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Users Report   ユーザ紹介/第95回

財団法人 道路交通情報通信 システムセンター(VICSセンター)


VICS-道路交通情報を通じ安全・快適なドライブを支援
UC-win/Road・DSベースの新サービス体験用VICS・DS実現

 User Information
財団法人 道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)
URL ● http://www.vics.or.jp/
所在地 ● 東京都中央区
業務内容 ● 道路交通情報の収集、処理、編集および通信・放送メディアによる提供/VICS に関する調査、研究、開発およびその他関連業務

 道路交通情報をカーナビゲーションに配信してデジタル地図に重畳したり文字や図形で表示する、VICS(VehicleInformation and CommunicationSystem)。世界に先駆け、日本でVICSのサービスが始まったのは1996年に遡ります。ここ数年、VICS受信機の出荷台数が年間約300万台で推移する中、2011年3月には累計で3,000万台を突破。多くのドライバーが当たり前のように同サービスを利用するようになっている現状が窺われます。 

 今回ご紹介するのは、財団法人 道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)です。

 同センターではVICSの普及に向け、より多くの人々にその仕組みやサービスの中身について体験・理解してもらうことを狙いとし、早くから「VICS ドライブ・シミュレーター」(以下、VICS・DS)を構築。より効果的に理解させるべく、更新を重ねてきています。その最新版を開発するに当たっては、フォーラムエイトの3次元リアルタイムVR ソフト「UC-win/Road」をベースとする「UC-win/Road ドライブ・シミュレータ」( 以下、UC-win/Road・DS)が採用されました。

 その成果は、ITS(高度道路交通システム)世界会議オーランド2011(10月16日〜20日、米国フロリダ州)で初公開。その後の調整を経て、VICSセンターは去る12月2日〜11日に東京ビッグサイトで開催された東京モーターショー2011に、6台のVICS・DSを展示。平日の取材にもかかわらず、順番待ちの来場者は列を成しており、多くの体験者がDSを実車の運転さながらに真剣に操作している様子が印象的でした。

▲財団法人 道路交通情報通信システムセンターの皆さん


 16年の歩みと現行組織
 国と民間企業による路車間情報通信システムに関する協同研究を受け、1990年に警察庁、郵政省(現・総務省)、建設省(現・国土交通省)の3省庁により「VICS連絡協議会」が発足。その後、VICS実用化に向けたさまざまな取り組みが進められ、1995年にVICSセンターは設立されています。
 翌1996年、東京・大阪圏で情報提供サービスが開始されたのを皮切りに、対象エリアを順次拡大。2003年には全国展開を完了。
これを反映し、VICS車載機累計出荷台数は2004年に1,000万台超、2007年に2,000万台超、2011年に3,000万台超を達成しています。

 VICSセンターは、理事長(渡辺捷昭 トヨタ自動車株式会社相談役)をはじめ29人の役員、41人の評議員を組織。総務部、企画事業部、通信放送事業部、開発部、サービス運用部、次世代VICS推進室から成る事務局を構成。災害時情報対策プロジェクト・チームを設置しているほか、賛助会員71法人が参加しています(いずれも2011年11月現在)。

 VICSの概要と新サービス
 VICSは、カーナビに渋滞や所要時間、交通障害、交通規制、駐車場などの道路交通情報を表示。こうした機能がドライバーによる、渋滞を避けたルートの選択をはじめ、所要時間の短縮、心理的に余裕のある運転を支援。ひいては、交通の円滑化、安全性の向上、環境保全、経済性の向上といった社会的効果に繋がることが期待されます。しかも、カーナビなどVICS対応受信機の購入料金には視聴料(消費税込み315円)が含まれており、追加利用料は不要。サービス運用部の宮本奈津子さんによると、最近のカーナビは据置型でほぼ100%、ポータブル型で30%がFM-VICSに対応。
ドライバー自身が意識することなく、利用が広がる環境にあると言います。

