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ユーザ紹介第86回
韓国ユーザ特集(1)
韓国交通研究院(KOTI)
道路交通安全部 先端交通運営研究センター
Center for Advanced Transportation Operation Research,
Dept. of Highway and Traffic Safety, the Korea Transport Institute.
韓国交通研究院(KOTI)のホームページ
http://english.koti.re.kr/

韓国の運輸政策支えるシンクタンクで道路に関する先進かつ多様な課題に焦点
― ITを積極活用する一環としてUC-win/Roadを導入、複数プロジェクトでの実践を経て広がるVR適用

 近年、港湾施設や国際線航空施設、高速道路、高速鉄道など社会資本整備の拡充が急速に進む韓国。そうした成果の一端として、同国のアジアにおけるハブ機能の高まりが注目されています。

 また2008年以降、各国による景気および環境対策を目的としたグリーン・ニューディール政策への取り組みが広がっています。韓国でも2009年1月、雇用創出を前面に掲げた同政策を公表。2012年までの4年間にわたり、グリーン交通ネットワークなどエネルギー効率の優れたインフラの整備および各種環境プロジェクトに対して50兆ウォンを投じ、約96万人の新規雇用を創出しようとの計画が進行中です。

 今回ご紹介するのは、そのような韓国において広く運輸政策に関わる調査研究で主要な役割を果たしている韓国交通研究院(KOTI:The_Korea Transport Institute)。とくに、その中で道路に特化した研究を担う道路交通安全部(Dept. of Highway and Traffic Safety)の「先端交通運営研究センター(Center for Advanced Transportation Operation Research)」に焦点を当てます。

 同センターでは、先端的な道路システムや道路の安全技術など多岐にわたる研究を行っています。その一環として道路安全性評価システムを開発した際、そのアウトプットを可視化して示すことも計画。ただ、可視化については実現が難航したこともあり、一旦はその部分が省略された経緯がありました。

 そのような流れの中で、2008年に韓国で開催されたドライブシミュレータ(DS)に関するコンファランスに出展していた当社製品に触れ、その可能性に着目。翌2009年秋にフォーラムエイトの3DリアルタイムVRソフト「UC-win/Road」導入に至りました。以来、これまでに4プロジェクトでUC-win/Roadを適用したほか、別の複数プロジェクトへもその活用が広がりつつあると言います。

 そこで、KOTI道路交通安全部先端交通運営研究センターにおいてUC-win/Road採用の決定から、その後の複数プロジェクトでの利用に当たり中心的に関わってこられた副研究員(Associate Research Fellow)のイ・ドンミン(Lee Dongmin)博士および助手(Research Assistant)のユ・ジョンホ(You Jungho)氏にお話を伺いました。

■ KOTIの概要と運輸政策の新たな潮流

 KOTIは、韓国政府の公式研究機関の一つ。交通およびロジスティックスに関する総合的な研究を実施しています。そこでは、国の運輸政策に対する助言や選択肢の提供とともに、専門的な研究や技術的イノベーションを通じた最適な運輸システムの創出をそのミッションに掲げます。

 併せて、その具体化に向け、世界最高レベルの研究能力と技術を備えることで、人と環境と交通が調和する豊かな未来に繋げたいとのビジョンを描きます。

 KOTIの活動の始まりは、韓国民法32条に従い交通開発研究を行う財団として設立された1985年11月に遡ります。その後、1987年8月には都市交通促進法24条に基づき、政府出資の研究所としてスタート。1999年1月、韓国経済社会研究協議会に正式参加し、同年3月には現在のキョンギド(Gyeonggi-do)コヤンシ(Goyang-si)の建設交通リサーチ・コンプレックス(The Construction & Transport Research Complex)に拠点を構えています。

 これまで20年以上にわたってKOTIが取り組んできた成果は、韓国における交通の安全性や利便性、効率性の向上に大きく寄与してきました。

 一方で今日、低炭素化への対応が求められる世界的な潮流の中で、KOTIとしてもこうした課題を視野に研究のイノベーションに注力。新たな交通パラダイムに向けた展開を図りつつあります。

 KOTIでは現在、約80名に上る博士を含め、約250名のスタッフを配置。国家運輸戦略、ロジスティックス、都市圏および都市交通、幹線道路、鉄道、航空輸送、先進交通技術、韓国輸送データベース(KTDB:Korea Transport Database)、交通インフラ投資 ― という大きく9つのカテゴリに分かれ、創造的かつ先導的な研究が進められています。

 また、韓国の将来における運輸の最適なソリューションを目指すに当たり、国や地方政府はもちろん、日本を含む内外の主要な研究機関とも連携。会議やシンポジウムなどのイベント、プロジェクトあるいはプログラムを通じた情報交換や人的交流に力を入れています。その研究成果は、各種出版物によっても広く発信されています。

 年間にKOTI全体で200件前後の研究プロジェクトを実施。近年はとくに、CO2削減などエコ関連のテーマが目立つ傾向にあると言います。


■ 先端交通運営研究センター、最近の研究課題

 KOTIにおいて道路に特化し、先進の交通システムや安全技術などの研究に当たっている道路交通安全部の先端交通運営研究センター。イ・ドンミン博士は同センターでの特徴的なアプローチとして、情報通信技術(ICT)と交通をリンクした研究課題の設定、さらにその研究プロセスを通じた積極的なICTの有効活用を位置づけます。

