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 土木学会 平成22年度全国大会、第65回年次学術講演会

出展概要
●日時 : 2010年 9月 1日〜9月 3日  ●会場 : 北海道大学札幌キャンパス
(Up&Coming 2010年11月号)

 前号では、「平成22年度 橋梁耐震実験研究成果発表会」で発表された最先端の橋梁耐震研究の一部をご紹介いたしました。(詳細はこちら) 今号では9月1日から3日間、北海道大学札幌キャンパスで開催された「土木学会 平成22年度全国大会、第65回年次学術講演会」の様子をレポートします。

 札幌は9月に入っても30度を超えるような厳しい残暑でした。そんな中、第65回年次学術講演会は、北海道大学高等教育機能開発総合センターと工学部に分かれて行われ、約3600編の最先端の研究成果が発表・討論されました。
 今回の全国大会は「土木はつなぐ、“地域”を、“生命(いのち)”を、そして“未来”へ」をテーマに掲げ、3日間で延べ24880名の参加があったそうです。(土木学会北海道支部発表)

▲図1 Engineer's Studio(R) モデル

 橋梁の耐震では、当社製品「UC-win/FRAME(3D)」や「UC-win/WCOMD」を用いた検討・研究が発表され、その利活用について興味深く聴講致しました。
特に興味深かったのは方杖ラーメン橋に対して耐震診断を行った発表です。方杖ラーメン橋では、橋軸方向の地震時に部材に軸力変動が生じます。部材の非線形特性をモーメントと曲率でモデル化したM-φ要素では軸力変動の影響を精密に反映できないため、ファイバー要素を用いて解析されています。ファイバー要素は、材料の非線形特性を直接考慮でき、軸力変動や二軸曲げが生じる構造物に対して非常に有効な要素です。発表でもM-φ要素での結果と、ファイバー要素を用いた解析結果で差が生じるとのことでした。
 UC-win/FRAME(3D)は1つのファイルの中で、M-φ要素を用いた解析とファイバー要素を用いた解析を同時に行うことができ、結果の比較を容易に行なえます。今後も業務でご活用いただきたいと思います。
 午後のセッションではE-ディフェンスを用いた橋梁の耐震研究成果も発表されました。当社が参加した「E-ディフェンスを用いたC1-6実験(実大RC橋脚破壊震動実験)事前解析コンテスト破壊モデル解析部門」(Engineer’s Studio(R)で解析)で対象であった「C1-6試験体」の実験概要なども発表されました。C1-6試験体は想定以上の地震動が発生しても、緊急交通路・緊急輸送路として機能するダメージフリー橋脚のプロトタイプ(次世代型の高耐震RC橋脚)として築造されたものです。特徴は、損傷が発生しやすい柱基部の靭性を増すために、通常のコンクリートの代わりに「高じん性繊維補強モルタル」を使用していることです。事前の予備検討の結果、繊維にはポリプロピレンが採用されています。
 支承条件を固定とした実物大の実験では、地震動レベルを徐々に大きくしながら合計6回の加振が行われています。上部構造の重量を21%増加させ、さらに入力地震動を125%として3回加振しても、ひび割れは生じたもののモルタルの剥離はわずかであり、この橋脚の高い耐震性能が確認されたと発表されています。今後も実用化へ向け、検討を継続されるようです。
 前号P.42〜43のブラインド解析レポートでも述べましたが、加振後の残留変位は小さく、地震動を受けても道路サービスの低下は極めて小さいと思われます。より地震に強い交通インフラ構築のために、実用化が望まれます。
 また、最新の耐震補強工法検討事例など、今後の社会資本維持・更新に関するものが多く発表されていました。施工困難な狭隘な条件や、重機による施工ができない場合などに活用できる様々な工夫がなされた工法が発表されました。

 最終日の午後からは研究討論会「地震リスク解析とリスクマネジメントを考える−現状と課題/事例解析−」を聴講しました。座長は東京都市大学 総合研究所 吉川弘道教授です。吉川先生は当社製品である構造物の地震リスク解析支援ツール「地震リスク解析FrameRisk」の共同開発者です。本研究討論会は、吉川先生の他に6名の研究者の方々が研究成果と事例解析を紹介されました。会場は着席できない方々が出るほど盛況でした。正確には数えることができませんでしたが、椅子の数から100名ほどの聴講があったと推測します。
 発表は「地震リスク解析と要素技術」という基礎研究と、「仮想都市の業態別地震リスクマネジメント」と題した事例解析に分けて行われました。地震リスクは地震工学と信頼性理論の最新技術を駆使して地震災害を定量化するもので、地震防災や事業継続計画(BCP)に有用な数値情報を与えるものといわれています。
 基礎研究部分は、前記の「FrameRisk」で解析・検討することができますが、特に興味深かったのは仮想都市での事例解析です。仮想都市に存在する小売業者が保有の性質が異なる3つの店舗に対して地震リスク評価を行うものでした。地震に対して安全だとか危険という従来の指標ではなく、経済的な“損失”として評価を行い、対策の効果を定量的に評価するものです。適切に対処することで、費用対効果が高い対策を講じることが可能になるとのことです。今後の研究に注目したいと思います。

 以上、札幌で開催された「土木学会 平成22年度全国大会、第65回年次学術講演会」の報告とします。来年は四国で開催予定とのことです。
▲図2 地震リスクカーブ ▲図3 自己資本比率表

■参考・出典・引用
-土木学会 第65回年次学術講演会 DVD版講演概要集
-土木学会 平成22年度全国大会 第65回年次学術講演会実施要領ホームページ: http://www.jsce.or.jp/taikai2010/
-土木学会 平成22年度全国大会 研究討論会 研−22資料
-土木学会 地震工学委員会:
 地震リスクマネジメントと事業継続性小委員会ホームページ: http://www.srm-bcp.com/php/cms5/cms.php?Kiji_Detail&kijiId=15

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