションおよびシミュレーションの各機能に焦点を当て、それが現実に即したさまざまな要素を考慮しながら交通評価を行うために不可欠との考え方を説きます。

▲SIAS社 ピート・サイクス氏

 


  □特別講演 2

 英国ティーズサイド大学理工学部建設イノベーション研究センター(CCIR)長のナシュワン・ダーウッド教授は「エネルギー効率の高い建物のためのシミュレーションと最適化」と題して講演。エネルギー効率に優れた建設の実現に向けたシミュレーションおよび最適化技術の具体例として、建物に関わるエネルギー情報のインテリジェントな利用法を探るEU出資のプロジェクト「IntUBE」、およびそこでの自身の取り組みを紹介します。まず、背景となるEUのエネルギー効率化策、それを受けた2020年までのエネルギー消費量20%削減というEUの目標に向けたソリューション開発を目指すIntUBEの概要、全体像へと展開。そこで必要となる ビジネスモデルや関連ツール、これまでの開発成果と今後の取り組みについて説明します。
▲英国ティーズサイド大学 ナシュワン・ダーウッド教授


  ■「World 16」発表

 午後からの「World 16」の発表は、「World 8」発足当初より代表者としてその活動をリードする小林佳弘氏の司会で進められました。
 「World 16」最初の発表は、大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻環境設計情報学領域の福田知弘准教授による「建築とVRとの視点リンクによる都市プレゼンテーション手法の開発」。大阪・中之島の1/300スケールの模型とVRモデルをリンク、模型にレーザポインタで指示し、それをセンサが読み取ってVRに表示するという仕組みを開発。プロトタイプのデモを交え、模型とVRの長所を結び付けるシステムについて紹介しました。
▲大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 福田 知弘 准教授


 台湾の複数研究者によるグループプロジェクト「仮想世界のNEXT-GENE」については、グループを代表して明道大学数位設計学系のシェン・チャン・シー(施勝誠)専任助理教授が発表。台湾で国内外の建築家20人以上が参加し住宅を設計するプロジェクトにおいて、書を模したデザインの家を提案するため、UC-win/Roadを使い構築したVR環境での村落や交通のシミュレーション、建物の表現などを紹介。VRの有効性が認められたとしています。
▲明道大学数位設計学系 シェン・チャン・シー(施勝誠)専任助理教授


カナダのマギル大学建築学科長のマイケル・ジェムトラッド准教授の発表は「ターコット高速道路インターチェンジ(IC)の改修デザインVRモデル」。モントリオールの重要なICの改修に当たり、州・市政府や多様な地域の利害関係者の合意形成を図るプラットフォームの構築にUC-win/Roadを利用。市域・ドライバー・近隣住民の3スケールを設定して必要なあらゆる情報を盛り込み可視化した成果のアニメーションを紹介、次の展開にも触れます。
▲マギル大学建築学科長 マイケル・ジェムトラッド准教授


 米国の複数研究者によるグループプロジェクト「米国オーランド高速道路の擬似騒音解析と形態合成」については、ジョージア工科大学建築学部のマテゥー・スウォーツ研究員が代表して発表。これはオーランド中心街にあるI-4(州際道路4号線)の橋梁地区を対象とする再開発に焦点を当てた研究プロジェクト。学生とともに収集した現場のさまざまな情報を基に3Dモデルを作成してUC-win/Roadにインポートし、各種交通シミュレーションを行ったプロセスやその成果を通じた騒音の可視化などの取り組みについて解説しました。
▲ジョージア工科大学建築学部 マテゥー・スウォーツ研究員


 やはりグループプロジェクトの「18世紀におけるUAEでの歴史的町並み再現VR」については、初めにUAEのザーイド大学ドバイ校総合科学部造形学科のロナルド・ホーカー准教授がラス・アル・ハイマをはじめとするUAE北東部の歴史的地域に関する各種情報をUC-win/Roadにより3Dモデル化し、さらに多様な研究に繋げている取り組みを紹介。これを受けて、米国のウィンストン・セーラム州立大学美術学科のトーマス・タッカー・アシスタントプロフェッサーはそこでのモデル作成のプロセスを技術面から解説。さらに実際の作業を担当した学生がビデオ出演し、より詳細なテクニックについて説明しています。
▲ザーイド大学ドバイ校総合科学部造形学科
ロナルド・ホーカー准教授
▲ウィンストン・セーラム州立大学美術学科
トーマス・タッカー・アシスタントプロフェッサー


