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vol.1 ビジネスコミュニケーションにおける非言語情報
       見た目は、メディア社会におけるコミュニケーションツール
株式会社パーソナルデザイン 代表取締役
唐澤 理恵 Rie Karasawa
プロフィール
 お茶の水女子大学被服学科卒業後、株式会社ノエビアに営業として入社。1994年最年少で同社初の女性取締役に就任し、6年間マーケティング部門を担当する。2000年同社取締役を退任し、株式会社パーソナルデザインを設立。イメージコンサルティングの草分けとして、政治家・経営者のヘアスタイル、服装、話し方などの自己表現を指南、その変貌ぶりに定評がある。
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科経営学修士(MBA)、学術博士(非言語コミュニケーション論)。

最初に、ある男性の4枚の写真をご覧ください。(図1)左右の写真は同一人物です。官僚から一般企業の取締役になられた時の変化です。人は装い方だけでこんなに変われるという実証です。現に彼の人生も大きく左右されたようです。パッケージデザインで売れるか売れないかが決まる商品のように、人も装いによって人生の豊かさが大きく左右されると言っても過言ではありません。

before after before after
図1 パーソナルデザイン例 会社役員

私が提唱する『パーソナルデザイン』とは、自分マーケティングです。マーケティングとは、企業が売る商品の特長、商品の外装(容器、パッケージデザインなど)、商品の価格、そして商品を売る場所(コンビニ、量販店、地域など)、プロモーション方法をそれぞれ絶えず見直しながら、企業としての売上と利益を維持するための手法です。モノが溢れかえった社会だからこそ、マーケティング戦略を間違えると永続性のない商品が出来上がってしまいます。とくにパッケージデザイン、外装のデザインの重要度は増しているようですが、人も同じです。 

内面に明るさ若さを秘めた先ほどの58歳の男性ですが、いかにも堅実で真面目という官僚にふさわしい印象でした。しかし、一般企業、しかもコンサルティングという職種の変化において感性の豊かさや、時代の流れをつかんでいるという印象が新たに必要です。そこで眼鏡を遠近両用のコンタクトレンズに変えて、髪形もすっきりとした若々しいスタイルに変えました。本来の彼の内面を体現した印象に変化し、まるで10歳若返ったようです。


ビジネスにおける非言語情報の役割

最近、テレビでよく目にする謝罪会見ですが、企業からイメージコンサルティングの依頼を受けることも少なくありません。「申し訳ございません」という言語情報は同じであっても、謝る人によって印象が大きく違うのはなぜでしょうか。あの人は目が謝っていなかった、あんな高い時計を身に着けて謝罪の気持ちはあるのか、お辞儀の仕方が気に入らないなど、ただ単に謝罪の言葉だけではない見た目からの情報が印象を大きく左右します。

また、会社内で起きるパワハラ問題にしても、指導の内容は正しくても言い方によって相手を傷つけてしまっているケースは少なくありません。

つまり、私たちが相手から得る情報は言葉という言語情報だけでなく、声質、言い方、表情、身振り手振り、顔つき、服装、髪形といった非言語情報が大きく影響し、それによって言語に対する相手の受け取り方が変わります。「あ・うん」の呼吸でコミュニケーションを図ってきた私たち日本人がおろそかにしてきた見た目。それが、いかにコミュニケーションに影響するのかを考えます。


初対面におけるコミュニケーション

学校生活、社会人生活、私的な集いなど、私たちの人生において、数えきれないほど多くの人との出会いがあります。とくに社会人生活では、初対面の相手といかに良好な人間関係を築くかはビジネス上の重要なスキルです。人となりを知らない相手と対峙して、商談・交渉をしなくてはいけません。事前に相手の情報を調べておくことも大切ですが、それも限りがあるでしょう。まずは会った瞬間、初対面で得られる情報こそ、コミュニケーションの鍵となります。つまり、それは視覚情報です。「優しそう」あるいは「怖そう」など見た目の印象はさまざまですが、そこから相手の内面を推測し、言葉を選び話しかけてみます。相手から意外な反応が返ってくると、コミュニケーションに戸惑い、また新たな言葉選びをしなくてはいけません。推測した通りの人かどうか、それによってコミュニケーションにかかる時間や質が変わってきます。言い換えれば、推測した通りの人であった方が、コミュニケーションは早く進むと言えます。スピード時代と言われる昨今、ビジネス上では見た通りの人であることが社会においては大切なことなのかもしれません。

第一印象の重要性(メラビアンの法則)