 VICS情報を使うためのプロセスは、収集、処理・編集、提供、活用-の4つのステップに分けられます。
道路管理者や都道府県警察がそれぞれの目的に沿って集めている交通情報を、財団法人日本道路交通情報センター(JARTIC)を経由してVICS センターに収集。同センターでは、3種類のメディアを通じリアルタイムでカーナビに送信し、3タイプの方法で表示できるよう、それらの情報を処理・編集。

当該情報はその後、全国を網羅してFM多重放送を行う53放送局(各都道府県1局、北海道のみ7局)、全国の道路交通管制センター、あるいはJARTICからの受託により民間事業者に向けて配信されます。

 カーナビ用にVICS情報が提供されるメディアは、電波ビーコン、光ビーコン、およびFM多重放送。そのうち電波ビーコンは、主に高速道路(一部一般道を含む)に道路管理者が設置。ビーコン受信機を搭載した車両は電波ビーコン(2.4GHz帯)直下の受信エリアを通過する際、進行方向の前方最大200km程度の情報を受信可能。光ビーコンは、一般道の主要幹線道路に都道府県警察が設置し、ビーコン受信機搭載車両はその受信エリアを通過する際、進行方向の前方最大30kmおよび後方1km以内の情報を受信できます。これに対し、FM多重放送は各地のNHK・FM放送局の施設を利用。NHKの音声放送に重ねて、隣接県との県境近辺を含む受信中の都道府県の情報を5分ごとに更新して提供します。

 受信されたVICS情報は、カーナビのディスプレイ上に地図表示、簡易図形表示、および文字表示されます。
そのうち、地図表示については3メディア対応であれば自動的に表示。簡易図形表示および文字表示については、ビーコン(電波・光)では受信と同時にポップアップで現れるのに対し、FM多重放送では手動で選択する必要があります。また、FM多重放送では電波が届く広範な情報を提供するため、図形は常に北向きで表示。一方、ビーコンでは自車位置や進行方向に合わせて図形が表示される、といった違いがあります。

 2011年には新たに2つのVICS関連サービスがスタートしました。その一つがITSスポット。これはETCと同じ通信技術を用い、全国の高速道路上を中心に設置されたITSスポット(5.8GHz帯)と対応カーナビを搭載した車両とで高速・大容量の路車間通信を実現。ETCとしての機能に加え、約1,000kmに及ぶ広範囲の情報をカバーし最適ルートを選択できるダイナミックルートガイダンス、従来の電波ビーコンより高度化した安全運転支援機能など、多様なサービスを可能にします。もう一つは、ドライバーの認知や判断の遅れなどに起因する交通事故を防止しようというDSSS(安全運転支援システム)。光ビーコンを介したインフラと車両の協調により、DSSS 対応カーナビを搭載した車両に対し、周辺の危険要因を伝えるもの。去る7月、東京都と神奈川県を対象に運用が始まっています。 

さらに、メディアのデジタル化展開を視野に検討が進められており、それによってもたらされる情報量の増大に伴う新たな可能性が注目されます。

▲VICSのシステムにおける交通情報の流れ
▲第10回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド 優秀賞を受賞した「VICSドライブ・シミュレータ」


 VICS・DS開発の流れ

 冒頭で触れたように、VICSセンターでは早くからVICS・DSの開発・運用に着手。第1世代(2003年〜2004年)、第2世代(2005年〜2006年)、第3世代(2007年〜2010年)と更新を重ねるごとに、DSとしての機能を高度化。各種展示機会での活用を通じ、一定の集客・宣伝効果が認められた反面、リアリティの強化やコンテンツの拡充、運用性の改善といった新たな課題への対応の必要性も浮かび上がってきていました。つまり、それまでのようなカーナビの地図を用い、シナリオやルートが予め定められた受け身の体験ではなく、よりリアルな環境で能動的に体験可能なDSへの転換が求められました。
 実はそのようなソリューションとして、VICS・DSの開発に一貫して協同で取り組む総務部次長の芳崎誠氏やパイオニア販売株式会社開発営業部主事の小勝章弘氏らは、第3世代の開発当時からUCwin/Roadに着目してきたと言います。DSへの高度化するニーズに対応するには従来のアプローチでは制約があり、VRを導入したい。ただ当時、VRは一般的に高額になりがちで、費用対効果の問題もあって一気に移行するには至りませんでした。

