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弾塑性地盤解析(GeoFEAS) 2D   計算事例との比較検証報告
('09.09.07)
GeoFEAS2D Version 2は、「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」(以下、指針(案)と称す)に基づき大規模地震に対する堤防の安全性の評価を行う機能が拡張されました。指針(案)に基づき、レベル2−1及びレベル2−2地震動に対して、液状化に伴う土層の物性の変化を考慮し、堤防の変形を静的に算定できる方法を用いて、堤防の耐震性能を評価します。「平成19年河川構造物の耐震性能照査指針(案)」では解析の手順や主な計算式およびグラフは定められておりますが、有限要素法を用いて解析する性質上、モデル化や条件設定などについてユーザーに判断が委ねられている部分があります。そのためGeoFEAS2Dは多様な入力方法、たとえば上載圧の計算方法などについては複数の選択肢を設け、ユーザーが判断して入力できるようになっております。

既にご活用されているユーザーから既存の解析事例について、GeoFEAS2Dを用いた場合の結果と比較した資料が欲しいとのご要望がありました。今回、以下に3つの解析事例についてGeoFEAS2Dを用いた場合と比較検討した結果を報告します。

  (1) サンプルデータの 計算事例01について比較結果
  (2) 微少抵抗領域ひずみの設定による影響 : 計算事例-09の検証報告
  (3) マルチステージ設定をした比較検証 : ○○○樋管の検証報告

 ■ GeoFEAS2Dの耐震性能照査指針対応内容の流れ

基礎地盤の変形解析部分を示したものが、下図になります。有限要素法を用いた自重変形解析では、
  (1)地震前(液状化前)の変形解析
  (2)地震後(液状化時)の変形解析
を行います。両者の差分が、液状化による変位量ということになります。
また、この解析方法では、
  (3)液状化層の体積圧縮に伴う沈下量(変形解析)
については考慮されないため、液状化層の体積圧縮に伴う沈下量を別途算定し、合算することで、堤防全体の変位量を求めます。
GeoFEAS2Dにおいても、上記の(1)〜(3)の3ケースについて解析を行うことになります。


 ■ 入力パラメータやステージ設定などの条件設定について

公表されている解析結果とGeoFEAS2Dによる解析結果を比較する場合、入力パラメータやステージ設定の違いなどによって両者の値に微妙な差異が発生することがあります。下図に示すように今回検討で着目したステージ設定、上載圧σvの計算、微小ひずみ領域の設定のそれぞれ2通り、3通り、2通りの設定ができます。組み合わせはそれらを掛け合わせた積ですから12通りの設定が可能となります。それ以外に多くのパラメータについて何通りかの設定が可能ですから、さらに多くの組み合わせがあることになります。

具体的に以下に3事例について入力パラメータや解析手順について何通りか設定を変えて試算したところ、公表されている解析結果とGeoFEAS2Dの解析結果とはほぼ等しい答えを出すことがわかりました。

1つの事例では、上載圧の計算方法をN値採取位置の平均値を採用するか、該当地層の上載圧平均値をとるかといったスイッチを切り替えることによっても計算結果に差が生じました。また、2つ目の事例では微小ひずみ領域の設定によって沈下量に違いが生じました。さらに3つ目の事例では、マルチステージによって初期応力解析をするかどうかでも結果が違ってきました。そのため、解析結果だけを見て同じ結果をGeoFEAS2Dを用いて出力するかどうかは、入力パラメータやステージ設定によっても違いが発生することがあるため、入力時に同等な条件設定をする必要があります。

 ■ 入力条件設定による組み合わせ



図 1 入力条件設定による組み合わせ


 ■ 上載圧の平均の取り方によるFL分布の違い

図 2 上載圧の平均の取り方によるFL分布の違い

GeoFEAS2Dは「上載圧の計算方法」として以下の4通りを選択することができます。サンプルデータのFL値分布を左図に、今回の検討で2を選択した場合のFL値を右図に示します。上載圧σvの平均の取り方がFL値に影響していることがわかります。FL値が異なると液状化時のせん断剛性G1の値に影響するため最終的に地盤変形量に違いが生じます。

