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Users Report   ユーザ紹介/第94回

長野県 飯山市 建設水道部
まちづくり課/新幹線駅周辺整備課


北陸新幹線「飯山駅」開業へ高まる期待、進むまちづくり
UC-win/Roadでシミュレーション、庁内検討や広報に利用

 User Information
長野県 飯山市 建設水道部(まちづくり課/新幹線駅周辺整備課)
URL● http://www.city.iiyama.nagano.jp/
所在地● 長野県飯山市
業務内容● 都市計画およびまち並整備/北陸新幹線飯山駅の設置に伴う区画整理および各種施設整備

 長野県の最北端に位置し、新潟県と隣接する飯山市は、わが国有数の豪雪地帯として知られます。そこで今最もホットな話題の1つが、平成26年(2014年)度末に予定される北陸新幹線・飯山駅の開業です。

 今回ご紹介するのは、長野県飯山市。とくに同市建設水道部において、北陸新幹線の建設プロジェクトに関わる事業を担う「新幹線駅周辺整備課」と、都市計画やまち並整備を推進する「まちづくり課」にフォーカスします。

 同市では、情報通信技術(ICT)に精通する現市長の方針を反映し、先進の技術やシステムを積極的に採用。そうした一環として、フォーラムエイトの3次元リアルタイムVRソフト「UC-win/Road」の可能性に着目してきました。導入以降は、さまざまなプロジェクトや作業プロセスでその効果的な活用を進めています。

 庁舎内での取材に先駆け、折からの雨にもかかわらず、各課の関係者の皆さんに建設中の新駅を見下ろす丘、駅前のロータリー建設予定地、飯山城跡公園といったまちづくりのポイントとなる現場を案内していただきました。

 上越方面を背に足下を長峰トンネルが貫く丘の上に立つと、眼下の駅舎に向かって真っ直ぐに延びた線路が菜の花大橋で千曲川を越え、やがて緩やかなカーブを描きながら東京方面の高社山トンネルへと吸い込まれていく大パノラマを一望。数年後には実現される自然と都市機能を融合した新しい飯山の姿が、そこに垣間見えた気がしました。

▲ 長野県 飯山市 建設水道部 まちづくり課長/新幹線駅周辺整備課長の松澤孝氏


 市を取り巻く環境と北陸新幹線の位置づけ ICT導入に積極的な風土

 「平成26年度末に長野・金沢間の開業が予定される北陸新幹線で、長野の次の駅として飯山駅が設置される新たな時代(の到来)を機に、まちづくり(の在り方)を大きく変えていこうと取り組んでいるところです」

 飯山市は人口約24,000人。県内で最も人口の少ない市にランクされています。加えて近年は過疎化や高齢化が進み、それらの問題への対応が求められてきました。

 一方、同市は斑尾高原やなべくら高原をはじめ豊かな自然を活かした四季折々のレジャー環境、戸狩温泉、飯山城址を中心に往時の名残を留める数々の神社・仏閣、飯山仏壇や内山紙といった伝統工芸、2010年に開館した高橋まゆみ人形館など、優れた観光資源に恵まれています。

 そのような中、飯山を経由して長野と金沢を結び、延いては東京・大阪間を連絡する北陸新幹線の整備が飯山市の将来発展にとって極めて大きな要素になる、と同市建設水道部まちづくり課長/新幹線駅周辺整備課長の松澤孝氏は期待を示します。

 今回取材した飯山市建設水道部は、道路河川課、まちづくり課、新幹線駅周辺整備課、上下水道課、いいやま住んでみません課の、5課により構成されています。

 そのうち新幹線駅周辺整備課は、北陸新幹線・飯山駅の開業およびそこから300m離れた在来線の現・飯山駅の移転統合に合わせた、周辺都市施設の整備(全体整備区域20ha)と区画整理事業(対象区域7.7ha)に関係する工事が主な仕事です。