 それが2010年秋、次世代VICS・DSのコンセプトについて検討を進める過程で、従来型の手法では前述の新たな課題に対処できないとの考え方からアプローチの刷新を決断。その頃、芳崎誠氏が10月末に韓国で開催されたITS世界会議釜山2010に参加した際、同会議に出展中のフォーラムエイトのブースでUCwin/Road・DSを体験。帰国後、改めて当社担当者から説明を受けました。

 2011年初めからは、両氏に総務部担当部長の福満武美氏や企画事業部およびサービス運用部の担当者らを加え、次世代VICS・DSの開発について検討する定例会議を組織。そこでは、第3世代で構築した機能をどう改善し、第4世代をどういうものにしていくか、について議論。1月中にUC-win/Road・DSの採用が決定して以降は、12月に開催される東京モーターショーに向け、同DSをベースとする具体的な中身の検討が展開されました。

 そうした折、国交省からそれより前の10月に実施されるITS世界会議オーランド2011に当たり、3月サービス開始予定のITSスポットについて第3世代を利用しPRできないか、と打診。第3世代ではそのような機能を付加することが難しかった一方、第4世代では何とか対処できそうとの見通しから、両イベントでの利用を考慮したDSの新たな検討へと移行しました。

 第4世代のシステムづくりに向け具体的に動き始めたのは、5月。ターゲットを家族連れに設定。シミュレータ部分を担当する当社と並行し、映像コンテンツについては別の映像会社に依頼。それらを組み合わせることでどういうことが出来るかを探るため、試行錯誤が続きました。

 9月、第4世代としては9割程度の完成度ながら、英語による解説とともにITSスポットサービスをシミュレートできる、ITS世界会議オーランド2011向け運用版を開発。同会議(10月)で初公開した後、今度は東京モーターショー向けにVICSの基本システム、ITSスポットサービス、DSSSサービスについて体験でき、それぞれ3分半の3種類のプログラムから成る新VICS・DSを完成。東京モーターショーでの運用に繋げています。

 今回の経験を通じ、小勝章弘氏はUCwin/Road・DSの有する柔軟性および演出による相乗効果に注目。
併せて、当初はUC-win/Road・DSベースで果たしてイメージ通りの表現が可能か、多少の不安もあったと明かしつつ、結果的には細やかなニーズに対し当社の柔軟な対応が得られ、完成度の高いDSを実現できたと振り返ります。

 また、福満武美氏はDS とカーナビ画面の連動がリアルに表現されていることを高く評価。

 ユーザー側の視点を反映し、サービス運用部次長兼サービス・サポート・センター長の川口徹氏はハンドルなどハード面を含め、演出効果によるいっそうの向上に期待を示します。

 さらに、芳崎誠氏はDSとしての差別化、ウィンカー機能追加等への要望に言及。来るITS 界会議ウィーン2012、続くITS世界会議東京2013および東京モーターショー2013に向け、そうした要素も視野に次世代VICS・DSの展開を描きます。


ITS 世界会議オーランド2011 VICS出展ブースの模様
▲VICSブースでドライブ・シミュレータを体験する海外来場者

東京モーターショー2011 VICS出展ブースの模様
 
▲VICSの基本システムやITSスポット、DSSSのサービスが体験できる
「VICSドライブ・シミュレータ」の体験コーナーは終日賑いを見せた

(取材/執筆● 池野 隆)


  
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