 そのような例が、ユビキタスな交通環境の研究開発や、それとも関連して韓国で取り組まれている次世代高速道路構想「スマートハイウェイ」です。一方では最近、高度道路交通システム(ITS)にスマートフォンをどう接続して活用するかといった側面にも関心が高まっています。
 昨年同氏らは、もう一つのキーワード、エコ的な道路の研究もいくつか手掛けています。そうした中から、新しい概念の道路として「2+1道路」の研究、道路の新設ニーズに対して最も適切な道路のあり方は何かを検討する妥当性の研究、道路安全性評価システムの開発などが行われました。


■ UC-win/Road導入の経緯と多様な具体例

 冒頭で触れたように、イ・ドンミン博士らがUC-win/Roadを活用するようになったのは、この道路安全性評価システムの開発がきっかけでした。

 これは、道路を設計する際にその安全性を確認、危険と判断された場合にはどうすれば安全になるかという解を導き出すもの。2006年秋、開発プロジェクトに着手。道路の構造規格や事故履歴などから事故の可能性を予測するアルゴリズムを作成し、システム化。当初はその計算結果を誰もが理解しやすいように可視化することも計画されていましたが、途中、プロジェクトの期間が短縮されたのを受け、その部分は見送られることになりました。

 ところが、2008年に韓国で開催されたDSの国際コンファランスに参加した際、出展されていた当社製品を初めて体験し、その可能性を実感。その後の当社担当者によるサポートもあり、2009年冬にUC-win/Roadを導入。それにより、同システムのアウトプットを可視化する機能の実現へと繋がっています。

 そこでまず、日本の高規格道路に相当する「高速化道路」の建設をめぐり、地元説明会でその妥当性をどう示すかが苦慮されていた「チュンチョン(Chuncheon)内陸圏交通体系改善研究」プロジェクトに適用。それまでの手法と比べ、高い説明効果が得られたと振り返ります。

 また「2+1道路」は、片側1車線ずつ、両側2車線を基本としつつ、随所で追い越しのための1車線を増設する仕組み。日本の1.5車線的道路と同様、出来るだけ無駄のない効率的な道路整備を目指そうとの発想に立ちます。全く新しい試みであったことから、「2+1道路設計基準開発」プロジェクトの広報資料用に、その走行イメージをVRで表現しています。

 そのほか、高速道路の交差点改良事業の一環としてソレ(Sorae)ICの設置検討に当たり、住民説明会用資料としてVRを作成。続いて、マサンシ(Masan-si)の道路プロジェクト向けのVRデータの作成も進行中です。


■ 次なる活用に向けて

 「従来は非常に時間を要した道路(プロジェクト)のビジュアル化作業が大幅に短縮され、しかも容易に(VRを)作成できるという点で優れていると思っています」

 UC-win/Roadの導入以来、既に前述の4プロジェクトで実績を重ね、その有効性への認識が関係者の間にも次第に浸透。そこでイ・ドンミン博士は今後、国内では馴染みの薄いラウンドアバウトの広報、および進行中の「トンヨン〜ゴジェ(Tongyeong - Geoje)圏交通体系改善研究」プロジェクトの説明向けにそれぞれ適用する予定と語ります。

 その一方でUC-win/Roadに対し、韓国の仕様のいっそうの反映と、交通流の設定強化への期待を述べます。

 また、同氏らは低炭素化を目的に新しい道路の考え方を構築すべく、昨年までに基礎的な研究を終え、その具体化を図っていく計画です。そうした取り組みも含め、道路政策に関わる研究分野にもUC-win/Roadを有効活用していきたい、と新たな展開に言及します。

 お忙しい中、取材にご対応ご協力いただいた関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。


▲道路交通安全部 先端交通運営研究センター
副研究員 イ・ドンミン(Ph.D Lee Dongmin)博士

▲道路交通安全部
先端交通運営研究センターの皆さん

 ▲研究室内部

▲韓国交通研究院(KOTI)正門

▲韓国交通研究院(KOTI)受付(広報板)

▲「2+1道路」のRoadデータ

▲Chuncheon内陸高速化道路の道路付属物

▲Chuncheon内陸高速化道路の道路付属物

▲Chuncheon内陸高速化道路の道路付属物

共催セミナー

韓国主要交通道路研究機関、大学と共催で交通工学分野におけるVR技術活用セミナーを開催いたします。
交通工学、道路設計、歩行環境、交通管理、運転者形態などの各専門分野の研究者の方々からの発表と提案、フォーラムエイトからは、VR技術の最新情報とUC-win/Roadの講演を行います。
  • 開催日時 : 2010年 7月 12日(月) 14:00〜18:00
  • 開催地   : 韓国 KICT(建設技術研究院) 会議室
  • 主催    : KOTI(韓国交通研究院)、KICT(建設技術研究院)、韓国道路学会、FORUM8


  
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