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 サポートトピックス・CAD/UC-1シリーズ

橋脚の設計・3D配筋(部分係数法・H29道示対応)のなぜ?解決フォーラム

コーベルの設計の考え方について

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本製品において、はりをコーベルとして照査する場合の設計の考え方や計算仕様に関するお問合せを多くいただいております。そこで今回は、本製品におけるコーベルの判定基準や照査内容について解説いたします。

コーベルの判定条件

平成29年道路橋示方書・同解説(以下、道示)Ⅲ5.1.2(7)では、以下の条件に該当する場合にコーベルの設計を行います。


図1 コーベルの判定

張出し部に支承がある場合 a/h<1.0
張出し部に支承がない場合 l/h<1.0
l :張出し長
a :最外支承から柱付根までの距離
h :張出し部の柱付根の断面高


上記条件に該当する場合、鉛直方向断面に対して引張主鉄筋を引張弦材,コンクリートを圧縮斜材としたトラスを仮定し計算を行います。なお、本製品では、下記の場合はコーベルとみなさずに通常のはりとして設計します。


(1)水平方向断面の場合
荷重の載荷点がはり上面でありタイドアーチ的な耐荷機構とならないことに加え、断面の圧縮側が十分に支持されていないため、通常のはりとして設計します。


(2)下側引張の場合
コーベルの前提条件であるトラス構造にならないため、鉛直方向断面が下側引張となる場合、通常のはりとして設計します。


(3)コーベルとしてのタイドアーチ的な耐荷機構が成立していない場合
コーベルとしての要件を満たさない場合、通常のはりとして設計する必要があります。コーベルとして判定される場合でも、前提とする耐荷機構が成立しないと判断される場合は、「考え方|共通」画面-「コーベルとなる場合も通常のはりとして計算する」にチェックしていただくことで、通常のはりとして設計可能です。


※(2),(3)は日本道路協会 質問回答(以下、道示QA)(No.Ⅲ-5-12)参考


形状及び鉄筋の配置の照査

コーベルが引張弦材に相当する鉄筋の引張力及びアーチリブに相当するコンクリートの圧縮力によるタイドアーチ的な耐荷機構として成立するかを判定するために、形状及び鉄筋配置において下記項目の照査を行います。


1)側面用心鉄筋量が必要鉄筋量を満たすか。
2)上面最下段鉄筋位置が上面からの有効高1/4以内か。
3)支承位置の有効高が支持端の有効高1/2以上か。
4)側面鉄筋最大間隔が300mm以下か。


また現在は、コーベルの場合のせん断照査時にせん断補強鉄筋を計算上考慮しないため、その決定根拠とするために道示Ⅲ式(5.2.4)のせん断補強鉄筋量の照査を行っています。


※「平成29年道路橋示方書に基づく道路橋の設計計算例 平成30年6月 公益社団法人 日本道路協会」(以下、道示計算例(P.410))の【補足】では、コーベル設計時にせん断補強鉄筋量照査が必要と記載されております。


曲げモーメントに対する照査

耐荷性能では、曲げモーメント(①~③)が限界状態3における制限値以下となるかを照査します。


図2 曲げモーメント算定

①鉛直力Vによる曲げモーメントM1=V・x
②水平力Hによる曲げモーメントM2=H・(y+t+(0.85d))
③曲げモーメントの特性値Md= M1+M2


x:はり付け根から鉛直力作用位置までの距離(m)
y:はり天端から水平力作用位置までの高さ(m)
t:はり上面からトラスの上端(有効高dの位置)までの距離(m)
d:有効高(m)


※②は「コンクリート道路橋設計便覧 平成6年2月」(P477~478)参考


また、限界状態3における制限値算定に用いる破壊抵抗曲げモーメントの特性値Mucは、道示Ⅲ5.7.1(6)より、下式で算出します。
Muc=0.85d・σsy・As
 σsy:鉄筋の降伏強度(N/mm2)
 As :引張鉄筋量(mm2)


※道示Ⅲ5.5.1(6)より、 降伏曲げモーメントMydに対する照査は行わず、 Md≦Mucを満たせば限界状態1 も満たすとします。


耐久性能照査では、下記で求めた応力度が制限値以下となるかを照査します。
• コンクリートの圧縮応力度:はり理論で求めた曲げモーメントを用いて道示Ⅲ5.4.1(3)に従い算定。
• 鉄筋の引張応力度:トラス理論で求めた曲げモーメントを用いて下記式で算出(道示QA No.Ⅲ-6-1参考)。
 σs=Md/0.85d/As


せん断力に対する照査

せん断力に対する照査では、断面力ははり理論により算定します。
耐荷性能では、安全側となるようせん断補強鉄筋量を0とし、コンクリートが負担できるせん断力Scのみを考慮し算出した制限値を用いて照査を行います(道示Ⅲ5.7.2(7)及び道示Ⅳ5.2.7(1)1)ii)解説)。


また、コンクリートが負担できるせん断力の割増係数cdcは、道示Ⅳ(P.81)ii),2)を参考に考慮しています。ただし、せん断照査位置より外側に支承がない場合、せん断スパンは0としてcdc及びせん断補強鉄筋が負担するせん断力の低減係数cdsを0とします(道示計算例(P.484)②解説,(P.489)解説)。


また、Φuc・τcmax・bw・d/k、τcmax・bw・dの上限値は適用しません(道示Ⅳ(P.81)ii))。


耐久性能では、内部鋼材の防食及びコンクリートの部材の疲労に対する応力度照査を行います。なお、せん断補強鉄筋が負担できるせん断力Ssを0とすると応力度が発生せず危険側の設計となるため、コーベルと判定される場合も通常のはりと同様にせん断補強鉄筋を考慮した応力度照査を行っています。

(Up&Coming '25 盛夏号掲載)

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