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Vol.14
車両軌跡/駐車場作図体験セミナー
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ・体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー有償セミナーを体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。

【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp

●はじめに

 建設ITジャーナリストの家入龍太です。道路の交差点や駐車場などは、様々な車両がスムーズに通過できるように設計することが重要です。

 車両は曲がるときに、車体が複雑な軌跡を描きます。交差点や駐車場などの設計では、小型乗用車からトラッククレーン、セミトレーラーや2台の車両を連結した連接バスやトレーラーまで、車種ごとに異なる軌跡を考慮しながら、縁石や電柱、標識などの位置や車線、停止線などを決めることが必要です。

 特に都心部などでは、ドライバーにあまりストレスを感じさせず、限られた用地を有効に生かした交差点や駐車場を設計することが求められます。

 フォーラムエイトの「車両軌跡作図システム」や「駐車場作図システム」は、こんな設計が求められるとき、大きな力を発揮します。

▲車両軌跡作図システムで作成した
通行許可申請用の車両旋回軌跡図
▲駐車場作図システムで作成した駐車場の図面

●両システムの概要

 車両軌跡作図システムは社団法人自動車技術会の「セミトレーラ及びフルトレーラの直角旋回軌跡図の様式」などに記されている作図理論に基づいて、車両の走行軌跡を計算・作図するシステムです。

 小型の乗用車でも交差点を曲がるときに、外側のタイヤと内側のタイヤの間に「内輪差」ができます。これがトラックやトレーラー、2両連結のトレーラーなどになると内輪差が大きくなるだけでなく、車体が描く軌跡は複雑な曲線になります。

 またドライバーは直線走行の状態から徐々にハンドルを切りながら旋回します。すると車両の旋回半径も連続的に変化します。さらに前後進を繰り返しながらハンドルを切る「切り返し」や縦列駐車などになると、もはや手作業では不可能とも言えるほどの複雑さになります。

 車両軌跡作図システムは、軽トラックや小型乗用車からバス、ダンプトラック、トレーラー連接バスまで様々な車両について、1コーナーだけを旋回する単一旋回や切り返し走行、そしてライン走行と切り返し走行を組み合わせた走行まで、複雑な軌跡をスピーディーに作図できるプログラムです。

 作成した図面は、特殊車両の通行許可申請に必要な車両旋回軌跡図としても使えます。

 一方、駐車場作図システムは、標準駐車場条例や道路構造令に示された駐車マス寸法に基づき、駐車場計画平面図を作図するCADシステムです。

 駐車場の中に駐車マスを効率的に配置し、路上に描く車両進行方向マークも配置できます。同時に面積や駐車台数を集計した数量表も自動作成します。操作は簡単でビジュアルに行えます。

 さらに作成した駐車場の図面を前述の車両軌跡作図システムとも連携させて、車両がスムーズに駐車マスに出入りできるかをシミュレーションすることもできるようになっています。


●体験内容


 7月27日の午後、両システムを使用した「車両軌跡/駐車場作図体験セミナー」がフォーラムエイト東京本社のセミナールームで開催されました。

 当日はまず、駐車場作図システムの概要説明とプログラム操作説明、操作実習を行いました。講師を務めるのはフォーラムエイトUC-1 開発第1Group の岩波さんです。

 まずは駐車場の外形となる駐車区画を作図します。下図を読み込み、駐車区画の外周に沿ってクリックしていきます。このとき、出入り口や通路、構造物など駐車マスを置かない場所も作図しておきます。

 次の作業はいよいよ駐車マスの配置です。マスを一つ一つ、配置していくのではなく、所定の通路の幅に従って効率的に配置できる一括配置機能を使って作業します。

 この機能を起動させると、駐車マスや通路が並んだ列が、画面上に平行に表示され、マウスで配置基点を指定した後、いろいろな方向に動かすと駐車マスの列がマウスの方向を向くように一斉に回転します。駐車区画と平行に数十〜数百台分の駐車マスを一気に配置するのに便利です。

 敷地が斜めになった部分などには個別配置機能を使います。駐車マスを配置する基準線を指定すると、その部分だけに駐車マスを配置できます。

 駐車マスを配置した後の微調整は移動や寸法置換、削除などのコマンドで行うほか、障害者用駐車マスへの置換機能を使って行えます。

 最後に車両の進行方向を矢印で表した路上標識と数量表を配置します。数量表は駐車区画の延べ面積や駐車面積のほか、駐車マスの種類ごとに台数を自動集計して表示する機能を持っています。

 作成した駐車場図面はAutoCADのDWGやDXFのほか、フォーラムエイトの汎用2次元CAD「UC-Draw」のファイル形式であるPSXや電子納品用のSXF、Jw_cadのJWW、JWC形式に出力できます。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲駐車マスを細かく配置したり、
身障者用の駐車マスに変換したりも簡単にできる
▲駐車場作図システムと
車両軌跡作図システムの連携例

 休憩をはさんだ後は、車両軌跡作図システムの操作実習です。講師は同部の水野さんにバトンタッチしました。

 今年5月21日にリリースされた車両軌跡作図システムver2では、走行ルートの一部に切り返しが必要な場合の軌跡を作図するとき、設定を大幅に楽にする「組み合わせ走行」の機能を新設したほか、車両データベースに2台の車体をつないだ連接バスを追加しました。