1. 直接入力
2. 標準貫入試験実施位置の要素におけるY方向の応力の平均値
3. 材料番号で認識されたブロック内のY方向における応力の平均値
4. 材料番号で認識されたブロック内で、Y0_SPTより定義される標準貫入試験実施深度に位置する全ての要素におけるY方向の応力の平均値


 ■ 計算事例-01の変形図とGeoFEAS2Dによる変形図(レベル2−1)

計算事例-01 GeoFEAS2D


(a)非排水条件における変形図 液状化stage2による変形図




(b)液状化層の体積圧縮による変形図 体積圧縮stage3による変形図





(c)合計変形図 合計変形図

図 3 計算事例-01 レベル2-1地震動による変形図


 ■ 計算事例01の変形図とGeoFEAS2Dによる変形図(レベル2−2)

計算事例-01 GeoFEAS2D

(a)非排水条件における変形図 液状化stage2による変形図




(b)液状化層の体積圧縮による変形図 体積圧縮stage3による変形図





(c)合計変形図 合計変形図

図 4 計算事例-01 レベル2-2地震動による変形図


 ■ サンプルデータの 計算事例01について比較結果

GeoFEAS2D Version2には「計算事例-01.GF2」のサンプルデータが添付されていますが、上載圧の計算方法を見直して「2.標準貫入試験実施位置の要素におけるY方向の応力の平均値」に変更しました。その結果、以下の通りとなります。

●レベル2-1
   計算事例-01 : 液状化時天端沈下量163.0cm + 体積圧縮38.3cm = 201.3cm
   GeoFEAS2D  : 液状化時天端沈下量164.9cm + 体積圧縮35.6cm = 200.4cm

●レベル2-2
   計算事例-01 : 液状化時天端沈下量171.4cm + 体積圧縮38.3cm = 209.7cm
   GeoFEAS2D  : 液状化時天端沈下量172.8cm + 体積圧縮35.6cm = 208.4cm

天端沈下量の比較(単位:cm)
  レベル2−1 レベル2−2
  計算例 GeoFEAS2D 違い 計算例 GeoFEAS2D 違い
計算事例-01 201.3 200.4 0.4% 209.7 208.4 0.6%


 ■ 微少抵抗領域ひずみの設定による影響

GeoFEAS2Dでは微少抵抗領域ひずみを入力するか、プログラム内部で自動計算するか切り替えることができます。微少抵抗領域ひずみは、バイリニアの応力ひずみ関係において液状化時のせん断剛性G1(液状化時のτ-γ関係の傾き)が、回復剛性G2に変化する境界となるひずみを意味します。この値の設定によって実際に計算に用いるせん断剛性が変わってきます。

微少抵抗領域ひずみは下図にしめすように室内試験結果から求められていますが、両対数グラフに室内試験結果をプロットしてプログラムで使用する回帰式が求まっています。そのため、室内試験結果のない大ひずみ領域においては推定値となるので、一度解析してみた結果に現実的ではない変形が生じていないかどうかなど解析結果を評価することも必要となります。

今回の計算事例-09に関する検討では、微少抵抗領域ひずみを変化させてみて既存の解析結果との比較を試みました。



せん断ひずみが、微小抵抗領域ひずみ(γL)を超過した場合は、せん断弾性係数をG2に補正します。





G2 : 液状化時の回復せん断剛性
γL : 微小抵抗領域ひずみ(%)


微小抵抗領域ひずみとせん断剛性 G1,G2の関係

「液状化に伴う流動の簡易評価法」、安田ほか、土木学会論文集 No.638/III-49, 71-89, 1999.12


 ■ 微少抵抗領域ひずみの設定による影響:計算事例-09の検証報告

河川耐震地盤解析について 計算事例-09 を対象に比較した。GeoFEAS2Dにおいては、液状化層のプロパティ設定においてレベル2-1では微小抵抗領域ひずみ33%、レベル2-2では微小抵抗領域ひずみを40%に設定しました。

●レベル2-1

   計算事例-09 : 液状化時天端沈下量体積圧縮 = 115.0cm
   GeoFEAS2D  : 液状化時天端沈下量 + 体積圧縮 = 115.2cm

●レベル2-2

   計算事例-09 : 液状化時天端沈下量 + 体積圧縮 = 122.0cm
   GeoFEAS2D  : 液状化時天端沈下量 + 体積圧縮 = 119.0cm


以上の結果から、レベル2-1、レベル2-2ともに、GeoFEAS2Dの方が、液状化時天端沈下量+体積圧縮沈下量でそれぞれ、ほぼ等価であり問題の無い範囲であると思われます。変形図を以下に示します。


