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昨年12月にリリース致しました「矢板式係船岸の設計計算」について、その後の改訂状況などを紹介させて頂きます。本製品は、平成19年9月末に大幅な改正が行われた港湾の施設の技術上の基準の解説書である「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(以下「港湾基準」と略す)、並びに、「漁港・漁場の施設の設計の手引」(以下「漁港基準」と略す)に準拠した設計計算プログラムです。
●Ver1.1.0の改訂内容
控え矢板の計算で「長杭とみなし得ない場合(十分な根入れ長を確保できない場合)」に、版としての計算に対応しました。控え版は、図1.のように控え版前面の受働土圧によりタイ材引張力や控え版背後の主働土圧に抵抗できるように設計します。なお、土圧の算定にあたっては、上載荷重は主働土圧に対しては考慮し、受働土圧に対しては考慮しないものとします。また、控え矢板の設計位置によって、前面矢板の主働崩壊面と控え版の受働崩壊面が地表面以下で交わる場合には、交点より上の鉛直面に作用する受働土圧(ΔEp)は抵抗しないものとして、受働土圧EPより差し引かなければなりません。
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▲図1. 長杭とみなし得ない場合の土圧の扱い |
●3月6日港湾シリーズ体験セミナー
3月6日に、港湾シリーズ(矢板式、重力式係船岸)の体験セミナーを開催しました。体験セミナーの様子につきましては、セミナーレポート「体験セミナー(港湾シリーズ)」をご覧下さい。
矢板式係船岸で対応できていなかった、例えば、たわみ曲線法の解析結果として、M=0点(モーメントゼロ点)の情報が必要であり、この位置を、控え工の位置計算の主働崩壊面開始点とする場合があるとか、裏込材の土質物性値で土圧計算を行うべきであるなどというご意見を頂きました。
●Ver1.1.1の改訂内容
体験セミナー終了後、早速、たわみ曲線法で設計計算した場合には、M=0点から主働崩壊面を開始するという処理に対応しました。図4.は、たわみ曲線法から得られるモーメント図に、M=0点と主働崩壊面を加筆したイメージ図です。地盤条件によっては、たわみ曲線法が成立しない場合(矢板先端のたわみ角がゼロにならない)もありますので、このような場合の警告処理も同時に強化しております。 |
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図4. たわみ曲線法と主働崩壊面の関係イメージ図
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●Ver1.2.0の改訂内容
■自立矢板式係船岸の対応
自立矢板式係船岸の設計計算に対応しました。自立矢板式係船岸は、図5.に示すように、主働土圧+残留水圧強度が受働土圧強度と一致する点を仮想海底面として、仮想海底面より上の水平合力(H)を用いて、港湾基準では「港研方式」、漁港基準では「チャンの式」で、矢板壁の根入れ長、断面力、変位を計算するという設計方法になります。
自立矢板式係船岸の部分係数の扱いについては、港湾基準では明記されておりません。本製品では、普通矢板式係船岸の前面矢板壁と同様な扱いができるように、必要と考えられる部分係数を基準値テーブルに用意し、初期値として1.00を与え、場合によっては、設計者のご判断で普通矢板式係船岸に準じることもできるように切替ボタンを用意しています。
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▲図5. 仮想海底面の位置 |
■裏込材を考慮した土圧計算の対応
本プログラムでは、前面矢板壁の裏込材につきましては、控え工の設置位置を検討する際に、主働崩壊面には考慮していましたが、前面矢板壁の土圧計算では無視(図6左側)していました。本バージョンにて土圧として考慮(図6右側)できるように改善しました。
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▲図6. 前面矢板裏込材の扱い |
●今後の予定
普通矢板式係船岸(控え直杭、矢板、組杭)、そして、自立矢板式係船岸に対応したことにより、矢板式係船岸の設計計算のサポート範囲は大幅に広がったものと思われます。しかしながら、組杭における軸直角方向支持力を考慮した設計への対応や、任意荷重への対応などの計算機能の充実は不可欠です。重力式係船岸も含めた港湾シリーズの充実に取り組んで参りたいと考えております。
■矢板式係船岸の設計計算 Ver1.2 リリース日:2008年4月21日 |
(Up&Coming '08 新緑の号掲載) |
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