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上下左右前後の変位と回転を再現する6自由度のモーションプレート付きドライビングシミュレーター |
「ARTCには以前から、ハンドルやアクセルを統合した簡易的なバーチャルリアリティー(VR)環境を構築していましたが、路面の摩擦や凹凸、加減速時の車両挙動を忠実に再現することはできませんでした。フォーラムエイトの6自由度モーションプレート付きドライビングシミュレーターの導入を検討することになりました」と、ARTC
メカトロニクス・システム統合技術部門のベクター・イェイ(葉智榮)部長は説明します。
ドライビングシミュレーターを導入する前は、カメラで撮影したような静かな映像だったので、道路の変化や振動、加減速時の実車の揺れなどを再現できませんでした。しかし、そのようなテスト結果を実際の車に載せた後は、予期しない問題が発生しやすくなります。
また前方の障害物との衝突を防ぐための自動緊急制動装置(AEB)や、前のクルマとの車間距離を一定に保ちながら走るための定速走行・車間距離制御装置(ACC)などの試験をする際に、従来のシミュレーターでは運転手や乗客の主観的な乗り心地を評価することができなかったという問題もありました。
ARTCがフォーラムエイトのドライビングシミュレーターを導入したきっかけは、東京に本社を置くサイバネットシステムの海外子会社であるサイバネットシステム・タイワン社(CYBERNET SYSTEMS TAIWAN)とARTCとの長年の協力関係にありました。
「当社はARTCに対して、世界中の自動車会社が使っているリアルタイムシミュレーションシステムを導入するなど多数のコラボレーションを行ってきた実績があります」と、サイバネットシステム・タイワン社のマリー・シェイ(謝孟娟)マネジャーは説明します。
そこで2016年にARTCが新しい車両シミュレーターの導入を検討していることを知り、フォーラムエイトのUC-win/Roadやドライビングシミュレーターなどのソリューションを積極的に紹介したことが、導入のきっかけとなりました。その後、ハードウエアのインテグレーションや、通信インターフェースの開発などにも参加し、今回のドライビングシミュレーター導入もサポートしました。
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取材で訪れたスタッフのスマートフォン。
機密保持のためARTC入場時に、カメラのレンズ部分に
シールが張られている |
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「数あるドライビングシミュレーターの中から、フォーラムエイトの製品を選んだ理由は、設定が簡単で柔軟にカスタマイズでき、リアリティーも優れていることです。また、Mechanical Simulation Corp.(日本ではバーチャルメカニクス社が代理する)の車両運動シミュレーションソフト『CarSim』や、実車に近い運転感覚が得られるセンソードライブ社のフォースフィードバック機能付きハンドル装置など、他社のハードやソフトとスムーズに連携できる点もありました」とイェイ部長は語ります。
またサイバネットシステム・タイワン社は、以前から台湾の自動車業界に働きかけてノウハウを蓄積してきました。それがARTCの研究や試験を助け、将来もよい研究成果につながると言う期待もありました。
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台湾の交通事情を再現したドライビングシミュレーターで試験走行を行う
研究スタッフ |
6自由度のモーションプレートは、車の動的特性を忠実に再現する |
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ドアミラーに映る映像も小型モニターで再現 |
バックミラーには後方のクルマが映る |
ドライビングシミュレーターの使用目的は、現段階では、主に自動車の動的特性を再現し、車両の動きとリアルタイムセンサー、制御ユニットとの関係を検証します。将来的には自動運転の体験や制御アルゴリズムの試験、検証にも使えるでしょう。
「6自由度のモーションプレートを持つという特長により、基本的な運転教育訓練に使えるだけでなく、自動運転車両をシミュレーションできるということが最大のメリットと言えるでしょう。ユーザーは、自動運転制御によって車両の乗り心地を直接体験することもできます。またクルマの動的特性がセンサーに与える影響の程度も考慮することができます。
UC-win/RoadはWindowsパソコン上で走っており、インターネットプロトコルの一種であるUDP(User Datagram Protocol)ネットワーク通信を介してドライビングシミュレーターのコントローラーと通信し、CarSim計算によって出てきた車両の動きを6自由度のシミュレーションプラットフォームで再現します。
台湾特有の交通事情に対するカスタマイズは、UC-win/Roadで作成できます。例えば、台湾の信号機や看板など、台湾の交通シーンを簡単にマッピングすることができます。
交通標識はUC-win/Roadでも描画することができます。例えば、台北の南港ソフトウェアパークに基づいたシーンを作りました。 自動車の車体の動きは、CarSimソフトウェアを使用して計算します。このソフトは、さまざまな道路条件下で車両の応答を正確に表し、ドライビングシミュレーターを通して、臨場感のある環境の中で運転感覚を表現できます。」と、サイバネットシステム・タイワン社の技術エンジニアの辜冠榮は説明します。
「フォーラムエイトのドライビングシミュレーターを使ってみた感想は、UC-win/Roadのスクリーンレンダリングや、CarSimの車両によるモーションプラットフォームの動的な結果を通じて、実物同様の運転感覚を再現できたということです。UC-win/Roadは、非常にリアルな状況を作り出し、自動運転車が遭遇する運転状況と、台湾の実際の交通状況を再現するために今後も使いたいです」(イェイ部長)。
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今後の研究の方向性は、自動運転アルゴリズムによる車両制御による運転で、乗客の乗り心地や車両の反応を感覚的に評価することを計画しています。その結果、自動運転アルゴリズムの調整やパラメータのチューニングも行えるでしょう。またHiLをテストする際、自動運転制御ユニットをドライビングシミュレーターと接続することで、制御ユニットの反応がテストできます。危険なシーンもシミュレーションによってテストできるので、実車によるテストに比べてリスクも下げられると考えています。
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6自由度のドライビングシミュレーター導入にかかわった関係者。 |
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