現在、社員に友人や知人を紹介してもらう採用手法である「リファラル採用」が注目されています。自社の社風や文化を理解している社員からの紹介のため、採用のミスマッチが起こりにくく、採用コストの抑制が期待できます。
リファラル採用の基礎知識
「リファラル採用」とは…?
リファラル(referral)とは、英語で【紹介・推薦】という意味で、リファラル採用とは、社員を通して人材の紹介・推薦を受け、採用選考を行う手法のことです。
リファラル採用は、人材紹介会社や求人サイトなどといった既存の採用手法に頼らず、人と人との個人的な繋がりを活用します。この方法によって採用候補者の質や信頼性を確保し、採用のマッチング精度を高めることが期待できるのです。
「コネ採用」とは違うのか…?
「コネ採用」は採用を前提とした推薦であることが多いものです。一方、リファラル採用では、一次面接が免除されるなど選考の一部を除外されることはあっても、基本的には一般の応募者と同様の選考を課される点で「コネ採用」とは異なります。
「リファラル採用」が注目されるようになった背景
現在、有効求人倍率の高まりを受けて採用活動が難航する中、応募を待っていても採用要件に合う人材がなかなか見つからない、出会えない状況が続いています。こうした背景から、企業は応募を待つ姿勢から採用候補者を自ら探しにいく姿勢が求められるようになり、リファラル採用が注目されるようになりました。
更に、リファラル採用は、社員が自ら企業理念を友人や知人に伝えることで、社員のエンゲージメント※ を高める動きにつながるとしても注目されています。
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エンゲージメントとは…?
エンゲージメントとは、一般的には「契約」「約束」という意味合いがありますが、人事の分野では、企業と社員がお互いに信頼し、貢献し合う状態を指すのが一般的です。 |
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リファラル採用のメリットとデメリット
〜メリット〜
1. 採用のミスマッチを防ぎ、入社後の定着率向上につながる!
2. 採用コストの抑制につながる!
3. 転職活動をしていない転職潜在層にも会える!
4. 社員のエンゲージメントを高める効果がある! |
1. 採用のミスマッチを防ぎ、入社後の定着率向上につながる! 採用候補者は社員から、企業理念や社風、職場の雰囲気、仕事内容、福利厚生といった労働環境などについてある程度の情報を得ています。そのため採用のミスマッチが起こりにくく、職場定着率が向上し、入社後の早期退職を防ぐ効果にもつながります。
2. 採用コストの抑制につながる! 一般的な採用手法である人材紹介会社や求人媒体を経由しないため、採用にかかるコストの抑制につながります。
3. 転職活動をしていない転職潜在層にも会える!
転職市場で求めている人材を探すには激しい獲得競争が避けられません。リファラル採用では、潜在的な転職意識のある人材に直接コンタクトできるため、競争を回避しながらの人材獲得が可能になります。
4. 社員のエンゲージメントを高める効果がある!
リファラル採用は、社員がリクルーターとなって友人からの応募を集めるため、社員が人事(求人担当者)の役割を担っているとも言えます。友人や知人に対して自社を紹介する際に、自分がなぜ今の会社を選んだのか、どんな仕事をしているのか、事業や仕事内容の面白みはどこのあるのか宣伝することになるため、当事者意識や会社に対する愛着心を持つ機会を与えることができます。
〜デメリット・注意点〜
1. 人間関係と人材配置への配慮
2. 社員の理解と認知が不可欠
3. 採用までに時間がかかる |
1. 人間関係と人材配置への配慮
リファラル採用は社員による紹介であるため、紹介した社員・紹介された応募者などの人間関係に配慮が必要です。不採用だった場合の気まずさや、紹介者の退職にともない紹介された側も退職を検討してしまったりといった弊害にも注意が必要です。
2. 社員の理解と認知が不可欠
リファラル採用は社員がメインになって活動する方法です。そのため、企業がどのような人材やスキルを求めているのか社員が正確に理解していない場合、ミスマッチが起こり、採用人事側に余計な手間をかけてしまう恐れがあります。そのため、企業の募集状況については日頃から社員へ周知を行い、情報をアップデートし続ける必要があります。
リファラル採用で紹介される人材は、即入社が難しい場合があります。現在も現職で活躍している優秀な人材であるケースも多く、内定を出してから採用となるまで一定の期間を要することも少なくありません。
リファラル採用を成功させるプロセス
リファラル採用制度を認知してもらう まずは、社員にリファラル採用に関する説明、場合によっては報奨金制度もあることを認知させる必要があります。紹介報酬を想定している場合は、リファラル採用を制度化して社内規程や賃金規定に盛り込んでおくことが必要です。また、現在どのポジションの募集を行っているかも、常に社員に広く知らせておく必要があります。
社員が動くメリットを作る リファラル採用のための人材紹介は社員にとっては義務ではありませんので、紹介するメリットがないと社員はなかなか動きません。このため、金銭面だけでなく人事面でも、何らかの報酬をインセンティブとして提供する等の工夫も必要です。
・紹介者を会社の人事的な制度で評価する
・1人紹介あたり有給休暇を〇日間増やす
社員の負担軽減のための工夫をする 社員が説明しやすいように紹介方法のレクチャーをしたり、会社の魅力を簡単に説明できる動画やパンフレットを事前に用意したりするのも一つの方法です。
リファラル採用は、日本では欧米に比べてまだあまり一般的な手法ではないため、成功させるには工夫も必要です。まず社内でリファラル採用の意義とメリットを十分に説明し、既存の採用手法と並行して活用してみてはいかがでしょうか。
■リファラル採用における賃金規定の例
第○条 (社員紹介手当)
- 会社の採用募集要項に対して該当すると見込まれる人材(以下、紹介者)を会社に紹介し、採用に至った場合に紹介者一人につき一回限り、社員紹介手当を支給する。2人目以降も同様とする。ただし、派遣限定の採用については対象外とする。
- なお、社員紹介手当の支給は、紹介者の採用日から6ヵ月経過以降も在職している場合に全額支給し、6ヵ月以内に自己都合により退職した場合は支給しない。
- 社員紹介手当は、紹介者の実務経験、年齢および資格等を考慮したうえで、会社が決定するものとし、区分は以下のとおりとする。
- なお、本社員紹介制度(リファラル採用)は、優秀な従業員の採用及び長期安定的な雇用を図ることを目的として実施するものである。
社員紹介手当 |
判定基準 |
100,000円 |
該当業務の実務経験・知識があり、かつ即戦力と見込まれる(社員) |
70,000円 |
該当業務の実務経験・知識はあるが即戦力と見込まれない、または実務経験はないが、業務に対応可能な経歴と知識を有する(社員) |
50,000円 |
該当業務の実務経験・知識がない
(社員又はアルバイト) |
監修:社会保険労務士 小泉事務所
代表 社会保険労務士 小泉 正典
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