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●サービス開始 2015年 3月
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本サービスは、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋地震のような超巨大地震に伴う津波が、日本列島に押し寄せる状況をシミュレーションし、その結果を提供するものです。
本サービスでは、東北大学の今村文彦教授に提供いただいた津波解析ソルバーを用いて、主に南海トラフの巨大地震による津波を想定したシミュレーションを行います。津波の発生から沿岸まで押し寄せる状態をシミュレーションします。シミュレーションの結果として、津波が押し寄せる様子や、津波高が最も高い地域、選んだ地点における津波高の時刻歴を得ることができます。
このサービスではFocus((公財)計算科学振興財団、神戸市)が所有するスーパーコンピュータ(Focusスパコン)を用いてシミュレーションを行います。スパコンを用いることで、計算規模が大きくても素早く計算を実行することができます。
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▲図1 インド洋津波(2004年)の解析アニメーション(東北大学津波工学研究室) |
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東北大学 津波工学研究室の今村文彦教授に提供いただいたソルバーをもとにしています。本ソルバーの特長は次の通りです。
1.浅水長波理論をもとにした津波の伝播計算
2.ネスティングによる大規模な範囲での解析
3.地震による津波の発生から伝播までの一括シミュレーション
4.堤防や河川などの沿岸部の細かな再現
1.浅水長波理論をもとにした津波の伝播計算
本ソルバーでは、「浅水長波理論」と呼ばれる理論をもとにしています。外洋部と比べて、水深が50m以下の浅い領域での津波は、波高が高くなるなどの特徴的な挙動を示します。浅水長波理論ではこのような水深の浅い部分での津波伝播に特有な現象を考慮することで、沿岸部における津波の挙動をより詳細に再現することができます。この浅水長波理論に基づく方程式を、直交格子状のメッシュ上で有限差分法を用いて計算します。
2.ネスティング手法を用いた大規模な範囲での解析 津波の伝播は発生地点から日本沿岸まで100キロメートル以上に及ぶことがあります。ところが100キロメ―トル四方をメッシュ化して計算を行う場合、詳細な分析をしようとメッシュ間隔を小さくすると、膨大なメッシュの数となり現実的な時間でシミュレーションできません。一方で、メッシュ間隔を大きくすると、計算量は小さくなり時間は短縮できますが、詳細な分析が難しくなります。
そこで本ソルバーでは、津波による被害が大きいと思われる沿岸部のメッシュサイズを細かくし、反対に外洋部ではメッシュサイズを大きくして、間隔が大きいメッシュの中に、小さな間隔のメッシュを含ませる「ネスティング手法」を採用しています。この手法によって解析する範囲の規模を小さくすることなく、沿岸部においては小さい間隔のメッシュを用いることで詳細な津波のシミュレーションを行うことができます。また、計算時間の短縮にも貢献します。
3.地震による津波の発生から伝播までの一括シミュレーション
本ソルバーでは、地震の原因となる断層運動から津波の初期波高を計算し、その初期波高をもとに津波の伝播を計算します。
これにより、仮想的な初期波高を設定するよりも、より現実的な津波現象を再現できます。
4.堤防や河川などの沿岸部の細かな再現
本ソルバーでは、堤防の有無を設定することで、沿岸部において詳しいシミュレーションが行えます。また、河川を考慮することで、津波の河川遡上を再現することができます。
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本サービスでは、内閣府の「南海トラフ巨大地震モデル検討委員会」で検討された地震をもとに津波解析を行います。
本サービスで解析可能な範囲は、茨城県以南の太平洋側、瀬戸内海、九州地方の日本海側、沖縄地方周辺です。解析可能範囲の全体を図2に示します。図2の範囲において、次の各メッシュサイズの地形データが用意されています。
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10m |
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30m |
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90m |
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270m |
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810m |
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2,430m |
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▲図2 解析可能範囲 |
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本サービスでは、津波シミュレーションにより次の結果を得ることができます。
津波が伝わっていく様子のアニメーション 地震発生地域において、津波が発生してからその伝播の様子をアニメーションで見ることができます。
その際、津波が伝播する時間は指定することができます。アニメーション再生にUC-win/Roadを用いることで、360°の様々な角度から津波の伝播の様子を確認することができます。
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▲図3 宮崎での解析例 |
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本サービスで用いる津波解析ソルバーでは、ネスティングといった計算時間短縮のための手法がとられていますが、それでも計算量は大きくなりがちです。そこで、本サービスではFocusが所有するスーパーコンピュータ「Focusスパコン」を用いてシミュレーションを行います。スパコンで計算を行うためにMPIによる並列処理が施されています。
一般のPCでは10日以上かかるシミュレーションでも、Focusスパコンを用いることで5日ほどで計算することができます。
※MPI(Message Passing Interface)
並列処理における標準規格。複数台のコンピュータをまたがる並列化も可能です。 |
(Up&Coming '15 春の号掲載) |
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