 ハーバード大学大学院からはまず、デザインスクール博士課程の楢原太郎氏が「インタラクティブなデバイスとVRの連動システム構築」と題し、人間行動モデルの可視化などこれまでの取り組みを振り返る中で、フィギュアのモーションに実際の人間からキャプチャした動作を導入し、よりリアリスティックなフィギュアをUC-win/Road上で再現したプロジェクトに言及。今回はさらにそれを当社とのプラグインの共同開発などを通じ、リアルタイムにシミュレーションとUC-win/Roadを繋ぎ、リアルタイムなインタラクションを可能にした仕組みについて解説。そのもたらす新たな可能性への期待を述べます。
▲ハーバード大学大学院 デザインスクール博士課程 楢原太郎氏


 次いで同大学院デザインスクールのコスタス・タージディス准教授は、ランダムサーチを繰り返す中で最終的に解を求めようというデザインのアプローチを説きます。その間に各種のソリューションをUC-win/Roadに適用し、可能性を探りながら評価を行い、ベストなものを選んでいく。最適化に当たっては問題を階層化して並列処理し、UC-win/Roadで表示していく、といった手順を単純化した形状や家、道路ネットワークを例に解説しました。
▲ハーバード大学大学院デザインスクール コスタス・タージディス准教授


 休憩を挟んで最初の発表は、イタリアのピサ大学土木工学科のパウロ・フィアマ・アシスタントプロフェッサーによる「イタリア・ピサの再計画のVR化」。ピサの斜塔近郊の歴史的な街並みを含むエリアの再構築計画に向け、当該エリアの3Dモデルを作成。さらにそれらを基にUC-win/Roadを使って再計画がもたらす景観および市街の交通流をシミュレーション。その成果への評価とともに、今後更なる活用を進めていく考えを述べます。
▲ピサ大学土木工学科 パウロ・フィアマ・アシスタントプロフェッサー


 バーレーン大学工学部およびエジプトのサウスバレー大学ルクソール校美術学部のワーイル・アブデルハミード・アシスタントプロフェッサーは複数研究者とのグループプロジェクト「英国一般住宅での断熱材と断熱効果のVR化」について代表して発表。英国の歴史的価値のある建物が多数エネルギー効率向上のための改築を迫られる中で、さまざまな制約に対してUC-win/RoadによるVR化や建設のマイクロシミュレーションを通じ、科学的・全体的アプローチを試みた取り組みを紹介しています。
▲バーレーン大学工学部 ワーイル・アブデルハミード助教授


 チリ・カトリック大学建築・設計・都市研究学部のクラウディオ・ラバルカ・モントーヤ准教授は「都市モデリングとVRウォークスルー」と題し、テレビの天気番組用に現在取り組んでいるプロジェクトを紹介。これは一種の広告で、観光客に人気のある全国の都市を3Dモデルで表現し、リアルタイムで提供しようというもの。一連の作業工程やプログラムの構成についてデモを交えて具体的に説明。UC-win/Roadはベースモデルの作成などに利用しているほか、継続的に更なる活用の可能性を探っていきたいとしています。
▲チリ・カトリック大学建築・設計・都市研究学部 クラウディオ・ラバルカ・モントーヤ准教授


 カリフォルニア大学サンタバーバラ校メディア・アート技術研究大学院プログラムのマーコス・ノヴァック教授の発表は「シティズ・オブ・ブリッジズ」。まず、UC-win/Roadについて学び始めたばかりとしつつも、その多様な機能の可能性に期待を示します。そのような例として、独自に交通パターンを作成した試みなどを示し、UC-win/Roadをデザインツールとして使うアプローチを提案します。
▲カリフォルニア大学サンタバーバラ校メディア・アート技術研究大学院 マーコス・ノヴァック教授


