Users Product Utilization Report
ユーザ製品活用レポート

株式会社東京建設コンサルタント 九州支社 河川施設部 上級技師
近藤 嘉人

使用製品 揚排水機場の設計計算Ver.4

「河川構造物の耐震性能照査指針(H24)」に準拠し、揚排水機場の設計計算を行うプログラム。ここでは、出水時の内水排除を目的とした排水機場について、レベル2地震動時の耐震性能照査を実施した。

揚排水機場の設計計算を使用した河川構造物の耐震性能照査について

株式会社東京建設コンサルタント 九州支社 河川施設部 上級技師
近藤 嘉人(こんどう・ひろと)

2020年4月東京建設コンサルタント入社。河川構造物に関する設計・計画、BIM/CIM業務に従事。

はじめに

 今回、「揚排水機場の設計計算」を用いて、排水機場の耐震性能照査を行った。当該排水機場については、常用の排水機場でなく出水時の内水排除を目的とされていることからレベル2地震動において求められる耐震性能は「耐震性能3※」となる。

ここでは、排水機場の耐震性能照査について、「揚排水機場の設計計算」を用いた主な操作等について解説をする。

※耐震性能3:地震による損傷が限定的なものにとどまり、揚排水機場としての機能の回復が速やかに行い得る性能

出典:「河川構造物の耐震性能照査指針-Ⅴ.揚排水機場編- 平成24年2月 国土交通省」より


計画概要

  
  • 河川構造物である排水機場のレベル2地震動時の耐震性能照査を行った。

  • 【施設諸元】
    ・施設用途:排水機場
    ・断面:(B)23.0m×(H)11.45m
    ・延長:L=26.0m
  •   

図1 断面図(計算ソフト画面)

主な設計フロー及びソフト操作手順

揚排水機場の設計計算の入力項目及び操作手順については以下に示すとおりである。
ソフトの操作手順としては、入力フローに従い、各種設計条件等を入力し、耐力照査を行ったのち耐力不足箇所についての対策諸元の検討、再度計算し諸元の決定を行うものである。

「揚排水機場の設計計算」簡易操作手順

1. 「基本データ」にて、設計条件(対象外力、照査方法、設計震度、上載荷重、地下水位等)の入力
2. 「材料」にて、土木躯体のコンクリートの設計基準強度等や鉄筋材質の入力
3. 「地層データ」にて、地質調査結果等より地層データ(単位重量や強度定数等)の入力
4. 「形状(躯体)」にて、土木躯体の形状を入力
5. 「杭配置」にて、杭径、杭間隔等を入力
6. 「配筋」にて、鉄筋径やかぶり等を入力
7. 「地盤バネ」にて、地盤バネ条件を入力
8. 「荷重」にて、建屋荷重等の任意荷重の入力、荷重の組み合わせの設定
9. 「考え方」にて、各種計算条件やフレームモデル条件の設定
10. 曲げ耐力、せん断耐力について照査を行い、耐力が不足する場合は対策諸元を検討し、再度計算を行う

 

図2 入力フロー(計算ソフトより)

 

【入力画面】設計条件等の入力

入力フローに従い、設計条件、地層データ、躯体形状等の情報を入力。
計算条件を設定し、計算を行う。

 

 

【計算結果】耐力不足箇所の確認

計算結果を基に、耐力不足箇所の確認を行う。
耐力不足箇所について、対策諸元の検討及び再度計算を行い、全部材について許容値を満足する対策諸元を決定。

 

対策諸元の検討

 上記の計算結果をもとに、曲げ耐力、せん断耐力不足箇所について対策諸元(主鉄筋のランクアップ、せん断補強筋の設置等)について検討を行い、再度計算を行った。

今回の検討では、せん断耐力の不足箇所についてせん断補強筋にて対策を行い、全部材に対して許容値を満足する対策諸元(せん断補強筋の鉄筋径及びピッチ)を決定し、設計に反映させた。

【計算結果より対策諸元の決定】

ソフトウェア利用のメリット

「揚排水機場の設計計算」は、ソフトの入力フローに従って設計条件、地盤条件、構造諸元(土木躯体の形状や配筋等)を入力する形となっているため、入力のミス等は少なくなると感じました。

また、各種諸元の中には内部計算か直接入力することが可能であるので、内部計算を行いそのまま計算が流せることはもちろん、直接入力する場合は自分で設定した値が正しいかどうかの判断も可能です。各種設定値の入力については、ヘルプに図解とともに考え方について記載があるためスムーズに設定できる点、形状や地盤条件、内水を考慮する箇所等は設定した後にメイン画面にて確認しながら作業ができるためミスを減らせる点が、非常に有用だと思いました。

土木躯体の形状が複雑な場合等、荷重のかけ方や配筋等のモデル作成が複雑になることもあるため、実際に思い描いているように土木躯体の形状や配筋等モデルが設定できているかについては注意を払いながら、形状によっては汎用的なソフトを利用するなどしつつ、今後も活用していきたいと思います。


おわりに

今回の紹介では、レベル2地震動の説明となりましたが、レベル1地震時の検討はもちろん常時の検討も可能であり、液状化の判定等一連の検討をソフト内で行うことが可能である点や、河川構造物の耐震性能照査指針以外の適用基準についても設けられている点から、活用場面は広く、今後も利用していきたいと思います。

また、「揚排水機場の設計計算」を使用するにあたりフォーラムエイト様には、ソフトに関して様々な相談を行い、解析方法やソフトの使用方法についてのアドバイス、不具合の修正等迅速にご対応いただいており、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 

(Up&Coming '24 盛夏号掲載)



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