●VRとアニメーション
静止画を連続表示して動きを見せる手法をアニメーション(動画)といいます。その動きは制作者がつくりだすものであり、動く被写体を直接撮影した実写映像や、連続した動きに見えないスライドショーとは区別されます。
仮想空間内を自由に移動できるVR(Virtual Reality)データの表示は、リアルタイムアニメーションであり、視点移動などのインタラクション(相互作用)機能を反映して画像を高速生成します。例えば、毎秒30フレームの動画像表示の場合、1フレームの描画を1/30秒で終える必要があります。高速化のために、重要な物体から描画する方法や、視点からの距離などに応じて物体の形状詳細度を調節するLOD制御などの手法が利用されています。
またハードウェア面でも、様々な機能があります。最近のGPUには、NVIDIA社のVertexシェーダとPixelシェーダのように、プログラムで陰影をコントロールできる機能やテクスチャ操作が可能なシェーダが用意され、様々なリアルタイムアニメーションの表現が可能となっています。
●VRと動画の録画
インタラクティブなVRデータを基に、再生のみ可能な(リアルタイムでない)アニメーションを作成する目的は、データの表現意図を効果的に伝えることにあります。デモムービーとして楽に持ち出せ、動画を見せることによって、操作者の有無やハードウェア環境などに左右されることなく、検証比較やシミュレーションなど、VRで可視化した内容のエッセンスを伝えることができます。
VRでは、被写体を動かすだけでなく視点を動かすことが容易であり、ダイナミックな表現が比較的簡単に行えます。ストーリーを練り、アングル、画角などカメラワークに留意する点は、通常のCGアニメーション制作と同様です。
また、VRの録画映像を実写と合成することも可能であり、そのほか、実写と比較することによってVRの精度の検証も可能です(図1)。
▲図1.VRと実写の比較映像 |
●コーデックの注意
動画生成は多くの連続した画像を処理するため、情報量が圧倒的に大きく、同時に、再生時には多量の情報を、コマ落ちすることなく連続して高速処理しなければなりません。そのため、動画には、各特性に応じた特別な圧縮・展開(エンコード/デコード)が行われることが多く、そのアルゴリズムやソフトウェア、装置をコーデック(Codec)といいます。
コーデックの種類によって、動画や音声データの圧縮率や品質が異なり、基本的には、再生の際、圧縮に使用したコーデックが必要となります。
●カメラワーク
普段、感覚的に使用しているカメラアングルも、効果を理解し、意識して切り替えると、より有効な表現となります。
■ハイアングル:
高い位置から見下ろす角度に視点を設定。俯瞰のように、客観的に全体を把握したり状況を説明したりする際に有用(図2)。
■ローアングル:
低い位置から仰ぎ見る角度に視点を設定。奥行きや迫力を表現できる。アングルが低すぎると窮屈な感じになる場合がある(図3)。
■アイレベル:
人の目の高さに視点を設定。日常見る景色に近い映像となり、没入感が得られる。人の目線での検証に有用(図4)。
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▲図2.ハイアングル |
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▲図3.ローアングル |
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▲図4.アイレベル |
●アニメーションの手法
コンピュータアニメーションの基本手法には、キーフレーム法、スケルトン法、パーティクル(粒子)システムのような種々の手法があります。キーフレーム法は、変化のポイントとなるキーフレームの間を補間する複数の絵を自動的に生成する手法です。スケルトン法は、モデルにスケルトン(骨格)を割り当て、スケルトンの動きに対応してモデルを変形させます。パーティクルは水しぶきなどの流体や、爆発、鳥の群れなどを表現できます(図5)。
また、物理法則をシミュレートして動きを生成する手続き型アニメーションは、植物の生長モデルや、流体シミュレーションの可視化に用いられます。
キャラクタの動き方の設計にも種々の方法があり、関節を階層構造化して計算する方法や、人の実際の動作を測定したデータを割り当てるモーションキャプチャ、個々のキャラクタに動きのプログラムを割り当てて計算する群集(フロック)アニメーションなどがあります(図6)。
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▲図5.炎と火の粉の表現 |
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▲図6.モーションキャプチャ例 |
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参考文献: ・『ビジュアル情報処理 -CG・画像処理入門-』CG-ARTS協会、2008年 |
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(Up&Coming '09 盛夏の号掲載) |
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