ALID GeoFEAS2D



レベル2-1 地盤変形図(メッシュ変形図) レベル2-1 地盤変形図



レベル2-2 地盤変形図(メッシュ変形図) レベル2-2 地盤変形図


 ■ マルチステージ設定による影響

液状化時の地盤変形解析では、現地盤の変形係数を用いた自重解析と、液状化時の変形係数(せん断剛性)を用いた自重解析の変形量の差をとることで、液状化による変形量となります。したがって、現地盤の自重解析による変形量を求めるときに、現状の地形でモデルを作成することが基本になります。

一方、通常の盛土による道路や鉄道や河川堤防の建設、擁壁背面の埋め戻し、土留め掘削、トンネル掘削等のような地盤問題では、地盤領域が変化するために、施工ステップを追ってマルチステージ解析が必要となるので、液状化以外の場合はマルチステージ解析を行うことが通例となっています。マルチステージ解析をおこなった場合と一括で解析した場合の変形量の違いを下図に示します。マルチステージ解析の場合は、施工ステップが後半になると1ステップ分の盛土による変形量が小さくなるので変形の分布としては小さくなり、一括の場合は全部の盛土が一度にかかるので天端が大きく沈下します。



石原研而:土質力学、1988年、pp.226-227.

GeoFEAS2Dでは液状化の解析と通常の解析を行うことができます。プログラムとしては両者を混在してマルチステージ解析を設定することも可能になっています。しかし、液状化時の地盤変形解析では土の変形係数(せん断剛性)の変化による一括にかける自重変形量が基本となっているので、マルチステージ解析を混在させて設定して応力状態も変えるとモデルとして異なるものの差を取ることになります。


地震前の変形解析

自重を一括に作用し、変形を求める。(○) 施工ステップを考慮し、マルチステージ解析を行い、
変形を求める。(×)


 ■ マルチステージ設定をした比較検証 : ○○○樋管の検証報告

既往の解析事例を参考にするとマルチステージ設定をしている場合もあります。GeoFEAS2Dで敢えて事例に合わせてマルチステージ解析を行い自重解析し、その後液状化解析をした場合の比較検討を以下に示します。

●レベル2-1
  ALID : 液状化時床付面沈下量 + 体積圧縮 = 166.4cm
  GeoFEAS2D : 液状化時床付面沈下量 + 体積圧縮 = 169.3cm


○○○樋管の事例 GeoFEAS2D



レベル2-1 変形(過剰水圧消散後) レベル2-1 地盤変形図


レベル2-1 残留沈下分布(設計床付け面) 床図付け面位置における沈下量


 ■ まとめ

計算事例-01、計算事例-09および○○○樋管の3断面についてALIDで実施した解析結果とGeoFEAS2Dによる解析結果とを比較しました。

計算事例01については、Version2をリリース時にサンプルデータとして添付してあります。サンプルデータをそのまま解析すると、体積圧縮量については20%近く計算事例と差があると指摘されました。上載圧の計算方法を変えた場合(N値位置で上載圧を計算する)は、体積圧縮量については8%の違いに縮まり、全体としての沈下量はほぼ等しい結果となりました。

計算事例09については微少抵抗領域ひずみの設定を調整をして計算事例の全体沈下量と比較しました。その結果、レベル2−1で0.2%の違い、レベル2−2で2.5%の違いとなりました。

○○○樋管の場合は、マルチステージ解析によって施工手順に従って初期応力解析をしているため、敢えてGeoFEAS2Dでも同様な取り扱いをしました。その結果、レベル2−1について見ると1.7%の違いでありほぼ同等の地盤変形量となりました。

以上の比較検討において、ALIDの解析結果とGeoFEAS2Dの解析結果とはほぼ等しい答えを出すことがわかりました。公表されている資料や既往の解析事例と比較する場合、モデル化や入力パラメータおよびステージ設定によって異なる値が求まることもあるので、比較対象の解析内容を十分に把握して同じ条件設定をすることも必要になってきます。

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