 「World 16」発表の最後は、代表の小林佳弘氏がまず、「World 16」プロジェクトの構想や一年間にわたった活動を振り返り、実質的に二期目となる今回プロジェクトでは着実に質の高い研究成果に繋がってきたとの見方を述べます。また、その中から浮かび上がった課題を受け、プロジェクトの新たな展開方向にも言及します。引き続き自身の研究については「VRモデリングのデータ交換ツール開発」と題し、今回開発された3DSMax用プラグインの機能や仕組み、その操作手順や利用例を解説しました。
▲「World 16」代表 小林佳弘氏


 その後、今回シンポジウムのクロージングとなるプレゼンテーションとして、FORUM8ヨーロッパGMのブレンダン・ハファーティが3D・VRのマーケティングについて講演。今後の市場展開やそこでのポイントなどに対する見方を述べました。
 すべての講演を終えたところで、「World 16」の研究成果に対するアカデミー奨励賞が福田知弘氏、マイケル・ジェムトラッド氏、マテゥー・スウォーツ氏(グループプロジェクト)、楢原太郎氏の皆さんに贈られました。

 さらに、シンポジウム終了後は、「数値シミュレーションで考える構造解析」の出版記念パーティを兼ね、交流の場としてネットワーキング・パーティを開催、多くの皆様にご参加いただきました。有意義な機会となりましたことを重ねてお礼申し上げます。


[Day3]  ■第8回 3D・VRシミュレーションコンテスト   The 8th 3D VR Simulation Contest
(Up&Coming 2010年 1月号)
 進むVR活用の多様化・高度化
 フォーラムエイトは「FORUM8 デザインフェスティバル 2009-3Dyas」最終日の2009年11月20日、第8回「3D・VRシミュレーションコンテスト」を東京コンファレンスセンター・品川の大ホールで開催いたしました。
 UC-win/Roadの「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー」受賞(2002年)を機に創設した本コンテストは、回を重ねるごとにUC-win/Roadの活用可能性の奥深さを実感させてくれます。今回も多彩な応用シーンを通じ、高度な利用技術やユニークな発想の競い合いが繰り広げられました。
 とくに今回は、新戦略VR製品「VR-Studio」(10月26日)および3DリアルタイムVRの最新版「UC-win/Road Ver.4」(12月9日)のリリースに挟まれての開催となり、各製品の最新情報も紹介。次回以降はこれら製品によるさらに進化したステージでの展開も期待されます。



▲会場・東京コンファレンスセンター・品川 2009年 11月 20日

 本コンテストに当たっては前回に引き続き、傘木宏夫氏(NPO法人地域づくり工房)・関文夫氏(大成建設株式会社)・喜多河信介氏(八千代エンジニヤリング株式会社)の3氏に選考委員をお願いしました。本選に先立ち、11月6日に前述の委員3氏による選考会を実施。多数の応募作品の中から上位11作品(国内から5作品、海外から6作品)がノミネートされました。
 コンテスト当日は、ノミネート作品の発表者がそれぞれ15分のプレゼンテーションを行い、それに基づくコンテスト参加者および選考委員の投票により各賞受賞作品が決定されました。最終選考結果の発表に際し、選考委員を代表して関氏が講評。全体的にUC-win/Roadの使い方が高度化・多様化してきているとした上で、とくに利用者の視点や道路の存在が社会に与える影響などへのアプローチに注目します。
 第8回「3D・VRシミュレーションコンテスト」の各賞受賞者および作品は次の通りです。

●受賞作品

vr.forum8.jp (UC-win/Roadサイト) 及び UC-win/Road ビデオ・ギャラリー にて、
受賞作品の動画ムービーをご覧いただけます。
GRAND PRIX  グランプリ
「首都高速道路 大橋JCT 走行支援策 VRデータ」
 首都高速道路 株式会社
AVI-DivX AVI形式[118,537KB 2:00] YouTube
 建設中の中央環状新宿線および同品川線と高速3号渋谷線を接続する大橋ジャンクション(JCT)の走行支援策と交通安全対策の有効性を確認するため、ドライビングシミュレータ(UC-win/Roadドライブ・シミュレータ)による実験を行っています。