外見から得られる非言語情報に関する研究は、日本より欧米で進んでいます。とくにアメリカは多言語多民族国家のため、言葉があまり通じない相手とのコミュニケーションは日常茶飯事です。そのため、言語情報だけでなく、非言語情報が相手にどんな影響を及ぼすのか、大学などで多くの学者が研究し、学術論文も多数存在しています。中でも南カリフォルニア大学のアルバート・メラビアン教授は著名な研究者です。彼の発表したメーラビアンの法則は、不確実性の高い内容のスピーチやプレゼンテーションにおける最終的な感銘度や共感度がなにに起因しているかを説いたものです。図2に示す通り、顔や服装、表情などの視覚からの情報が55%、声質やなまりなど聴覚からの情報が38%、話す内容はたった7%という結果でした。見た目で惹きつけられないと聴く気にならないでしょうし、聞き苦しい声のスピーチはできれば聞きたくないでしょう。制服が薄汚れてだらしない警官より、制服をきちんと着こなした警官の方が信用されやすいという研究論文もあるように、社会の中では相手を見た目で判断してしまう場面は少なくないと言えるでしょう。

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図2 メラビアンの法則の図

第一印象とは?

1日に多くの学生と面談を行う企業人事部採用担当は、どれくらいの時間で就職希望者の合否を判断するのでしょうか。一般的に面接は15分程度ですが、ひとりの学生に対するおおよその合否は最初の3分で決まるといいます。しかも、ぱっと見た瞬間の第一印象がその合否に大きく影響するようです。第一印象とはたったの7秒。好きか嫌いか、敵か味方かという極めてプリミティブな感覚です。「人は見た目じゃない」とも言いますが、本能的には見た目で判断してしまうからこそ、その戒めもあるかと思います。

では、第一印象として、私たちはいったい相手のどこを見るのでしょうか。調査によると8割の人が相手の顔をみるようです。2本脚で歩く人間の顔には多くの情報が集約されているわけですが、ある研究では、顔と髪形、服装は同じ程度に記憶に残るようです。刑事事件の犯人捜査などでもわかります。しかし、服装の色が奇抜だったり、髪形に特徴があったりなど、著しく人と異なる容姿の場合、その部分をよく記憶しているそうです。服装や髪形に際立った特徴があるときは、顔の細部はあまり記憶に残っていないようですから、一概に顔が中心とも言えません。要は、相手の見た目全体が第一印象となります。


表情によるコミュニケーション

私たちの顔には、38本の表情筋肉があります。人とのコミュニケーションにおいて顔の筋肉を使い表情をつくりますが、この表情の種類は人によって異なるようです。しかも、その表情は生後1歳までに大きく育まれ、表情の種類はいつもそばにいる母親(あるいは父親など)に影響されるといわれます。猿真似といいますが、赤ちゃんはいつも一緒のお母さんの表情を猿真似しながら、表情をつくることを覚えていきます。さらに微妙な表情は大人になってからも周囲の影響を受けるようです。ちなみに一緒に暮らしている夫婦は次第に顔つきが似てくるといわれます。「こんにちは」と声をかけられると「こんにちは」と返す挨拶と同じように、向けられた表情に近い表情を返すことで起こる面白い現象です。


顔つきは創られる

組織の上に立つ人に多い顔つきのひとつである「見下す顔」は、よく言えば堂々として自信のある印象です。業績上向きの環境下で、そんな上司の下で働く部下たちは安心して仕事に向かいます。しかし、業績が落ち込み、部下からの意見を吸い上げ何らかの改革を打ち出さないといけないときに、上司が始終見下す顔つきで部下と接していると問題です。部下たちは忌憚のない意見を上司に言いにくいため、生の情報が得られません。

一方で、「上目遣い」は、甘えか反抗心の表れといわれますが、言い換えれば自信のない印象です。自分の発言中に上目遣いで聴いている人を見ると、何か異論があるのかと気になるものです。パワーのある人から見ると思わず攻撃したくなる表情ともいわれ、パワハラを呼びこんでしまうこともありそうです。

これらの顔つきは日々の人間関係においてつくられる表情の積み重ねです。表情は都度変えることができますが、顔つきになってしまうとなかなか意識して変えられるものではありません。意図していないのに時に相手が負の情報を受け取り、それがコミュニケーションに影響を及ぼしてしまうとは、怖い話です。(図3)

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図3  見下す顔、上目遣い(※)

外見を変えることによる環境適応

女性は失恋すると髪を切る。とかく女性は心の変化に応じて髪形を変えるといわれます。一方、男性は女性ほど髪形を変えることはなく、50代になっても学生時代と同じ髪型の男性は少なくありません。ファッションにおいても同じです。仕事のとき、デートのとき、女友達との食事会、PTAの集いなどなど、あらゆるTPOに合わせて衣装をチェンジするのも男性より女性の方が多いようです。

