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Vol.22
UC-win/Road
DS 体験セミナー
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ・体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー有償セミナーを体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。
新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。
製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けしています。

【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp

●はじめに

建設ITジャーナリストの家入龍太です。
フォーラムエイトの3Dリアルタイム・バーチャルリアリティ(VR)ソフト「UC-win/Road」はもともと、複雑な構造やマーキング、標識を持つ日本の道路や交差点を3次元で設計するための支援ツールとして2000年5月に開発されました。

以来、このソフトには様々な機能拡張が行われ、ビルや公園などをリアルに再現したまちづくりの合意形成ツールやドライビングシミュレータ、そして津波や洪水、土石流などをリアルな3D動画として表現する災害シミュレータなど、幅広い機能を持つソフトとして進化を続けています。

特にドライビングシミュレータとしての性能は、道路設計を行う建設コンサルタントや、安全運転の方法を指導する公的機関のほか、自動車を開発する自動車メーカーにも高く評価されています。その結果、道路設計ではなく、その上を走るクルマ自体の設計のために使われる例が増えています。



●製品概要・特長

そこで開発されたのがUC-win/Road対応の「ドライブシミュレータプラグイン」という製品です。UC-win/Roadにも標準でドライブシミュレーション機能が備わっていますが、このオプションを使うと実際のクルマの構造に基づき、運転中の各部分の動きを精密に再現することができます。

飛行機のパイロットが訓練するときに使うフライトシミュレータは、飛行機の速度や気流、エンジンを制御するスロットルの反応、失速などをまるで実際の飛行機を操縦しているように体験できるようになっています。ドライブシミュレータプラグインは、そのクルマ版と言えるものです。

例えば「エンジン+伝達モデル」は、エンジンの回転をクラッチやトルクコンバーターを介して変速装置に伝え、さらに駆動装置を介して前後左右のタイヤを回すまでをモデル化しています。そのため、運転者がアクセルペダルを踏むと、エンジンの回転が上がり、トルクコンバーターや変速機が作動し、その結果がタイヤに伝わる、といった過程が実物同様に再現されるのです。


▲エンジンからタイヤまでの動力の伝達を忠実に再現した「エンジン+伝達モデル」

駆動装置にはカーブを通過するときに左右のタイヤの回転数を調整する「差動装置」が付いていたり、サスペンションのバネ常数や最大変位が設定されていたりするのには驚かされました。

また、道路とクルマの間の相互作用も精密にモデル化されています。路面とタイヤの間の摩擦係数を考慮して、加速時にはタイヤ1本ごとにかかる力と車両の質量から加速度を計算しています。もちろん、路面が乾燥しているとき、ぬれているとき、凍結しているときで摩擦係数は変わります。

このほか、ブレーキを思いっきり踏み込んだときにスリップしない「アンチロックブレーキシステム(ABS)」のあり、なしが設定できるほか、エンジン音、風切り音、路面材料による転がり音、周辺車両のエンジン音など、リアルな音響システムも備えています。

▲「アンチロックブレーキシステム(ABS)」のあり、なしによる結果の違いも再現

●体験内容

筆者は4月18日にフォーラムエイト東京本社で開催された「UC-win/Road DS体験セミナー」に参加しました。講師を務めたのは、フォーラムエイトVR開発Groupのコードヒー・ヨアン氏です。また、宮崎支社からはペンクレアシュ・ヨアン氏がオンラインで講師を務めました。
この日のセミナーには、研修中のフォーラムエイトの新入社員も参加したため、セミナールームはほぼ満員となりました。

 
▲講師を務めたフォーラムエイト
VR開発Groupのコードヒー・ヨアン氏
▲道路の作成などを実習する受講者

午後1時30分に始まったセミナーではまず、「ドライブシミュレーションオプション」の製品概要や、UC-win/Roadでの道路や切り土・盛り土、駐車場といった道路データの作成を学んだ後、車両運動モデルの説明と設定方法を学びました。その後、10分間の休憩をはさみ、いよいよドライビングシミュレータの体験です。


▲切り土・盛り土の作成機能

まずはシナリオ機能です。気象の変化や歩行者の飛び出しなど、運転中の起こる様々な出来事を「条件」と「アクション」によって運転者に体験させる機能です。いろいろな交通状況に対して、運転者の反応を分析したり、意見を聞いたりするために使います。

リプレイ機能は、ある運転者がとった行動をVRのすべての要素によって丸ごと記録するものです。普通のビデオ録画と違うのは、運転室から見た風景だけでなく、社外や対向車からの視点でクルマの動きを何度も検証できることです。例えば安全運転の練習を行う運転者は、自分の運転が歩行者や他のクルマからどのように見えるのかを客観的に確認できるので、大変、参考になります。

