●UC-win/FRAME(3D) Ver.1.06 |
▲図1 Rayleigh減衰の設定画面
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UC-win/FRAME(3D)は、任意形の立体構造を対称とした汎用3次元骨組構造解析プログラムです。ファイバー要素やM−φ要素による材料非線形解析、大変位法による幾何学的非線形解析、そして、静的荷重、影響線による活荷重および動的荷重が載荷できます。構造系の荷重変位関係の算出から、道路橋示方書V編やW編に準拠した許容応力度・耐力照査、V編による動的照査、限界状態設計法による照査に対応しています。静的動的荷重を考慮でき、部材力の結果を用いた断面計算を連続して行うことが可能です。
今回のバージョンでは、以下の項目に対応しました。Advanced版ではすべて無償改訂となります。
●Rayleigh減衰
粘性減衰マトリクスの作成方法に、従来の要素別剛性比例減衰による方法に加えて、(非要素別)Rayleigh減衰による方法を追加しました。従来から搭載している要素別剛性比例型減衰と同様に、剛性マトリックスの参照方法は、は、初期剛性と瞬間剛性のいずれかを選択できます。MultiRun機能とあわせ、これらの減衰モデルの違いが解析に与える影響を簡単に比較することもできます。Rayleigh減衰の決定に必要な係数α(質量マトリクスに乗じる係数)とβ(剛性マトリクスに乗じる係数)は、2つの固有モードを画面上で選ぶことにより、それらの固有振動数とモード減衰定数(ひずみエネルギー比例減衰法)から自動的に決定します。モードの選択そのものを刺激係数の大きいものから自動的に2つ選ぶ機能もあります(図1)。
●M−φ要素によるPC部材の解析機能
PC部材の非線形性を考慮する要素として、従来のファイバー要素に加えて、
M−φ要素をも適用できるようになりました(図2)。断面にPC鋼材を配置して有効プレストレスを与えると、プレストレスを考慮したひび割れ点(φc, Mc)、初降伏点(φy0, My0)、終局点(φu, Mu)を自動的に算出します。
このとき、コンクリートの応力ひずみ曲線には、道路橋示方書IIIコンクリート橋編(以下、道示IIIと呼ぶ)タイプや道路橋示方書X耐震設計編(以下、
道示Vと呼ぶ)タイプを選択できます。プレストレス2次力が発生するような不静定構造にも有効です。内部履歴曲線には、道示V巻末の参考資料の記述を参考にして「原点指向型」および「原点最大点指向」を追加し、これらから選択できます。
●M−φ特性にMy=Muオプションを追加
日本道路公団設計要領第二集に準拠したM−φ特性を自動的に設定するオプションを追加しました。定義するために、従来の「My=My0」とする方法と今回の「My=Mu」とする方法のいずれかを指定できるようになります。
●ばね要素を用いたM−θモデルの改善
部材の非線形特性を塑性ヒンジ区間中央に設ける非線形回転バネでモデル化する場合、本プログラムでは断面から自動生成したM−θ特性をばね要素に用いてモデル化することになります。このとき、従来のバージョンではばね要素の要素座標系と全体座標系との位置関係や、ばね要素のi端とj端の順序により、ばね要素座標系の向きを設定する際に注意が必要でした。本バージョンでは、メイン画面やばね要素の編集画面にM−θ特性の算出元となる断面形状と配筋状態をわかりやすく表示するようにしました(図3)。さらに、隣接する部材を指定することで自動的に最適な要素座標系が設定される機能を追加しています。
●ばね特性、M−φ特性、ヒステリシスの新タイプ
ばね特性の並進成分に「Takeda型」、同様にトリリニア非対称型に原点指向型と原点最大点指向型を追加、M−φ特性に原点指向型と原点最大点指向型を追加しました。鉄筋ヒステリシスにバイリニア(対称型、非対称型)とトリリニア(対称型、非対称型)を追加(図4)、鉄筋ヒステリシスとPCヒステリシスにBauschinger効果を表すパラメータを追加、骨格の勾配およびBauschinger効果を現す係数を任意で設定できるので、研究用途にもご活用いただけます。
■UC-win/FRAME(3D)Ver.1.06リリース予定日 : 2005年 7月15日 |
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▲図2 PC断面のM−φ特性 |
▲図3 ばね要素の編集画面
(M−θモデル) |
▲図4 鉄筋ヒステリシス
(Bauschinger効果考慮) |
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●土留め工の設計 Ver.3 |
