はじめに
弊社では、新土工指針発刊以前より土工指針の改訂に対応すべくプログラムの対応を検討しておりましたので、今回の改訂に伴いプログラム自体が対応すべき内容はまたその対応は以下に記述する通りになっています。各内容についてはプロダクト毎に説明します。
今回の改訂により改訂された土工指針は2編の指針を全面改定し分冊し4編になっております。
この改定で、各タイトルは以下のようになりました。
共通する変更点は、SI単位の導入により、従来単位との併記になっている点です。
- 「道路土工−のり面工・斜面安定工指針」
・景観設計の考え方を導入している点。
・法面安定工法の設計施工方法を拡充した点。特に発展する補強工法に追記が見られる。
・地滑りなどの対策調査方法を追記。表層滑りの記載。
・耐震設計に関する記載を充実させている。
- 「道路土工−仮設構造物工指針」
・掘削深さの適用範囲を30mまでとした。
・鋼管矢板壁、柱列式連続壁、地中連続壁などの高剛性壁体の設計施工法を記述している。
・弾塑性法による設計を記載した。
・耐震性を検討する際の構造細目を規定した。
・仮設構造物の施工記述を充実している。
・壁の種類の増加
・支持力は壁の種類ごとに規定
・掘削底面の安定に関する変更
・火打での曲げを考慮した検討
- 「道路土工−カルバート工指針」
・新工法、新技術の記載が追記された。
・車両の大型化による設計荷重が見直された。
・土被りの適用深さを20Mまでに拡大し計算式の見直しを行った。
- 「道路土工−擁壁工指針」
・耐震設計の考え方が、淡路・兵庫南部地震の経験などから充実された。
・風荷重など他の基準によっていたものが明記されている。
・特殊擁壁工の記述が増えた。特に昨今の軽量盛り土材や繊維補強のの考え方が追記されている。
・補強土擁壁に付いても設計法が新たに記載されておいり、道路構造物としての明確な使用が可能となる。
・防災記述が参考文献として追記された。
弊社の基本方針は、共通のプロダクトでは、道路橋示方書を優先し、個別のプロダクトでは、
土工指針に対応する考えです。
この各編毎でSI単位系への移行により「許容応力などの統一が完全にできていない部分」や「数値が
変わっているもの」がありますので、この内容も盛り込み以下対応を説明します。各基準類で扱いに相違がある場合の基本方針は、共通のプロダクト(UC-winなど)では、道路橋
示方書を優先し、個別のプロダクト(UC-1forWindowsなど)
では、 土工指針に対応します。
この各編毎でSI単位系への移行により「許容応力などの統一が完全にできていない部分」や「数値が
変わっているもの」がありますので、この内容も盛り込み以下対応を説明します。
第1章 共通事項
擁壁、カルバート、土留め工の各指針において共通する改訂事項とUC−1、UC−Winの対応方針は以下のとおりである。
1.国際単位の併記
今回の土工指針の改訂版では国際単位が併記されている。(ただし、国際単位が主、従来単位が従である。)
「建設事業における国際単位系(SI)移行ガイド」によれば、移行のスケジュールは以下のようになっている。
5.1 SI移行のスケジュール
農林水産省、運輸省、建設省では、平成11年(1999年)4月1日より国際単位系(SI)へ移行する方針の為、今後は以下のように対応していきます。
(1)業務委託の成果品
@平成11年4月1日以降に完了する業務委託における設計図等の表示単位
SI単位を使用するものとする。(従来単位を併記してもよい。)
弊社ではSI単位系への移行に伴い、SI単位系で計算する版と、従来単位系で計算する版に分け供用してきました。が、今後は、両単位系を検討できるSI単位従来単位供用版として両単位系の計算可能なプログラムとしていきます。どちらの単位系でも一貫して入力から出力まで同じ単位系でのみ行えるものとし、結果などを両単位の値を併記するものとはいたしません。(出力時や途中で単位を替えて検討したい場合には単位を切り替えれば、すべての値が切り替えられる)これは今後完全にSI単位系に移行することが解っているからで、その仕様の必然性が無くなると考えるからでもあります。