運転中にクルマから排出されるCO2は、旅行時間、旅行距離、車速変動特性の3つの要素から計算することができます。「エコドライブプラグイン」というオプションを使うと、運転中に発生するCO2を、ドライビングシミュレータで運転したときの記録(ログ)から計算できます。省エネ運転の訓練や車両開発などに役立ちます。

セミナーではこのほか、車両や歩行者、部品など3Dモデルで表現できる個別の要素ごとにシミュレーションできる「マイクロ・シミュレーション・プレーヤー」や、ネットワーク経由でチャットや打ち合わせができる「コミュニケーションプラグイン」などについても学びました。

 
▲フロントガラスを伝って流れる雨水の表現   ▲一度の運転をいろいろな視点から
何度も検証できる「リプレイ機能」

次はいよいよ、ドライビングシミュレータを実際に体験する番です。フォーラムエイト東京本社のショールームには、クルマの運転席やダッシュボード、ミラーなどを本物そっくりに再現した大小様々のドライビングシミュレータが置かれています。セミナー室から出てきた受講者は、フォーラムエイトの社員の説明を受けながら、思い思いのマシンに乗り込んで、リアルな運転体験を楽しんでいました。


▲フォーラムエイト東京本社のショールームを使ったドライビングシミュレータの体験

こうして、UC-win/Roadのドライブシミュレータプラグインの機能を体で体験した後は最新機能を学びました。複数の人が別々のクルマを同時に運転したり、歩行したりできる「マルチユーザ機能」や、先行者との距離により車速や車間距離を制御する「自動運転機能」、現在の交通状況を記録して、何回でもその状態から再開できる「交通スナップショット機能」などです。

最後にドライビングシミュレータの今後の開発方針と質疑応答が行われました。


●イエイリコメントと提案

自動車メーカーがクルマの開発にドライビングシミュレータを使うメリットは、いくつもあります。まず、事故を再現する実験や訓練でも安全に行えること、同じ条件下で何度も繰り返し実験できること、天候や時間に制約されず、スピーディーに実験できることなど、数えきれません。

これらのメリットが生まれる根源は、クルマや道路の構造、交通流、気象などの「実物」と、VRやドライビングシミュレータという「情報」とを一致させる“情物一致”にあるように思います。

クルマの動きや道路の状態をデータ化して数値化する方法はこれまでもありましたが、これらを統合し、実物そっくりのモデルデータで再現することはなかなかできませんでした。それが情物一致できるようになったのは、UC-win/RoadというVRソフトのおかげと言ってもいいでしょう。

情物一致が実現することにより、実車を使った実験を、情報を使った実験に置き換えることができます。自動車業界では建設業界より10〜20年も早く、3Dによる設計手法が普及してきました。かつて新車の開発作業では何台も試作車を作って衝突実験を行うなど、費用と時間がかかる作業が必要でした。それが、コンピューター上のシミュレーションで置き換えられるようになり、新車の開発スピードがぐんとアップしました。

建設業界では建物や土木構造物を3Dモデルで表現するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の活用が、設計段階から施工段階、そして維持管理段階に普及しつつあります。

施工段階からは、実物の建設資材とBIM/CIMデータが併存することになります。ここで情物一致に基づいた施工管理や維持管理を行うことこそが、BIM/CIMを活用する最大のメリットになります。

ドライビングシミュレータは、道路とクルマの両方について情物一致を実現できるツールです。現在、自動車メーカーで急速に開発が進んでいる自動運転車の開発や、その性能をさらに引き出せる道路やレーンなどの開発にますます使われるものなるでしょう。

●今後の展望

セミナーの最後に説明された今後の開発方針でも、さらなる“情物一致”のメリットを追求する方向性がうかがえます。例えば、クルマの車両挙動や、3Dレーザースキャナーで計測した点群データを使った道路や街並みのモデリング機能、歩行者とクルマを統合した交通・環境シミュレーション機能、そして様々な機器や計測器、解析ソフトなどの統合性などです。

これまでもUC-win/Roadのドライビングシミュレータ機能は、運転者が戸惑いにくいインターチェンジの設計などに使われています。今後はCIMとの連携をよりスムーズにするとともに、何万〜何十万回に1回というまれに起こるような事故の確率なども、定量的に算出できるようになると、長期的に安心な設計ができると思います。

様々なメリットを生み出す“情物一致”を実現するシステムとして、UC-win/Roadやドライビングシミュレータはまだまだ活用の範囲が広がりそうです。


▲今後の開発方針。“情物一致”をさらに拡大する方向性が示されている



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