今回から新しく、VRデータを作成する際に有用なCGとVRの基礎知識について触れていきます。第1回は、座標と画像処理についてです。
●空間と位置の表現−座標系
皆さんが普段、当たり前のように目にしている、コンピュータによる3次元空間やCGですが、それらを表現するには、まず物体や空間を数値で表さねばなりません。3次元の立体は点・線・面の3要素で構成されており、最も基本となる要素が点です。この点の位置を正確に表すために、3次元直交座標系を用います。
原点からどれだけ離れた場所かを示す座標値(x,y,z)によって点の位置が表現できれば、線、面および立体を定義できます。データ化された立体は、座標変換され、移動、回転、拡大・縮小、反転などの変形操作が可能となります。
一見複雑そうな図形でも、基本的にはこれらの組合せで生成されています。
ちなみに、地球上の位置決定手法の最近の主流であるGPSなども、原点を地球重心に持ち、地球とともに回転する3次元直交座標系(地球基準座標系)を基準としています。直交座標系と地球楕円体の関係式を用いて経度、緯度、高さに変換されています。
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▲図1.3次元直交座標系
(引用:入門CGデザイン・CG-ARTS協会2008年) |
●視覚化処理と座標系
3次元を扱うときに意識されないかもしれませんが、個々の立体モデルはそれぞれ形状を定義しやすいように固有の座標系(モデリング座標系または物体座標系)をもっています。一方、仮想世界全体を管理する座標系(ワールド座標系)で、個々のモデルの配置位置や、視点、光源、投影面の位置を表します。また、仮想空間を2次元画像で表示するには、カメラで風景を撮影するように、カメラ位置(視点)を原点とし、レンズを向ける方向をz軸方向とするカメラ中心の座標系(視点座標系)を考えます。視覚化には、このように処理の段階に応じて複数の座標系を使い分け、その間の座標変換が行われています。
●ラスタ形式とベクタ形式
ディジタル画像は、画像を図形の集まりとしてとらえ、線分、多角形、円などの座標で表現するベクタ形式と、規則正しく格子状に並んだ点(画素=ピクセル)の集まりで表現するラスタ形式とがあります。
■ベクタ形式
[長所]解像度の制約がなく、拡大・縮小・変形を施しても図形イメージが劣化しない。
[短所]本来線画を想定しており、写真のような画像には不向き。
■ラスタ形式
[長所]写真のように複雑な形や色の組合せの画像でも表現でき、ドット単位の処理が比較的簡単。
[短所]拡大すると輪郭にジャギー(ギザギザ)が現れたり、縮小すると情報が失われるなど、拡大・縮小・変形に適さない。
●アンチエイリアシング
ラスタ形式の画像では、斜め線や曲線などに階段状のジャギーが生じます。また、細かい点や線の消失や分離が発生する場合もあり、これらの障害をエイリアシングといいます。この影響を低減する処理をアンチエイリアシングといい、境界部分に背景と図形の中間色の点を配置する手法が一般的です。なめらかな画像を得ることができますが、画像が多少ぼけることがあります。
▲エイリアシング |
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▲アンチエイリアシング |
●フィルタリング
1つの画素に対して、その周囲の画素の値を用いて処理する方法をフィルタリングといいます。例として平滑化、鮮鋭化、などがあげられます。平滑化は、フィルタによって覆われる領域内の画素値の平均を求めて処理するため、濃淡の変化がなめらかで、ぼけた画像になります。逆に隣との差を出力するフィルタリングが鮮鋭化やエッジ抽出となります。
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参考文献:
・『ビジュアル情報処理 -CG・画像処理入門-』CG-ARTS協会、2008年
・『ビジュアル情報表現-ディジタル映像表現・Webデザイン入門-』CG-ARTS協会、2008年
・『入門CGデザイン』CG-ARTS協会、2008年 |
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(Up&Coming '09 新春特別号掲載) |
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