 これに対し、まちづくり課は都市計画などを担当する計画係と、景観にウェートを置いたまち並や公園の整備・管理を行うまち並整備係から成ります。計画係は北陸新幹線の整備主体である(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)と調整しながら、新駅の駅舎および都市施設の設計業務、それらに関する市民への広報を実施。まち並整備係は新幹線開業までにまちなか観光の充実を図るべく、市民会館の建て替え、飯山城跡公園の整備、中心市街地のまちづくりを推進しています。

 早くからICTを受け入れやすい環境が醸成されてきたことは、同市の特徴の1つ。加えて、現市長の足立正則氏が市の職員だった当時、初代の情報政策室長を務めるなど、ICTに造詣が深いことがその独特な風土をさらに色濃いものにしてきました。

 具体的には、1999年のネットワーク基盤整備により、職員ひとり1台のパソコン(PC)が配備されたのと併せ、庁内グループウェアを導入。次いで、GIS(地理情報システム)も近隣地域に先駆けて採り入れてきました。また、2009年には文部科学省の補助金を受け、市内の全学校を対象とする学校ICT環境整備事業に着手。教師ひとり1台のPCを配備するとともに学校間をネットワークで連携。サーバに入れた教材を有効活用し、子供たちの情報教育を強化しようとの取り組みが進行中です。

▲ 平成26年度末 開業予定の北陸新幹線ルート図


 VRの可能性に着目 UC-win/Roadの利用へ

 同市がUC-win/Roadの導入に至ったのも、現市長が副市長だった2009年、東京へ出張した折にフォーラムエイトが出展していた展示会でたまたまデモを目にしたことがきっかけでした。
 実はそれより前、まちづくり課まち並整備係主査の渡邊毅氏が2003年頃に北陸新幹線・飯山駅周辺のデザインやそれに付随する各種まちづくりの検討を担当。それまでの当該プロセスでは模型が用いられてきた中で、他社が作成したVR(バーチャルリアリティ)利用の先進事例に触れ、一旦は担当職員の間で3次元VRを使っていきたいとの機運が盛り上がっていました。ところが、導入を検討したVRは業者にすべて作り込んでもらう必要があり、デザイン過程で修正を重ねる使用形態やコスト面がネックとなり、断念せざるを得なかった経緯がありました。

 それが、6年のブランクを経てUC-win/Roadが着目された最大のポイントは、導入費用がさほどかからないこと。その上、モデルがある程度セットされていて担当者自らVRの作成や変更が容易に可能など、コストパフォーマンスのよさが評価されたと言います。

 2009年の夏、フォーラムエイトの担当者が市役所に赴き行ったプレゼンには、市の建設系・技術系・情報系の職員10数人が参加。他の駅の将来像を再現したモデルを見て、UC-win/Roadの活用可能性が確信されました。

 さらに11月頃、渡邊毅氏と新幹線駅周辺整備課主査の堀川雅基氏が、フォーラムエイトで催された1泊2日の研修に参加。12月上旬にはUC-win/Roadの購入を決定しています。

 UC-win/Road導入後、最初の利用シーンは、市内の高校再編に伴う新校舎建設プロジェクトに対し、建設地をスタディするためのツール作成でした。当初は飯山城跡公園にほど近い場所が建設地として挙げられました。そこで歴史的シンボルである城郭と新校舎がどのような位置関係にあり、完成イメージがどのようになるのかをVRでシミュレーションし、関係者の情報共有を図りました。

 最終的には飯山城跡としての文化財保護と、周辺地域の趣きを良好に保つことが最重要視され、校舎建設は別の場所に改められました。

 その際は当時、教育委員会に所属していた渡邊毅氏が研修で習得した技能を基にフォーラムエイトの助言を受けながら、ほぼ1ヵ月間でVRを作成。建物の見え方やボリュームなどの検討に資する成果を実現しています。

北陸新幹線 建設プロジェクトのVRによるシミュレーション
▲ 飯山駅および前の現況(建設中)(左)とVRデータ(右)
 
▲ 飯山駅全景の現況(建設中)(左)とVRデータ(右)  
   