これは以下の理由によるものです。
@1つの物理量(例えば、土の単位体積重量)に対して、従来単位と国際単位の2つの値を持つことになり、厳密な意味で併記しようとすれば、2組のデータに対して同じ計算を行い、その結果をまとめなければならない。
A現行のUC−1のように途中経過まで出力するとすれば、数値を代入する書式を2行に増やす必要があるが、労力の割には意味のない仕事である。
例えば、アスファルト 0.3m、路盤 2.0m 鉄筋コンクリート厚 0.5m のときの荷重は
|
W =
= |
0.3x2.30 + 2.0x1.8 + 0.5x2.5 = 5.54(tf/m2)
0.3x22.5 + 2.0x18 + 0.5x24.5 = 55.0
(kN/m2) |
Bこれらを回避しようとすれば、最後の結果だけに換算係数を乗じることになるが、これも余り意味のないことである。上の例に適用すれば、以下のようになる。
|
W = 0.3x2.30 + 2.0x1.8 + 0.5x2.5 = 5.54(tf/m2) 54.3{kN/m2} |
上の例において、路盤の単位重量を国際単位で17.6とすれば、54.2(kN/m2)となり値は近づくが、値を合わせることが本質ではない。
C併記の必要性がどこにあるかを考えると、これまで親しんだ単位に換算して自分の感覚の世界で判断することを助けること以外に思い当たらない。このように考えると上記のBを行えば十分である。であれば、換算した値を記入すれば済むことである。
第2章 擁壁工
擁壁においては補強土工法などが実績があるものとして指針に盛り込まれたが、ここでは、現在UC−1、UC−winがサポートしているものについてのみ改訂点とその対応を検討する。
擁壁について調査したところ、 基準に準拠しており全く問題がありません。風荷重などについての記載もありますがプログラムでは任意荷重入力で対応しています。
第3章 カルバート工
BOXカルバートに関する改訂点とその対応について検討する。
BOXカルバートについて調査したところ改訂された点は以下のとおりである。荷重強度に関するところは数年前の荷重の変更のときに先取りされている。
@主鉄筋のいわゆる段落としが1/2から1/3以上となっている。
A鉄筋の定着位置が抵抗曲げモーメントからのみ定義されるようになった。
・SI単位系における許容せん断応力度が換算係数10で従来単位から計算することになっています。(雑誌 道路1995.5に記載)
・PHC杭のヤング係数を、入力出来る機能を設けていますが、擁壁工指針同様Ec=4.0E4(N/mm2)に対応しました。
杭体照査は行っておりませんので、有効プレストレスに対する影響はありません。
・なお、コンクリートの許容せん断応力度τa1(SI単位系時)は、カルバート工と擁壁工で同じになりました。(雑誌 道路1999.5に記載)
σck |
SI単位(N/mm2) |
従来単位(kgf/cm2) |
21 |
0.36 |
3.6 |
24 |
0.39 |
3.9 |
27 |
0.42 |
4.2 |
30 |
0.45 |
4.5 |
第4章 土留め工
土留め工の改訂とその対応予定 平成11年5月現在
- §1 主な改訂内容
- 1)掘削深さと計算方法
2)慣用法における切り梁撤去時の検討
3)小規模掘削の計算方法
4)自立式土留め工の計算方法
5)地盤の水平地盤反力係数の算定
6)偏土圧を受ける場合の検討
7)壁の種類の増加
8)支持力は壁の種類ごとに規定
9)掘削底面の安定に関する変更
10)火打での曲げを考慮した検討
- §2 慣用法の対応
- 1)小規模土留め工
2)自立式土留め工
- §3 弾塑性法の対応
- 1)現行版でサポートしている側圧および地盤反力係数の考え方
2)現行版でサポートしている側圧の組み合わせ
3)土工指針(改訂原案)での考え方