New! 大橋ジャンクションのコンテスト・グランプリ作品との実写比較ムービー YouTube
大橋ジャンクション(首都高速道路、2010年 3月 28日開通)の実写ムービーと、第8回 3D・VRシミュレーションコンテスト・グランプリ作品の比較ムービー ('10.04.21掲載)
(※コンテスト・グランプリ作品は、大橋ジャンクション完成前に製作されたムービーです。)

▲大橋JCT走行支援策VRデータ ▲限られた用地に4枝交差
▲高低差70mに2回転のループ ▲屋上は緑化公園を予定
▲ドライブシミュレータによる走行支援策検討
▲世界で2番目の長大トンネルとして計画
▲新宿線-品川線のトンネルもモデリング
▲表示装置の位置最適化検討
▲避難経路説明でも活用 ▲避難表示標識の最適化検討
EXCELLENCE AWARD  優秀賞
「韓国南海高速道路設計変更VRシミュレーション」
 韓国道路公社(韓国)
AVI-DivX AVI形式[91,390KB 1:30] YouTube
 施工中の韓国南海高速道路において住民との合意形成のため、UC-win/Roadを利用。当初の設計内容が途中変更され、住民から反対の声が上がったのに対し、高速道路が住民に及ぼす影響についてさまざまにシミュレーション。住民向け説明や事業広報、関係機関の協議資料などに有効活用されています。

▲デドンJCT ▲LRT計画による変更
▲南海高速道路 ネンジョン-プサン区間
▲トンネル避難連絡坑
▲交通渋滞の緩和 ▲10m以上にも及ぶ遮音壁
▲貨物物流基地と下水処理場を結ぶ河川 ▲住民説明会設計協議等で効果的に使用された
IDEA AWARD  アイデア賞
「鉄道桁架け替え工事シミュレーション」
 株式会社 ノダエンジニアリング
AVI-DivX AVI形式[50,069KB 1:30] YouTube
 鉄道の増強に伴い単線区間を複線化するための、高架橋の架け替え工事の手順を表現。鉄道桁の場合、最終電車と始発電車の間の夜間に工事を終えなくてはならず、下部の道路に対しても工事の影響を最小化すべく配慮が求められる、といったニーズを反映。スピーディかつ経済的となる工法を計画し、その施工シミュレーションを行っています。

▲鉄道桁架け替え工事シミュレーション ▲撤去桁つり上げ旋回
▲仮置きヤードをはじめ周辺環境をモデル化
▲撤去桁横取り ▲最終電車から始発までのスピーディーな施工
ESSENCE AWARD  エッセンス賞
「京都市街地交通シミュレーション」
 京都大学大学院情報学研究科
AVI-DivX AVI形式[85,321KB 1:30] YouTube
 人間の運転行動を再現する計算モデル構築のための運転データ収集を目的に、京都市街地の走行環境をUC-win/Roadドライブ・シミュレータ上に構築。その際、現実的な運転データ獲得のため、京都市街地を走行する感覚を与え得る品質の環境構築を意図。同環境を用いて大量のデータを収集する被験者実験を計画中です。

▲京都市街地交通シミュレーション ▲四条河原町付近の交通状態も再現
▲人間の運転行動モデル構築のためのデータ収集を目標
▲京都駅より京都大学付近までルートと周辺環境をモデリング
▲京都らしい周辺環境もモデリング
OVERSEAS AWARD  海外部門賞
「US 41プロジェクトロータリーデザインにおけるVRデータ」
 Ourston Roundabout Engineering, Inc.(USA)
AVI-DivX AVI形式[87,210KB 1:30] YouTube
 米国ウィスコンシン州運輸局(WisDOT)は、国道41号線の改築・拡張を計画中。そこで、WisDOTが自らラウンドアバウトについて詳しく学ぶとともに、一般の人々が運転方法を正しく理解できるよう支援するドライビングシミュレータ用に作成したものです。

