土留め掘削に伴う地盤変形挙動を検討するFEM解析は、大別すると簡易法と逐次解析法の2種類があります。「土留め工の設計・3DCAD」では、周辺地盤の影響検討において、地盤のみを線形弾性でモデル化し弾塑性法などで計算した壁体変位を強制変位として与える簡易法(強制変位法)を一つのプログラムで実施することができます。また、もう一方の解析手法である逐次解析法は地盤と土留め壁および支保工全体をモデル化してマルチステージ解析を行う方法です。今回は両手法の違いやプログラムの対応についてご紹介いたします。
土留め掘削のFEM解析
簡易法と逐次解析法の特徴は表1、表2の通りです。「土留め工の設計・3DCAD」では簡易法を行うことができます。本製品では、元の計算条件からFEM解析に必要な有限要素メッシュや解析条件を自動で生成しますので、FEM解析の経験が浅くても簡単に結果を得ることができます。逐次解析法については「土留め工の設計・3DCAD」では対応しておりませんが、「Geo Engineer's Studio」などで検討することができます。なお、あくまで簡易法のデータになりますが、「土留め工の設計・3DCAD」から「Geo Engineer's Studio」データエクスポート(図1)も可能です。
表1 簡易法と逐次解析法
表2 両解析法の比較
図1 データエクスポート
・簡易法
地盤のみを線形弾性でモデル化し、弾塑性法などで計算した壁体変位を強制変位として与えて地盤の変形を計算する方法です。計算手順は図2の通りです。「土留め工の設計・3DCAD」ではFEM解析に必要なモデルや解析条件、強制変位として与える弾塑性法で計算した壁体変位などは全て自動で生成されます。強制変位は弾塑性法で得た壁体変位を与えるのが一般的ですが、本製品では直接入力(csvインポート)することもできますので掘削時に計測した壁体変位を入力して検討することもできます。
図2 計算手順(「土留め工の設計・3DCAD」)
図3 「土留め工の設計・3DCAD」(簡易法)
・逐次解析法
逐次解析法は地盤だけでなく土留め壁および支保工なども含めた全体をモデル化して解析する方法です。支保工、土留め壁、周辺地盤や構造物を含む全体をモデル化し、掘削過程を考慮したマルチステージ解析を行います。実際の施工段階を疑似できる、地中構造物も含めた近接構造物の影響を検討できる、壁体や支保工の断面力を得ることができる、などの特長がありますが、簡易法に比べて必要な解析条件の設定が多く、モデル化により結果が大きく影響を受けることがあり、解析結果の評価が難しいといった点もあります。
図4 「Geo Engineer's Studio」(逐次解析法)