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以前のUp&Comingでもご紹介したように、フォーラムエイトでは、英国グリニッジ大学火災安全工学グループ(FSEG)にて、火災避難安全解析のために研究開発されたシミュレーションソフトウェア「buildingEXODUS」「maritimeEXODUS」「SMARTFIRE」の3製品に対して、入力データ作成等の支援サービスを開始しており、その一環として開発元の支援も受けながら一部解析支援も行っております。
新サービスとしてスタートした同解析サービスの実績として、以下では大成エンジニアリング株式会社様の事例を火災・避難・VRシミュレーション連携事例として紹介します。また、英国グリニッジ大学で毎年開催される短期講習会とフォーラムエイトで開催する体験セミナーについて紹介します。
●火災・避難・VRシミュレーション連携事例紹介
大成エンジニアリング株式会社様では、今後の高齢化社会に向けた、火災や事故等の災害時におけるトンネルや地下通路の避難誘導路対策が検討されており、本事例はその業務の一環で行われたものです。これは、2008年11月に開催された第7回「3D・VRシミュレーションコンテスト by UC-win/Road」にて、「3次元VRを活用した高齢化社会の避難シミュレーションの事例」として発表され、審査員特別賞のデザイン賞を受賞しました。本発表は避難VRシミュレーション側に着目した内容でしたので、本紹介はその後の検討も踏まえた火災・避難シミュレーション側に着目した内容です。
本事例は、図1に示すように、3D・VRシミュレーションソフト「UC-win/Road」による交通シミュレーション解析、火災CFDシミュレーションソフト「SAMRTFIRE」による火災シミュレーション解析、避難シミュレーションソフト「buildingEXODUS」による避難シミュレーション解析を連携させ、UC-win/Roadにより避難VRシミュレーションを行うというものです。避難シナリオは、図2に示す4車線上下線分離構造のトンネル(長さ4km、幅9m、高さ8mの半楕円内空断面、上下線連絡口750m間隔、トンネル等級A)の下り線(下り勾配2%)を対象として、坑口から2.5km地点でタンクローリー車の事故により火災が発生、トンネルへの進入車両が出火地点手前で停止、停止車両にいる人々が降車し避難口(坑口から2km地点)から階段(B4〜F1)を上り地上に避難するというものです。
▲図1 検討の流れ |
▲図2 トンネルモデルと停止車両 |
●火災シミュレーション解析・交通シミュレーション解析
火災シミュレーション解析では、出火地点と避難口を含む700mを解析区間(坑口から1.9km地点を原点)として、火災データ(長さ20mゾーン30個の温度・煙・放射熱の時刻歴)を求めました。発熱速度と煙生成速度は時間の自乗に比例する関数とし、700秒後の最大発熱量はタンクローリー車火災相当の100MWとしました1)。図3(a)は高さ1.7m道路中央における先頭車両停止位置(400m)と避難口位置(100m)の温度変化、同図(b)は同様の550秒と700秒での温度分布です。各図より、2%勾配の影響で熱煙が下り線坑口側に流れること、トンネル内の温度は時間とともに増加し、700秒後には出火地点から600m離れた地点でも250℃に達すること、出火地点付近(500〜600m)では時間や場所に応じて熱煙量が大きく変動するが、下り線坑口側(0〜500m)では場所によらず同程度の熱煙量になることがわかります。図4の時刻550秒における煙分布からも同様のイメージができます。
一方、交通シミュレーション解析では、車両走行速度(100km/hr)、交通量(8,000台/日)、バス等大型車混入率(10%)の条件、坑口での信号制御により事故発生から30秒後までの車両が進入するという条件から、図2(縦列長約50m)にもある車両データ(停止時刻・車両位置)を求めました。
▲図3(a) 高さ1.7m道路中央での温度 |
▲図3(b) 高さ1.7m道路中央での温度 |
▲図4 550秒における煙分布 |
●避難シミュレーション解析・避難VRシミュレーション検討
以上の車両データ、火災データを用い、避難シミュレーション解析では、健常者あるいは高齢者のみの避難者(男女各63名、計126名)を想定し、避難データ(避難者位置等の時刻歴)を求めました。検討ケースは、火災の影響が有るか無いか、避難者が健常者のみか高齢者のみの組合せで計4ケースです。健常者と高齢者を各々40才と70才程度とし、水平移動速度2)は、トンネル内での追越し等を考慮して健常者が1.1〜1.4m/s、高齢者が0.8〜1.1m/sの範囲の一様乱数値としました。階段上り速度3)は、健常者が0.6m/s、高齢者が0.5m/sとしました。図5は各検討ケースに対する避難率を示しており、同図より火災の影響が有る高齢者のみのケースで死亡者が発生しますが、それ以外のケースでは避難率が100%に達し全員無事に避難します。火災の影響を受けるのは避難時間が500秒強以上かかる高齢者の約3割で全体の約1割が死亡します。解析上の死因は放射・対流熱の被爆で、この累積量を表す吸入熱量(FIH)の増加により避難者の移動性が落ち、基準値を上回ると死亡と判定します。
▲図5 火災の有無による健常者と高齢者のケースに対する避難率 |
最終的な避難VRシミュレーション検討では、上記の各避難データを用いて、様々な非常用施設が検討されています。図6〜7は本避難シナリオにおける各時刻・各視点からの避難状況、各種標識の設置状況の一例ですが、避難VRシミュレーションはこのように災害時を想定した避難誘導路の事前対策を行う上で有効な検討ツールになりえると思われます。
▲図6 40秒後の避難状況 |
▲図7 避難口付近 |
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▲図7 上下線連絡通路 |
▲図7 避難階段 |
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▲図7 避難経路全体 |
■参考文献
1) |
Massachusetts Highway Department, Bechtel/Parsons Brinckerhoff: Memorial
Tunnel Fire Ventilation Test Program Test Report, Central Artery/Tunnel
Project, 1995. |
2) |
Ando K, Ota H, and Oki T: Forecasting The Flow Of People, Railway Research
Review, (45), pp 8-14, 1988. |
3) |
Fruin, J.: Pedestrian planning and design, Metropolitan Association of
Urban Designers and Environmental Planners, New York, 1971. |
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●各種セミナー
EXODUS/SMARTFIREの開発元である上記のFSEGは、避難モデルと火災モデルに関する短期講習会を開催しております。参加者にはCPD(Continuing
Professional Development)修了証書(Institution of Fire Engineers、UK)が発行され、各講習会には、毎年、世界中から多くのユーザが参加し、フォーラムエイトでも両短期講習会に参加しています。フォーラムエイトでは、避難解析/火災解析シミュレーションソフトウェア「EXODUS/SMARTFIRE」を技術者のみなさまに有効活用、高度活用いただくために、その成果を踏まえて各種セミナーを積極的に展開して参ります。例年、国内、中国、韓国にて、EXODUS/SMARTFIRE体験セミナーを開催し、ご好評いただいております。体験セミナーでは、数多くの質問が挙げられ、これから活用を図っていこうとお考えのユーザ様が数多く見受けられ、ご導入いただいております。
EXODUS・SMARTFIRE短期講習
●日時 : |
2009年 3月 23日(月)〜27日(金) 避難モデルの原理と実践 |
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2009年 5月 18日(月)〜22日(金) 火災モデルの原理と実践 |
●会場 : 英国グリニッジ大学(マリタイムグリニッジキャンパス)
●講師 : Ed Galea教授、FSEGスタッフ
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参加ご希望・詳細は、弊社営業窓口まで、ご相談ください。
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(Up&Coming '09 新春特別号掲載) |
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