▲US41プロジェクト・ロータリーデザインにおける
VR
▲ロータリーにおける
ドライバー教育シミュレーションを開発
▲3連のロータリーインターチェンジの外観
▲ウイウコンシン州運輸省は41号線に44のロータリーを計画
▲ロータリーは効率的な交通流を生む ▲ロータリーの適切な運転方法を
伝えることが目的
HONORABLE JUDGE'S AWARD  審査員特別賞 地域づくり賞
 NPO地域づくり工房  傘木 宏夫 氏
「水郷の里 日野市の用水路を活かした環境共生型区画整理の提案」
 法政大学
AVI-DivX AVI形式[85,244KB 1:30] YouTube
 東京有数の穀倉地帯だった日野市には多摩川や浅川沿いに用水路網が発達。一方、1960年代から首都圏郊外部の急激な人口増加に対応するため、同市は積極的に区画整理事業を実施。現在では区画整理地域が市域の5割に及ぶ中で、用水路も統合され、支線の多くが廃止されてきました。その結果、1995年には国土庁の「水の郷」の選定も設けたとは言え、田園風景も用水路も減少しているのが実情。そこで、日野市の用水はじめ水辺空間を活かした環境共生型区画整理の在り方を提案しています。

▲水郷の里日野市用水路環境共生方区画整理 ▲用水路を利用した小水路発電
▲集合住宅地区戸建て地区農園地区
▲地産地消型の極小兼業農家
HONORABLE JUDGE'S AWARD  審査員特別賞 デザイン賞
 大成建設株式会社 関 文夫 氏
「北京国棉グループ京棉第二工場VRプロジェクト」
 北京水魔方数字科技 有限公司(中国)
AVI-DivX AVI形式[91,535KB 1:30] YouTube
 北京CBD東側に位置し、正門からCCTV、中国国際貿易センター、華茂など北京の象徴的な建物を一望できる国棉グループ。1950年代に旧ソ連のデザイナーが設計し、建設されたもので、室内装飾などは往時を偲ばせる。作品はUC-win/Roadを利用し、国棉第二工場の旧工場および近年移転して文化創意産業園となる新工場の様子をVRで表現しています。

▲北京国棉グループ京棉第二工場
-事務室と国産扇風機
▲京棉第二工場全景
▲正面と周辺建物-時代の流れから国棉文化創意産業園として生まれ変わる
▲VRを用いて旧工場の資料保存 ▲急速に使われた東屋など
VRで自由に閲覧できる
HONORABLE JUDGE'S AWARD  審査員特別賞 芸術賞
 八千代エンジニヤリング株式会社 喜多河 信介 氏
「"阿蘇の玄関にふさわしい道づくり"を目指して」
 西鉄シー・イー・コンサルタント 株式会社
AVI-DivX AVI形式[65,733KB 1:08] YouTube
 阿蘇くじゅう国立公園を通過する国道(シーニック・バイウェイ)の4車線化に関するVRデータ。同路線は急峻地形であるのに加え、鉄道併走により大型構造物が発生するため、走行シミュレーション(内部環境)のみではなく、外部環境へも配慮する必要があった。そこでVRデータを活用し、景観検討および渋滞緩和の提案を行っています。

▲阿蘇の玄関にふさわしい道づくりを目指して ▲シーニックバイウェイの4車線化モデル
▲渋滞緩和と景観保全を目指す
▲外部景観として阿蘇くじゅう国立公園をモデル化
▲紅葉の季節も表現 ▲阿蘇五岳
NOMINATION AWARD  ノミネート賞
「道路モニタリングシステム」
 Temasek Polytechnic(シンガポール)
AVI-DivX AVI形式[121,632KB 1:30] YouTube
道路モニタリングシステムは、リハビリ中のドライバーと評価を支援するための、バーチャル運転シミュレーターとしての機能を果たすシステムです。したがって、シミュレーターは患者の状態を評価するために、患者の健康状態と問題解決能力をテストすることができます。