歴史上の偉大な人物たちを見ると、自分の置かれた環境に合わせて、自分を演出した人物は多く、エリザベス一世は典型的な例です。王位継承の際に「私は大英帝国と結婚します」という言葉とともに顔を真っ白に塗りつぶし始めたという逸話があります。白は意匠学的には原点を表します。ゼロからスタートする自分をモチベーションするための装いだったのかもしれません。十数年前に流行った原宿女子のガングロメイクも自分へのモチベーション、あるいは、周囲へのデモンストレーションだったといえます。環境適応するために自らの見た目を変えるという行為、カメレオンが環境に合わせて体の色を変えるように、置かれた環境を生き抜くためのプリミティブな行為といえます。(図4)

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図4 エリザベス1世(※)

服装はかかわる人へのメッセージ

西洋社会の社交の場において、ドレスコードを守ることは主催者への敬意の表れであり、自らが恥じないためのマナーです。急な欧米化が進んだ日本では、マナーを知らないままに洋服文化が浸透してしまったため、ドレスコードのあるパーティでは戸惑う人も多いことでしょう。

とにもかくにも、第一印象の良し悪しを大きく左右する服装は相手に自分がどんな存在で、どういう気持ちで今あなたと向き合っているかを非言語で表現するためのツールです。まさに相手へのメッセージといえます。きちんとした服装は相手への敬意、カジュアルな服装はリラックスする場で自分も相手にも肩の力をぬいていただくためのメッセージになるでしょう。その都度、伝えたいメッセージを考えて衣装選びをすることが、これからの時代ますます必要になってくるはずです。

服装の中でもとくに大きなメッセージとなる色を軽視すると痛い目にあいます。最近では、ド派手なピンクのネクタイをして現れた人物の釈明会見が記憶に残ります。とにかく、謝罪会見は濃紺のネクタイ、決起大会などでは赤いネクタイというのが基本ルールです。毎朝、何気に選んでいるネクタイですが、相手にどんな影響を及ぼすのかを考えて身に着けることにより友好な相手との関係を築くことでしょう。(図5)

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図5 赤いネクタイと青いネクタイ

社会における非言語コミュニケーションの意味

ダイバーシティと言われる今、異なる価値観の人間同士が意見をぶつけ合いながら新たな成果物を生み出すことが求められています。いわば、コミュニケーションとは、相手との違いを知り、認め合い、それを活かしあうための相互理解が目的と言えます。

つまり、今の時代、これから先も人と同じ価値観である必要もなく、人と同じ装いである必要もありません。自分がどんな人間でどんな能力を持つのかを一目で相手に伝えるパッケージが必要不可欠です。自分の見せ方、外見をいかにデザインするか。自分の内面の個性を第一印象で相手にわかりやすく伝えるための髪形、服装、メイクアップ、表情、立ち振る舞い、さらには、滑舌のよい発声などの非言語コミュニケーションが重要視され、その上でわかりやすい言語表現で自己をアピールする表現力も必要なスキルとなるでしょう。

自分の外見を戦略的にデザインすることで、自分を客観視する力や自分を表現する力が備わり、さらには相手の外見からの情報を敏感に察知し、相手の内面を推測する想像力や洞察力を育み、よりよいコミュニケーションに繋がっていくはずです。次回から、少し踏み込んだパーソナルデザインのノウハウについて触れていきます。こうご期待!



【参考文献】
・エクマン&フリーセン 1975/1987 工藤力(訳編)『表情分析入門―表情の隠された意味をさぐる』誠信書房
・原島博 1998『顔学への招待』岩波科学ライブラリー62 岩波書店 p.16-21
・益谷真 1993 表情の発達『顔と心―顔の心理学入門―』サイエインス社 p.68-85
・Archer, D. 1980 How to expand your social inetelligence quantient. Evans. 工藤力・市村英次(訳)1988『ボディ・ランゲージ解読法』誠信書房
・Dimberg, U. 1982 Facial reaction to facial expressions. Psychophysiology, 19, p.643-647
・Mehrabian,A. 1981 Silent Message: Implicit Communication of Emotions and Attitude(2nd ed.). Belmont, CA: Wadsworh.
西田司ほか(訳)1986“非言語コミュニケーション”聖文社
【写真引用】
※ 図3・図4 唐澤理恵 2005『デキる上司の外見成功術』KKベストセラーズ
 


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