4)対応方針
- §4 偏土圧が作用する場合の照査
- 1)全体の安定照査
2)部材の照査、弾性領域の確認
3)対応方針
§5 参考:現在の土留め工win版との相違点について
§1 主な改訂内容
1)掘削深さと計算方法
掘削深さとそれに対応する計算方法は以下のとおりである。
掘削深さ |
計算方法 |
|
H≦3m |
慣用法 |
小規模土留め |
3m<H≦10m |
慣用法 |
近接施工の場合は弾塑性法によって変位を求める |
10m<H |
弾塑性法 |
軟弱な地盤については H≧8m |
但し、自立式は3M以下とし弾性床上の梁理論で計算するものとする。
2)慣用法における切り梁撤去時の検討
切り梁撤去時についてはこれまで盛り替え切り梁や既設切り梁の分担力の算出の考えが明かではなかったが、1段撤去の場合についての考え方が明記された。
盛り替え梁以外の場合の計算方法はその記述がないためこの考え方に準拠するものとする。
3)小規模掘削の計算方法
切り梁工法の場合においても、いわゆる根入れ長決定用の土圧を用いて断面の照査を行う。
3M位浅のモデルを扱い最小根入れは掘削深さの1/2とする。
4)自立式土留め工の計算方法
○根入れ長:
従来は壁体の先端において受働土圧による回転モーメントと主働土圧による回転
モーメントがつり合うように根入れ長を定めていたが、今回の改訂では以下で算定
される根入れ長のうち最大のものを根入れ長としている。
@ 最小根入れ長 掘削深さ3m以上では3m、3m未満では掘削深さと同等
A Lo= 2.5/β
○断面計算:
従来はつり合い点を固定点とした梁に、主働土圧と受働土圧を作用させて曲げモーメントを算出していたが、弾性床上梁理論のにより算出することになった。
5)地盤の水平地盤反力係数の算定
従来必ずしも明確でなかったが、親杭式と連続壁体で補正係数を変えて統一的に算定できるようにしている。
6)偏土圧を受ける場合の検討
全体の安定の照査と壁体および切り梁の照査を行うように規定されている。
§2 慣用法の対応
中規模の切り梁式土留め工に関しては大きな変更点は見あたらないが、自立式土留め工と新たに追加された小規模土留め工への対応が必要である。
1)小規模土留め工
3m未満の切り梁が1、2段の土留めに適用される。
変更すべき点
@断面力の算定用の土圧をランキン=レザールの式で算出する。
A最小根入れ長を掘削深さの1/2とする。
B仮想支持点の最小位置は最小根入れ深さの1/2とする。(仮想支持点の位置は
最小根入れ深さの1/2の点より上に仮定してはならない。)
2)自立式土留め工
現行版で弾性床上梁理論がサポートされているので、根入れ長に関する見直しだけで対応できると思われる。この他に、地盤反力係数の算定がサポートされると良い。
§3 弾塑性法の対応
1)現行DOS版でサポートしている側圧および地盤反力係数の考え方
- @現行DOS版でサポートしている主働土圧(背面側側圧)
- a)側圧強度を掘削段階毎、地層毎に直接入力する
b)側圧係数を掘削段階毎、地層毎に直接入力する
c)ランキン=レザール式を適用する。砂質土、粘性土とも土水圧分離
d)クーロンの式を適用する。砂質土、粘性土とも土水圧分離
e)砂質土の場合:ランキン=レザールの式を適用する。
粘性土の場合:掘削深さに応じて土圧力を算定する。(共同溝指針)
f)基本的には上記と同じ考え方であるが、掘削底面が砂質土の場合それ以深の粘
性土については、上記土圧強度の第1項にランキン=レザールの式を適用する。(下水道事業団)
g)砂質土の場合:クーロンの式を適用する。
粘性土の場合:掘削深さに応じて土圧力を算定する。(首都高速道路公団)
e、f、gは砂質土は土水圧分離、粘性土は非分離
- A現行DOS版でサポートしている静止土圧
- a)砂質土の場合:土圧係数(1−sinφ)で土水圧分離
粘性土の場合:N値に応じた土圧係数を設定、土水圧非分離
(道路協会共同溝指針、下水道事業団)
