フォーラムエイト・ラリージャパン2024 訪問記
未来技術の交差点:
フォーラムエイト・ラリージャパン2024と自動運転の挑戦
大阪大学大学院准教授 福田 知弘
フォーラムエイト・ラリージャパン2024へ
ラリーの世界最高峰の大会、世界ラリー選手権(WRC)は、一年を通してモンテカルロやスウェーデン、ケニア、フィンランドなど、世界各地で開催される。2024年は2023年、2022年に引き続き日本もその舞台の一つとなり、「FIA世界ラリー選手権フォーラムエイト・ラリージャパン2024」が11月21日から24日まで、愛知県と岐阜県を舞台に行われた。この大会は年間チャンピオンを決定する最終戦でもあり、国内外の注目が集まった(図1)。
豊田スタジアムでの開幕とブルーインパルスの共演
初日、ラリーカーの迫力あるエンジン音に先立ち、会場の空には航空自衛隊ブルーインパルスが登場。豊田市の豊田スタジアム上空を舞台に、白い飛行機雲で描かれるハート形や美しい円形など、華麗なアクロバット飛行を披露した(図2)。その場に居合わせた観客たちは空を見上げ、歓声を上げながらカメラを向けた。背後のスタジアムではラリーカーが試運転中で、空と地上で繰り広げられる迫力の共演が大会の幕開けを彩った。
岡崎、三河湖など多彩なコース
大会中には、豊田スタジアムの2.15kmの特設コースや(図3)、岡崎中央総合公園周辺の岡崎SSS(2.54km)(図4)、そして最終SSである三河湖エリアの「ウルフパワーステージ」(13.98km)など、多彩なコースが設定された。リエゾンも含めた全行程1000km強をドライバーたちが駆け巡った。
特に注目を集めたのは、三河湖エリアのステージだ。年間チャンピオンや「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」の総合優勝者がここで決定することもあり、選手たちの緊張感はひときわ高かった。私はこのステージでの走行を直接見る機会はなかったが、競技を終えたラリーカーが会場に戻る場面に居合わせ、その興奮を間近で感じることができた(図5)。ラリーを終えたドライバーがマシンから降り、家族やスタッフと抱擁する姿は感動もの。激しいバトルを物語るような車体と、充実感と緊張感が入り混じった選手たちの表情は、まさにラリーの醍醐味を象徴していた。
恵那市での自動運転バスの試乗
ラリー観戦に加え、岐阜県恵那市で始まる自動運転バスの実証実験にも参加した(図7)。このプロジェクトは、過疎化や高齢化が進む地域の交通課題を解決するために進められている。試乗したバスは事前に設定されたルートをスムーズに走行し、停車場所でも正確な制御を見せた。運転中は安全のため係員が乗車していたが、基本操作は全て自動化されており、未来の公共交通機関を体感する機会となった。
地元の住民にとって、こうした技術は単なる便利さを超えて、生活の質を高め、地域を活性化させる可能性がある。この実証実験が成功すれば、他の都市や地域で同様の取り組みが広がることが期待される。
技術と地域の未来を感じて
今回の訪問では、ラリーのスピードと迫力を堪能するとともに、最先端技術が地域社会にどのように貢献できるかを考える貴重な機会となった。ラリーのように精密さと挑戦が求められる競技と、自動運転のように安全性と効率性が重視される技術。そのどちらもが未来を切り開く重要な要素であることを再認識した(図8)。
「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」と恵那市での体験を通じて、スポーツとテクノロジー、地域社会の可能性が交差する瞬間を目の当たりにすることができた。このような取り組みが、地域活性化や新しい文化の形成につながっていくことを願いたい。
フォーラムエイト・ラリージャパン2025は11月6日(木)~9日(日)。今年も楽しみにしている。
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(Up&Coming '25 新年号掲載)
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