食物の7大栄養素(図1)の中で、最近特に注目されているのが脂質とフィトケミカルかもしれません。脂質は生物から単離される水に溶けない物質の総称です。単純脂質である中性脂肪(トリグリセライド)やセラミド、複合脂質
であるリン脂質、糖脂質 、リポタンパク質や誘導脂質のコレステロールがあります。よく私たちが使う脂肪(fat)という言葉は脂質の中でも動植物に含まれ、通常食事で摂取するもので中性脂肪・コレステロール・脂肪酸・リン脂質の4つを意味します。
過剰な脂肪の摂取と運動不足がメタボリックシンドロームへとつながることは周知のことです。酸化を受けやすい食品として脂肪に注意が必要です。食品の酸化だけでなく“酸化”が何故身体にとって悪影響を及ぼすのか?人は毎日500リットルの酸素を体内に取り入れています。体内のミトコンドリアでたえず酸素を消費していますが、これらの酸素の一部は代謝過程において活性酸素に変換されます。活性酸素は防御機能などに関与していますが、余剰な活性酸素は酸化ストレスとなり、脂質、蛋白質・酵素や、遺伝子を酸化し損傷を与え、慢性炎症と関係していきます。
近年、動脈硬化や高血圧、認知症、うつ病、糖尿病、アレルギー性疾患、がんなど、さまざまな病気を引き起こす要因として問題になっているのが、慢性炎症です(図2)。
慢性炎症がメンタルに影響し、特にうつ病やアルツハイマー病の発症に関与することが報告されています。また睡眠不足などの睡眠障害では慢性炎症の存在、炎症性サイトカインのIL-6の変動が報告され心の病気につながっています。炎症は細菌やウイルス、紫外線など外的侵襲だけでなくあらゆるストレスに対する身体のもつ最も基本的な生体防御反応です。慢性炎症は身体が日常受けているストレスに対して反応した結果、くすぶるような形で徐々に、時間をかけて形成される病態です。日々の生活の中で抗酸化と抗炎症の食事をとることはストレスマネジメントにもなるのです。どのような食事がストレスや心の病気の予防によいのか“食について”考えてみましょう。
“いろどり”のいい食事
植物は紫外線から遺伝子を守るために豊富な抗酸化物質を備えています。そのため最近では、植物由来の化合物や栄養素であるフィトケミカル(植物化学物質)のもつ抗酸化作用が着目されています。フィトケミカルは1万種類(β-カロテン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサイシン、アスタキサンチン、ケルセチン、エリオシトリン、クルクミン、アントシアニンなど多数)あり、1つの野菜に数百種類含まれています(図3)。
野菜はそのほかにもビタミン、ミネラル、食物繊維、糖質を含んでいるので、野菜を栄養素として摂取することがいかに重要であるか理解できます。
”My plate”栄養素は4等分
2011年に米国農務省が発表した“My plate”という考え方が有用です。My plateとは、一つの大きな皿を四等分し、それぞれ穀物類、たんぱく質、果物、野菜を盛りつけることを想定した図で、食事の献立の理想的なバランスを表しています。
このMy plateをもとに食材のバランスを調節すれば、野菜と果物が自然に一食の半分を占めるので、彩り豊かでフィトケミカルが多い、優れた抗酸化食、抗炎症食の献立になるのです。なお、穀物類は、全粒粉のパンや玄米をおすすめします。栄養バランスについては、中国の陰陽五行の考え方も参考になります。陰陽五行の考え方は、葉(葉物野菜)・根(根菜類)・海(魚介類・海藻)・豆(豆類)・肉(肉類)の五種をまんべんなくとるというものです。
ω-6系脂肪酸を減らしω-3系脂肪酸を増やす
脂肪、特に食事の油から摂取する脂肪酸のとり方が重要です。脂肪酸は化学構造上の呼び名で飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、さらに不飽和脂肪酸に一価、多価(ω-3脂肪酸やω-6系脂肪酸など)があります。慢性炎症を悪化・促進させる食品として、ω-6系脂肪酸であるリノール酸は大豆油やサラダ油、コーン油、ベニバナ油、マーガリンなどは植物油に含まれています。
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