b)砂質土の場合:土圧係数(1−sinφ)で土水圧分離
粘性土の場合:N値に応じた土圧係数を設定、ただし、各段階での掘削深さと
掘削幅を考慮する。土水圧非分離(首都高速道路公団)
- B現行DOS版でサポートしている受働土圧(掘削側側圧)
- a)ランキン=レザールの式を適用する。
b)クーロンの式を適用する。土圧と水圧を分離するか否かは背面側側圧の考え方に依存する。
- C現行DOS版でサポートしている地盤反力係数
- a)ひずみ依存型:土留め壁の変位量より求める。
b)形状依存型:換算載荷幅より求める。
2)現行DOS版でサポートしている側圧の組み合わせ
背面側側圧を側圧強度または側圧係数で与える場合を除き、背面側側圧の適用式
と掘削側側圧の適用式とは一致していなければならない。したがって、設計の考え方を指定(側圧の考え方等を指定)すると入力しても、背面側にクーロンを掘削側
にランキン=レザールを適用することは不可能である。
3)土工指針での考え方
弊社では、現在の共同溝指針では、「地下水位以下を土の水中重量で評価する」と考え新土工指針では、「地下水位以下は間隙水圧を差し引く」と考えていると判断しています。
@背面側側圧
砂質土の場合:ランキン=レザールの式を適用する。
粘性土の場合:掘削深さに応じて土圧力を算定する。
A静止側圧
砂質土の場合:土圧係数(1−sinφ)で土水圧分離
粘性土の場合:N値に応じた土圧係数を設定、土水圧非分離
B掘削側側圧
クーロンの式を適用する。砂質土の場合は間隙水圧を考慮して土圧と水圧を分離
する。粘性土は非分離とする。(現行版でもサポート。ただし、壁面摩擦角δの設定に改良が必要)
C地盤反力係数
形状依存型で、換算載荷幅を壁体の種類に依らず10mとし、親杭か連続壁体の
違いは補正係数ηでカバーしている。
4)対応方針
@側圧の算定方法を見直しを行う。
A側圧の組み合わせの制限をなくす。
B壁面摩擦角を内部摩擦角の1/2にするか1/3にするかを指定します。
C残念ながら土留め架構弾塑性法では「親杭」については、初期版ではサポートしません。
また、本プログラムから、掘削時、プレロード時を同一モデルで一貫して解析する方法を採用します。これは、「土木研究所資料第2553号」の考え方によるもので土留め壁背面にも掘削側と等価な弾塑性バネを考慮するというものです。土工指針P104の4行目の記述に対応しています。
§4 偏土圧が作用する場合の照査
- 1)全体の安定照査
- a)外的安定性の照査
土留め工を含む地盤全体の安定の照査
b)土留め工の安定照査
土圧が大きい方からの掘削底面での主働土圧よりも小さい方の掘削底面での受働土圧が大きいことを確認する。
- 2)部材の照査、弾性領域の確認
改訂版では以下の4つの手法が挙げられている。
- a)梁バネモデルによる両側土留め壁の一体解析
b)弾塑性FEMによる解析
c)対面壁の影響を考慮した弾塑性法
d)背面盛り土等を上載荷重として取り扱った一般手法
- 3)対応方針
- @全体の安定照査のうち地盤全体の安定照査は斜面の安定計算で行い得るのでここでは行わず、土留め工ではサポートしない。
A全体の安定照査のうち主働土圧と受働土圧について土留め工でサポートする。 B部材の照査、弾性領域の確認はa)弾塑性フレームによる逐次計算をサポートする。
§5 参考:現在の土留め工win版との相違点について
参考までに弊社仮設ガイドブック特化版「土留め工win」との相違点について以下記述しておきます。
・撤去時の切ばり反力の算定法が異なります。
・支持力(ガイドブック版では、検討は未サポートであった)の計算機能
・地中連続壁(ガイドブック版では検討は未サポートであった)の対応
・火打での曲げを考慮した検討(ガイドブック版では検討が未サポート)を考慮できるようにした
・最小、最大仮想支持深さ(ガイドブック版では検討が未サポート)に対応
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