 また、交差点などで旋回した車両の軌跡が車道境界に接触した場合などに、走行ルートを調整するライン調整機能なども新たに搭載されました。実際のドライバーがハンドルの回転角を細かく調整しながらコーナーを通過する様子を再現できるようにしたものです。

 操作実習は、最も基本的な機能である単一旋回と、UC-win/Roadとの連携機能を生かした組み合わせ走行について行いました。

 単一旋回は、1つのコーナーだけを旋回するときの走行軌跡を求めるものです。車両の車種を選び、車軸中心やタイヤ位置での軌跡を割り当てることで計算条件を設定します。実習では車種にセミトレーラーを選びました。また、軌跡は通行許可申請に使用する車両旋回軌跡図の作成用にあらかじめ用意されたデータを使いました。

 車両のデータは必要に応じて全長や全幅のほか、タイヤ間隔やタイヤ前後の長さなどを細かく設定することができます。また軌跡も旋回角度や旋回前後の走行距離、ハンドルの切り方も通常旋回か車両を止めた状態でハンドルを切っておく「据え切り旋回」を選ぶことができます。

 車両と軌跡の設定が終わり、「軌跡確認」のボタンをクリックすると走行軌跡が自動作図されます。「アニメーション実行」ボタンをクリックすると、車両の動きも再現できます。

 次に駐車場作図システムやUC-win/Roadとの連携させて、組み合わせ走行の機能を使う方法を体験しました。駐車場に入った車両は駐車中の車両を避けながら前進したり、切り返ししたりしながら駐車マスに入ります。この過程の車両軌跡を作図する実習です。

 まず、駐車場作図システムで作った図を読み込み、駐車場内に走行ルートをおおまかに設定します。通過点となる駐車場の入り口や曲がり角に接点を配置し、最後に駐車マスを少し通り過ぎて切り返しのためのハンドルを切って止まる「切り返し点」に節点を配置します。

 すると切り返し点までの車両軌跡が表示されます。軌跡がルートをはみ出している場合には、接点をドラッグアンドドロップすることで調整できます。

 切り返し点からバックして駐車マスに入れる軌跡は、まるで自分が運転手になったように画面上でハンドルの切り返しと前後進を繰り返しながら求めていきます。これで車両が問題なく駐車マスに入れられることが確認できました。

 続いて、駐車場の図面と作成した車両軌跡のデータをUC-win/Roadに読み込み、3次元バーチャルリアリティー(VR)でシミュレーションを行いました。

 車両軌跡作図システムの計算結果を「OpenMicroSim」というファイル形式で書き出しておきます。UC-win/Roadに駐車場の図面を読み込んだ後、OpenMicroSim形式ので軌跡のデータを読み込み、「再生」ボタンをクリックすると、3次元モデル上で車両が駐車場内を走行し、切り返しを行って駐車マスに入るまでの様子をリアルに再現できます。

 このシミュレーションはもちろん、厳密な軌跡計算に基づいたものなので、実際の車両の動きを設計段階で可視化したものと言えます。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲車両軌跡作図システムに備えられている車両データ。
カスタマイズも可能だ
▲UC-win/Roadと駐車場作図システム、
車両軌跡作図システムの連携による駐車シミュレーション


●イエイリコメントと提案

 車両軌跡作図システムと駐車場作図システムは、2次元で作図を行うものですが、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)的な側面を持っています。

 車両軌跡作図システムは、車両が交差点や駐車場内を走行する際に、他の車両や構造物、ラインなどと接触しないかを確認する動的な「干渉チェック」を行うシステムとして機能します。

 また駐車場作図システムは、駐車マスや駐車区画の図形などに属性情報が設定されており、面積や駐車マスなどの自動数量計算を行えるようになっています。これもBIMソフトとそっくりの仕組みです。さらにUC-win/Roadなど他システムと連携して、作成したデータを生かす点もBIMソフトに似ていますね。


●製品の今後の展望

 車両軌跡作図システムと駐車場作図システムの今後の展開としては、大きく2つの方向性があるでしょう。実車への展開とBIMへの展開です。

 フォーラムエイトは実車の10分の1スケールのモデルカーを制御する「RoboCar」というカーロボティクスプラットフォームを開発しており、UC-win/Roadのドライビングシミュレーション機能とも連携して自動駐車ができるようになっています。この連携技術を実車にも拡張し、駐車場の空きスペースに誘導したり、自動駐車したりするシステムも実現しそうです。

▲UC-win/Roadのドライビングシミュレーション機能と連携する「RoboCar®」。
この技術に車両軌跡作図システムを連携させて実車に拡張すると自動駐車も夢ではなさそうだ

 またBIMへの展開では車両軌跡作図システムを3次元化し、走行軌跡を3Dモデルにすることにより、クレーン車などの重機や資材を積んだ台車が工事現場の仮設材をうまく通過できるかを干渉チェックで確かめたりすることが簡単にできるようになりそうです。

 BIMソフトのプラグインにして、Allplanなどの上で直接、車両軌跡作図システムを動かせるようにする方法もあるでしょう。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲フォーラムエイトでは車両軌跡作図/駐車場設計/自動駐車と空き駐車場検索を組み合わせた
パーキングソリューション「VR-Cloud® Parking NAVI」を提供している

     
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(Up&Coming '12 秋の号掲載)
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