▲ 駅前ロータリーの完成イメージ    ▲ 飯山駅プラットフォームからの眺望   ▲ 飯山駅構内からの景観


 新駅舎周辺からまちづくりのデザインへ

 2010年度、UC-win/Roadの利用は北陸新幹線・飯山駅開業に関するプロジェクトへと展開。堀川雅基氏とまちづくり課計画係主査の丸山英士氏はまず、駅舎デザインの決定プロセスに向け、既に配置が決まっていた区画整理対象エリアの道路や住宅のモデル作成に取り組みました。

 北陸新幹線(長野・金沢間)の線路延長は約228km。そのうち、長野・上越間の工事実施計画の変更が1998年3月に認可され、同年8月に飯山トンネルの工事に着手。2002年度には第5千曲川橋梁(菜の花大橋)、2008年度には飯山駅高架橋がそれぞれ着工されています。

 「当時(2010年度)はまだ駅周辺の整備があまり進んでおらず、駅舎や駅前広場などがどのようなイメージになっていくのか、いろいろなパターンを試しつつ示すにはVRが最も効果的ではと考えました」。そこで、区画整理エリア(7.7ha)内の道路や広場、新幹線などに関する基礎データを市側が用意。それらを基にフォーラムエイトが半年ほどかけて、庁内でのデザイン検討のベースとなるモデルを作成した、と丸山英士氏は振り返ります。

 翌2011年に入り、駅舎などのデザインが固まってきたのを受け、エリアも全体整備区域(20ha)に広げてモデルに反映することとし、3月に作業を開始。市民がその時点の計画に沿った駅舎や都市施設などを擬似体験できる3次元のシミュレーションを作成。その成果は7月9日に開かれた「いいやままちづくりフォーラム2011」で公開された後、7月下旬に市のWebサイトにもアップされています。

 今後は設計変更の反映に加え、外構を含め、つくり込むことでより実際に近い形でモデル化。今年度内にも公開していきたいとしています。

 松澤孝氏らは一様に、庁内関係者の情報共有と併せ、図面に不慣れな一般の人々にもデザインの意図を理解してもらう上で、UC-win/Roadが従来の模型に代わる非常に有効なツールになると評価。丸山英士氏はとくに、完成後の駅舎のプラットフォームからの眺望をデザイン段階で体感できるメリットを述べます。

 新駅舎に関係する工事は2013年度に完成した後、1シーズンにわたり新幹線(長野・金沢間)の試験運転を実施。また、東口・西口・南口の各広場や立体・平面駐車場などの都市施設は2014年度までにそれぞれ完成する予定で、それらとの連続性を保ちつつ区画整理を推進。JR飯山線の現・飯山駅は新駅舎内にその機能が移設され次第役目を終えることになります。

 一方、この北陸新幹線・飯山駅の開業と連携し、まちづくりの面からもさまざまなアプローチが進行しています。渡邊毅氏はその具体例として、既存の個々の建物や植栽の修景によりまち並を整備しようという回遊性のあるまちづくり事業、市民会館の建て替えによる多機能な複合施設の建設事業、飯山城跡公園の整備事業を列挙。いずれも景観の調和や住民との合意形成がカギとなることから、UC-win/Roadによるシミュレーションやそのプレゼンテーションでの効果的な利用に期待を示します。

 「今回(北陸新幹線・飯山駅の開業)のような大きなプロジェクトばかりでなく、現在進められている都市計画における景観検討などにも有効な手段だと思います」

 松澤孝氏は一連の利用を通じて実感したUC-win/Roadの多様な可能性について触れ、今後は避難経路の探索などまちづくりに関係したより高度な検討、福祉あるいは教育といった新たな分野への活用を探っていきたいとの考えを述べます。

▲ 「いいやままちづくりフォーラム2011」では、
VRを用いて計画の説明を行った
   ▲ 現在「飯山城跡公園整備」の検討委員会においても、
城郭の見せ方や既存樹木の間伐シミュレーションなど
ワークショップのツールとしてVRが活用されている  

(取材/執筆● 池野 隆)


     
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