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ちょっと教えたいお

 道路土工指針改訂状況について

■改訂の方向性について
 (社)日本道路協会の道路土工指針検討小委員会では、平成16年6月より要綱、切土・斜面工、盛土工、軟弱地盤対策、擁壁、カルバートの各分科会が設置され、道路土工指針の改訂作業が進められています。改訂全体の方向性については、地盤工学会誌等に改訂作業状況が記載されており、それらを参考にまとめてみました。
 改訂全体の方向性は、以下の4点が挙げられております。

(1) 現行の1要綱+8指針を「道路土工要綱」、「切土工・斜面安定工」、「盛土工」、「軟弱地盤対策工」、「擁壁工」、「カルバート工」、「仮設構造物工」の7工種に再編されます。

▲図1 道路土工指針の再編 1)


(2) 性能照査型に移行するため、道路の重要度と構造物の要求性能が示されます。切土工・斜面安定工を除く土構造物では、安全性能を3段階に分割し、道路管理者が判断する。重要度に応じて、常時・レベル1地震時・レベル2地震時の各照査段階における要求性能が明示されます。

(3) 昭和61年から改訂されていない4つの指針(施工指針・軟弱地盤対策工指針・排水工指針・土質調査指針)については、最新の知見が反映されます。

(4) 新技術の導入を促進するため、従来基準である仕様規定から、対象構造物の性能要求を記載する性能照査型に変更される予定です。


■各指針における基本的な考え方

(1)盛土工指針
 現行の「施工指針」、「排水工指針」、「のり面斜面安定工指針」の盛土工に関係する部分を再構築して、「盛土工」という形で1冊にまとめられます。新技術・新工法の導入を促進するため、性能照査型に移行されます。
 主な改訂点としては、以下の3項目が挙げられます。
  1. 盛土工の要求性能の明確化(新技術・新工法の導入促進/施工管理・品質管理手法の充実化
  2. 現行3指針から盛土工への再体系化(維持管理の充実(防災点検を含む)/SI単位への移行)
  3. 記載データのリニューアルと新技術・新工法・新材料に関する最新知見の充実化(前回改訂時から新たに分かった新技術等の充実化/排水工における設計値やデータ、特定都市河川法への対応)

(2)軟弱地盤対策工指針
 ライフサイクルを考慮した対策選定や試験盛土・情報化施工等で土構造物の挙動を確認しながら、最適な設計・施工法の適用や新技術の採用を踏まえた内容となるようです。


(3)のり面工・斜面安定工指針
 盛土および切土という概念で考えられている道路土工構成を踏まえ、切土法面および自然斜面の安定化を目的としてまとめられています。また、現行指針では、のり面工および斜面安定工の記述が散在していますが、今回改訂では、共通編・のり面工編・斜面安定工編の3編構成となっています。主な改訂点としては、以下の3項目が挙げられます。
  1. 要求性能の明確化(新技術・新工法の導入促進)
  2. 施工管理・品質管理の充実化
  3. 維持管理の充実化

(4)擁壁工指針
 従来の擁壁工指針における考え方を再整理し、道路擁壁が満たさなければならない要求性能が明示されるようです。よって、新技術・新工法を導入することが可能となります。
 また、もたれ式擁壁の地盤反力照査や大型ブロック積擁壁の設計法、盛土補強土壁における各種工法の考え方、補修・補強方法について、記述が追加されるようです。
 改訂点としては、以下の6項目が挙げられます。
  1. 要求性能の明確化(新技術・新工法の導入促進)
  2. 施工管理・品質管理の充実化
  3. 維持管理の充実化
  4. 新技術・新工法における記載内容の充実化
  5. 類似構造物(橋台・カルバート)との整合性(道示との整合性)
  6. 地震時における新たな設計の考え方の導入検討(地震時変形予測等)

(5)カルバート工指針
 現行指針における設計手法等を再整理し、カルバート工での要求性能が明確に示されることとなります。基本的には、道路橋示方書等の記載方法である第1項にカルバート工における要求性能が示され、第2項で従来から示されている設計手法が「みなし規定」として位置づけられるようです。この考え方になると、要求性能を満たした上での新技術や新工法の活用が可能となります。
 改訂点としては、以下の5項目が挙げられます。
  1. 要求仕様の明確化(新技術・新工法の導入促進)
  2. 維持管理の充実化
  3. 新技術・新工法における記載内容の充実化
  4. 耐震性能の取り扱い(耐震設計を行う構造物の明確化および設計手法例の明示)
  5. 道路橋示方書等関連基準類との整合性

(6)仮設構造物工指針
 現行の仮設構造物工指針については経験的な設計手法が多く、新技術や新しい設計手法が仲々反映されない現状があります。今回の改訂では、経験的な設計手法の要求性能が明確になるため、新しい設計手法等を使用することが可能となります。ただし、「みなし規定」以外を使用する場合は、設計手法等の検証が必要となります。


■性能規定とは
 従来の設計基準等に見られる項目、細目規定から、性能照査規定では構造物が確保すべき性能を規定し、従来からある設計手法については、「みなし規定」として手法が記載されています。国際的な性能規定化の中で、道路土工の改訂においても、性能規定化が図られております。

■改訂時期
 現在明確となっている書籍が「のり面工・斜面安定工指針」で7月発刊予定となっております。また、「擁壁工指針」等については、2010年3月頃に発刊される予定となるようです。

■参考文献
1)地盤工学会誌、(社)地盤工学会、Vol.56 No.9 Ser.No.608、p.41
2)土構造物の維持管理−性能規定化に向けて− 講習会、(社)地盤工学会、講習会資料



  
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(Up&Coming '09 盛夏の号掲載)
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