▲道路モニタリングシステム ▲脳卒中患者の手足の訓練シミュレータ
▲信号制御や障害物の回避 ▲ドライバーのバランスチェック
▲リハビリのシステムとして提案
NOMINATION AWARD  ノミネート賞
「韓国ジュクジョンサービスエリア乗換VRシミュレーション」
 GTSM Inc.(韓国)
AVI-DivX AVI形式[86,059KB 1:30] YouTube
韓国ソウル地方国土管理局で管理するジュクジョンサービスエリアでの乗換計画をUC- win/Roadを利用して、交通シミュレーションを行った。衛星都市へつながる道路の混雑を解決するため、バス専用道路の生成とロータリー生成などの三つの案をRoadを用いて意思決定の支援ツールとして利用した。

▲韓国ジュクジョンサービスエリア乗換VR ▲交差点橋梁設置案
▲第2案高速バス市内バス分離案 ▲第3案ロータリー設置案
▲VRが事業決定に推進力を与えた結果となった
NOMINATION AWARD  ノミネート賞
「歩道工事における歩行者流動VRシミュレーション」
 上海筑紫建築工程設計諮詢 有限公司(中国)
AVI-DivX AVI形式[89,153KB 1:30] YouTube
イギリスにある繁華街(約150m)で改修施工時における、歩行者の行動、流れをVRで表現している。群衆解析ソフトウエアの結果ファイルをデータ連係し、UC-win/Roadで直感的な表現を可能とした。改修後の再現と更なる安全性確保のため、全体的計画と歩行者流動のシミュレーションに活用されたデータである。

▲歩道工事における歩行者流動VRシミュレーション ▲群集解析結果を
マイクロシミュレーションプレイヤに連携
▲歩道工事規制を実施した結果 ▲店舗内群集流も表現



■ 3DVRコンテスト・ブログ紹介レポート

FORUM8デザインフェスティバル最終日の 11月20日、「3D・VRシミュレーションコンテスト」でUC-win/RoadVer.4について、照明機能とヘッドライト機能、小段のラウンディング、気象表現の改善道路などの新機能をサンプルデータによりご説明しました。

マージ機能による走行道路の接続では、交差点部で90度方向を変えて走行可能な機能を紹介いたしました。

 UC-win/Road Ver.4の新機能紹介に続いて、大阪大学大学院准教授 福田知弘氏にお話をしていただきました。福田氏は、弊社広報誌「Up and Coming」誌上で「都市と建築のブログ」として毎号、有意義な連載記事を執筆されています。今回は連載第1回に取り上げられた水都大阪、第2回の台湾シティについて紹介されました。

 まず、近年の大阪の様子と現在の様子、普段気づかない大阪の魅力が感じられる場所についてスライドを用いて説明。また安藤忠雄氏と巨大な大阪の模型を作成した話や、北浜テラスの川床の話など魅力あふれるものでした。続いて、大阪の水辺をイメージしたVRデータとして、船で航行しながら岸部の桜並木を見る様子や天神祭の打ち上げ花火が紹介されました。

 2つ目の台湾シティは福田先生が最も多く訪れている国であり、数々の歴史的建築物を説明され、続けてNEXT Geneプロジェクトへの取り組みについて述べられました。また台湾についても、台北での各種建築物、公園で太極拳を楽しむ人々の様子をリアルに表現したVRデータが紹介されました。

▲vol.1 水都・大阪と3Dデジタルシティ ▲vol.2 台湾シティと3Dデジタルシティ

 連載では、今後も世界各地の都市を取り上げます。日本の都市についても予定しています。ご期待下さい。今回は、世界有数の美港として知られるオーストラリア・シドニーを紹介しています。興味深い話題をお楽しみいただけると思いますので、ぜひお読み下さい。

 【今後の掲載予定】 インド・ニューデリー、長野県・大町、バーレーン・マナーマ



 Design Festival
FORUM8デザインフェスティバル 2010年 11月 17日(水)〜19日(金)  会場:目黒雅叙園(予定)
 ●第9回 3D・VRコンテスト 2010年 11月 19日 開催予定

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