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Vol. 24
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。
今回は、前回に引き続いて改正民法の話題から、新しく規定された「定形約款」について取り上げ、その定義やルールについて解説します。
 

 民法改正について(第2回 定型約款)
2017年6月2日に公布された改正民法の主要なテーマについて、第2回目として、「定型約款」をご紹介します。

現在の日常生活や取引においては、数多くの「約款」が使用されています。しかし、現行民法では、約款の定義や約款に関するルールについての規定はありませんでした。改正民法では、新しく「定型約款」の規定をおいて、その定義やルールを明確化しています(改正民法第548条の2から548条の4)。


定型約款とは

改正民法で新しく規定が置かれた「定型約款」とは、「定型取引において、契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体」と定義されています。

また、定型約款の定義にある「定型取引」とは、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう」とされています(改正民法第548条の2第1項)。

不特定多数の者との取引に関するものであること、取引内容の画一性が双方当事者にとって合理的であることなどの要件がポイントで、具体的には、銀行の預金規定や、割賦販売契約書の裏面約款などが「定型約款」に該当する、とされています。

他方で、上記の定義に当てはまらない場合には、仮に「約款」という名称がついていたり定型的な契約書を使っていたりしたとしても、改正民法上の「定型約款」には含まれません。たとえば、事業者間取引で使用される単なるひな型や労働契約などは、「定型約款」に該当しないものと考えられます。「定型約款」に含まれない約款等については、今後も、現行民法下での議論や裁判例等を参考にして解釈していくこととなります。


定型約款が契約内容となるためには

次の要件のいずれかを満たして定型取引の合意をしたときには、定型約款の個別条項が、当事者間の契約(合意)の内容になります(改正民法第548条の2第1項)。

  • (1)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
  • (2)定型約款準備者があらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

(1)(2)のいずれかの要件を満たしていれば足り、両方を満たしている必要はありません。

また、定型約款の事前開示や定型約款の詳細な内容の認識・了解は、要件とはされていません。

もっとも、定型約款準備者が定型約款の開示を求められた場合にはこれに応じる必要があり(改正民法第548条の3第1項)、定型約款準備者が開示請求を拒否した場合には、当該定型約款は契約内容になりません(改正民法第548条の3第2項)。 


定型約款の効力が制限される場合

次の要件のいずれかを満たして定型取引の合意をしたときには、定型約款の個別条項が、当事者間の契約(合意)の内容になります(改正民法第548条の2第1項)。

上記2の要件を満たす場合でも、定型約款準備者に一方的に有利な条項や、相手方が予測できないような契約条項は、契約の内容にはなりません。具体的には、

(1)相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、
(2)その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害すると
  認められるもの

は、当事者間で合意したものとはみなされず、法的拘束力を有しないものとされています(改正民法第548条の2第2項)。
いわゆる不当条項だけでなく、相手方が合理的に予測できないような条項(不意打ち条項)も、本規定によって法的拘束力を有しない、との判断となりえます。

また、上記(2)に該当するかどうかの判断にあたっては、約款条項の文言や趣旨だけでなく、契約全体の内容、特に不利益の存否、内容、程度、定型取引の態様、性質、実情、取引上の社会通念など、全ての事情を総合的に考慮して判断されることとなります。


定型約款を変更するには

次の要件をいずれかに該当するときは、当事者間の個別の合意がなくても、定型約款準備者において、定型約款を変更することができます(改正民法第548条の4第1項)。

(1)相手方の一般の利益に適合するとき
(2)契約した目的に反せず、変更の必要性、変更の内容の相当性、変更条項の有無・内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき

なお、上記(1)(2)のいずれかに該当して定型約款を変更する場合、定型約款準備者は、効力発生時期を定め、約款変更する旨・変更後の約款内容・変更の発生時期を、インターネットの利用など適切な方法で周知する必要があります(改正民法第548条の4第2項)。ただし、上記(2)の場合は、効力発生時期の到来までに周知をする必要があります(改正民法第548条の4第3項)。

新設される定型約款に関する規定の概要は以上のとおりです。具体的な取引で使用されている約款が「定型約款」に該当するかどうか、改正民法をふまえての契約書や「約款」の整備など、気になることがありましたら、是非ご相談下さい。

なお、2020年4月に施行が予定されている民法改正については右のような項目が挙げられていますので、参考にしてください。

■民法改正の主な改正事項(2020年4月1日施行予定 ※一部の規定を除く)
1 消滅時効 改正民法第147条〜第169条
2 法定利率 改正民法第404条
3 債務不履行による損害賠償 改正民法第415条〜第422条の2
4 保証 改正民法第448条〜第465条の10
5 債権譲渡 改正民法第466条〜第469条
6 相殺 改正民法第505条〜第512条
7 危険負担 改正民法第536条
8 解除 改正民法第541条〜第548条
9 定型約款 改正民法第548条の2〜第548条の4
10 売買(瑕疵担保責任) 改正民法第56条〜第570条
11 賃貸借 改正民法第601条〜第622条の2

■定型約款に関する規定まとめ
定型約款の要件(改正民法第548条の2第1項参照)
(1)ある特定の者が不特定多数の者を相手方する取引で、
(2)取引内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的な取引において、
(3)契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された、
(4)契約条項群
定型約款の合意(改正民法548条の2)
定型約款の条項が契約内容となる場合(みなし合意)(改正民法548条の2第1項)
(1)定型約款を契約の内容とする旨の合意がある場合、または、
(2)定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示した場合
定型約款の条項が契約内容とならない場合(みなし合意除外)(改正民法548条の2第2項)
(1)相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、
(2)その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害すると
  認められるもの
定型約款の内容の表示(改正民法548条の3)
定型約款準備者が定型約款の開示を求められた場合(改正民法548条の3第1項)
定型約款準備者はこれに応じる必要がある。(書面交付やウェブサイトでの開示等をしたときを除く。)
定型約款準備者が開示請求を拒否した場合(改正民法548条の3第2項)
当該定型約款は契約内容にならない。(一時的な通信障害等の正当事由がある場合を除く。)
定型約款の内容の変更(改正民法548条の4)
定型約款の変更の要件(改正民法548条の4第1項)
(1)相手方の一般の利益に適合するとき、または、
(2)契約した目的に反せず、変更の必要性、変更の内容の相当性、変更条項の有無・内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なもので
  あるとき
定型約款の変更の手続(改正民法548条の4第2項、第3項)
・効力発生時期を定めて、約款変更する旨・変更後の約款内容・変更の発生時期を、インターネットの利用など適切な方法で周知する必要がある。
・上記(2)の場合は、効力発生時期の到来までに周知をする必要がある。

参考:法務省ウェブサイト
[1]民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
[2]約款(定型約款)に関する規定の新設
  http://www.moj.go.jp/content/001255638.pdf

監修:中本総合法律事務所



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