Support Topics
 サポートトピックス・CAD/UC-1シリーズ

矢板式河川護岸の設計・3DCADのなぜ?解決フォーラム

鋼矢板の断面係数の低減について

保守・サポートサービス関連情報

本製品は、自立式の鋼矢板、鋼管矢板、コンクリート矢板に対応しております。この中で鋼矢板は災害復旧などでも使用されることが多いため、鋼矢板の設計に関する多くのお問い合わせをいただいております。今回はよくあるお問い合わせの中から鋼矢板の断面係数の低減について有効率と腐食に関する内容をご紹介します。

鋼矢板の有効率について

本製品ではU形鋼矢板とハット型鋼矢板に対応しております。基本的な設計計算の内容は同じですが、ハット形は壁体構築後の中立軸と鋼矢板1枚あたりの中立軸が一致する断面形状であるため、従来のU形鋼矢板と異なり継手効率による断面性能の低減を考慮する必要がないことが設計上の大きな利点と考えられます。この低減は設計計算では有効率の設定に影響するため、各基準類の記載内容や、具体的にどのような値を設定すればよいか、というお問い合わせを多くいただきます。
以下に各基準類の有効率に関する記載をまとめました。プログラムの初期値は、これらの記載を参考にしております。


図1 U型鋼矢板とハット型鋼矢板

<災害復旧工事の設計要領(R6)>
「鋼矢板の継手効率による断面係数を低減する方法がある。継ぎ手効率の低減率は土質や擁壁の構造等による拘束の程度によって異なるが、およそ0.6~1.0の範囲である。笠コンクリートを施さない鋼矢板護岸については0.6程度を使用するのが望ましい。なお、建設省の河川改修工事における護岸鋼矢板の継手効率は、下記のような取扱いをしている。
・ 護岸鋼矢板の継手効率について(参考)
応力計算をする場合の鋼矢板護岸の鋼矢板壁単位巾当たりの断面性能に対する継手効率は、笠コンクリートや鋼矢板の根入れ等が十分確保できる場合に、U形については断面二次モーメント(I)に関する継手効率を0.8, 断面係数(Z)に関する継手効率を1.0とする。また、ハット形を護岸鋼矢板に使用する場合については、継手効率(水断面二次モーメント、断面係数)を1.0とする。ただし、Changの公式により最終根入れ長さを求める場合には断面二次モーメントはU形、ハット形ともに1.0とする。」


<自立式鋼矢板擁壁設計マニュアル(H29)>

項目 柔支持 断面性能の有効率
ハット形鋼矢板 U形鋼矢板
断面二次モーメント 根入れ長の計算 全断面有効(100%)
変位、断面力計算 全断面有効(100%) 全断面有効(80%)
断面係数 応力度の計算 全断面有効(100%)

<道路土工 仮設構造物工指針(H11)>

計算種類 有効率
断面二次モーメント 根入れ計算に用いるβ算出用 1.00
断面力、変位計算に用いるβ算出用 0.45(0.80)
断面力、変位計算用 0.45(0.80)
断面係数 応力度計算 0.60(0.80)

※( )内は、コンクリートで矢板頭部から、30.0cm程度の深さまで連結した場合の有効率。

プログラムの初期値(新規データ作成時)

項目 有効率
ハット形鋼矢板 U形鋼矢板
頭部コンクリートあり 頭部コンクリートなし
根入れ計算に用いるβ算出用 1.00(100%) 1.00(100%) 1.00(100%)
断面力、変位計算に用いるβ算出用 1.00(100%) 0.80(80%) 0.60(60%)
断面二次モーメントIに対して 1.00(100%) 0.80(80%) 0.60(60%)
断面係数Zに対して 1.00(100%) 1.00(100%) 1.00(100%)

腐食による低減係数はどのように決定すればよいか

腐食の考慮は[部材]-[前面矢板壁材]画面で設定することができます。鋼矢板の腐食については「鋼矢板-設計から施工まで-(2014年版)社団法人 鋼管杭・鋼矢板技術協会」などに記載がありますが、本製品では同文献に準拠して、鋼材種類により自動決定を行うことができます。同文献には、U型鋼矢板9種類、ハット型鋼矢板2種類の腐食代と低減係数の関係をプロットしたグラフが示されており、本製品では対応する鋼矢板を選択した場合は文献のグラフに従い、指定された腐食代t1と腐食代の比αより低減係数をグラフから読み取り自動決定することができます。


図2 [前面矢板壁(鋼矢板)]画面 図3  [鋼矢板の腐食低減係数]画面

(Up&Coming '25 春の号掲載)

LOADING