「土留め工の設計」では、(1)支保工形式として「アンカーと切ばりの併用工法」の追加、(2)土留め壁の設計強化として「SMW壁」「ヒービング」の改善、(3)アンカー工の設計強化として「鉄道基準」「鉛直分力」などの機能追加、(4)弾塑性法強化として「支点条件多様化」を行い、同時に、(5)「数量計算内訳書」に対応しました。
●切ばりとアンカーの併用工法
左右の土留め壁設置位置において、地表面に高低差がある場合、図1に示すように天端の高い土留め壁側では、天端の低い土留め壁の間に切ばりを設置できない土留め壁頭部付近は、アンカー支保工を設けて安定性を確保する場合があります。これを、「アンカーと切ばりの併用工法」と称し、新たに、支保工形式に追加しました。従来版では、例えば、全段切ばりとして支保工反力を求め、アンカーについては得られた反力並びにアンカー設計条件を単独設計で入力し、設計計算を行って頂いていましたが、今回の対応により、一連の処理で、土留め壁、支保工2種類の設計計算が可能になり、同時に図面作成(図2)までできるようになりました。 |
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▲図1 アンカーと切ばりの併用工法(3D図) |
▲図2 アンカーと切ばりの併用工法
(CAD図面) |
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●SMW壁の設計強化
SMW壁は、芯材とソイルセメントから構成されます。SMW設計施工指針(社団法人 日本材料学会)によると、土留め壁の必要根入れ長は、(1)側圧などの外力により定まる応力的な根入れ長さ、(2)ヒービングにより定まる根入れ長さ、(3)地下水の廻り込みを遮断する水理的な根入れ長さを満足しなければならないとしてあります。根入れ部分の設計に際しては、図3に示すように応力的<(1)(2)>な根入れは芯材により、水理的<(3)>な根入れは、ソイルセメント壁によりおのおの設計することになります。また、支持力に関しては、仮設指針(社団法人日本道路協会)に、先端地盤の極限支持力度は芯材先端、最大周面摩擦力度は芯材が挿入されている範囲のみ考慮と規定しています。このように、SMW壁の場合は、各種の設計計算において、芯材長を対象としたり、ソイルセメント長を対象とするなどの使い分けが必要であり、これに対応できるようになりました。
●アンカー工の設計強化
アンカー工については、皆様からご指摘の多かった以下の3点について対応しました。
1) |
アンカーによる鉛直反力を考慮した土留め壁の設計 アンカーによる鉛直反力を考慮した土留め壁の断面応力度照査、並びに、支持力照査が行えるように改善しました。 |
2) |
鉄道基準への対応 従来版は、「土木学会」の考え方でアンカー腹起しの設計を行っていましたが、「設計の手引き-掘削土留工 財団法人 鉄道総合技術研究所」の考え方に対応し、同時に、上下段の腹起しの反力分担率を変更できるように改善しました。また、支圧版の設計において「せん断に対する照査」に加え、「曲げモーメントに対する検討」も行えるようにしました。 |
3) |
使用鋼材と決定鋼材の整合性強化
弾塑性解析を行う場合、事前に、使用する鋼材断面とアンカー自由長を仮定し、これによりアンカーバネ値を計算した上で弾塑性解析を行い、得られた反力でアンカー鋼材断面、規模を決定します。よって、図4に示す通り、仮定したアンカー規模と決定したアンカー規模が一致するまで繰り返し処理をしなければなりません。本バージョンより、自動繰返し計算機能を追加し、マニュアル操作の煩わしさを解消し、同時に、入力補助的に、決定した鋼材を仮定値に戻す仕組みを導入し、効率よくアンカー規模を決定できるようになりました。 |
●弾塑性法の支点条件の多様化
弾塑性解析を行う際の支点条件について、次の2点に対応しました。
1) |
土留め壁天端に、自由、ヒンジ、固定の支点条件を与えられるようにしました。 |
2) |
各切ばり段毎に、回転拘束条件として、自由、固定、回転バネ条件を与えられるようにしました。これによって、図5に示すような逆巻き工法で、頂版位置に回転バネを考慮する解析が可能になりました。 |
●数量計算内訳書
図面作成機能である数量表について、今回、形状寸法図を混じえた数量計算内訳書出力機能を追加しました。
以上、今回の主だった改訂内容を紹介させて頂きました。今後もユーザの皆様からのご要望を取り入れ、改良・改善を加えてまいります。
■土留め工の設計 Ver.3 リリース日:2005年 7月1日 |
▲図3 SMW壁根入れ部の例
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▲図4 アンカー工の設計フロー
(弾塑性解析実行時) |
▲図5 回転バネの考慮(弾塑性解析時) |
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