本連載は、「システム開発」をテーマとしたコーナーです。フォーラムエイトのシステム開発の実績にもとづいて、毎回さまざまなトピックを紹介していきます。第22回は、UC-win/Roadプラグインのカスタマイズを行うことでのPLATEAUユースケース適用について解説します。

執筆 組込システム開発チーム

VRシステムをはじめとした関連分野における展開を推進。組込システム開発、マイコンソフトウェアの受託開発、コンサルティングを中心とした事業を展開。

UC-win/Roadプラグインカスタマイズによる
PLATEAUユースケースへの取り組み

■はじめに

2020年、国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトである「PLATEAU」がスタートしました※1。都市計画法に基づく都市計画基礎調査で得られた建物データを活用し、全国的な3D都市モデルの整備・活用が行われ、オープンデータとして利用可能です。

また、PLATEAUを活用した具体的事例としてユースケースの開発が行われています。全国の都市を対象に様々なユースケースが集合することで、地域課題の解決策に資することが可能だと考えられます。今回は、弊社3DVRソフトウェア「UC-win/Road」のプラグインにより開発したユースケースについてご紹介します。

■PLATEAUユースケースの概要

PLATEAUのユースケースは、2023年2月現在75事例が掲載されています※2。都市計画・まちづくり、防災、地域活性化・観光、環境・エネルギーなど様々な分野に渡ります。

PLATEAUより提供される3D都市モデルは、表1に示すLOD(Levelof Details)の中で、LOD1以上が提供されています。そのため、景観シミュレーションなど建物のテクスチャが必要なケース、ドローンのシミュレーションなどミクロな輸送計画にも役立てることができます。また、自治体が新しくユースケースを開発する場合は、ガイドブック※3によりドリル形式でユースケースの計画を策定することができます。

LOD

提供されるエリア

内容

用途

LOD0

対象のすべてのエリア

平面に投影したもの。
高さ情報がない

LOD1

対象のすべてのエリア

直方体の組み合わせで構成されたもの。
箱モデル

高さ情報の活用

LOD2

特定のエリア

屋根や壁などを再現したモデル

景観シミュレーション
都市計画・建築規制

LOD3

限定されたエリア

LOD2をさらに詳細に表現し、開口部や立体交差などを表現できるように
したモデル

自動運転、ドローン配送

LOD4

一部の建築物

建物の内部までモデル化したもの

屋内のシミュレーション

▲表1 3D都市モデルの概要※4

■UC-win/RoadによるPLATEAUユースケース開発

UC-win/Roadでは、PLATEAUから提供される3D都市モデルをCityGML形式としてインポートして使用できます。図1の通り、建物のモデルと属性情報が表示されていることが確認できます。こちらはUC-win/Roadの標準機能で使用できます。


▲図1 UC-win/RoadでPLATEAUの3D都市モデルを読み込んだ例

標準機能だけでも可視化等のシミュレーション等は可能ですが、図2のように、例えば環境・エネルギー分野のユースケースを開発したい場合、UC-win/Roadのプラグインである「環境アセスプラグイン」を使用することが有効です。太陽光パネル反射一括処理や壁面日照・反射シミュレーションの機能を活用することで、ユースケースに必要な機能の開発を実現することができます。


▲図2 環境アセスプラグインを例としたPLATEAUユースケース開発

表2に弊社が開発に関わったPLATEAUユースケース一覧をまとめています。太陽光に関係するユースケースが多く、環境アセスプラグインの機能を使用して開発を行ったケースがあります。例えば「ドローンによる建築物外壁検査の支援」の場合は、環境アセスプラグインの反射光の予測機能(図3)と壁面日照・反射シミュレーションを活用して、反射光の継続時間をヒートマップ表示したものです(図4~図5)。

ユースケース名

用途

内容

太陽光発電のポテンシャル推計及び
反射シミュレーション

環境・エネルギー

建築物の屋根に太陽光パネルを設置し、反射光のシミュレーションを行う
ことで太陽光発電量の推計を行った。

ドローンによる建築物外壁検査の支援

インフラ管理

建物外壁のタイル剥落の点検のために必要な日照条件の調査をVR上で行い、
現地調査のコストを削減した。

地域エネルギーマネジメント
支援システム

環境・エネルギー

建物の時刻別エネルギー需要や太陽光発電のポテンシャルといった
地域エネルギー需給の予測を行うシステムを開発した。

ウォーカブルな空間設計のための
スマート・プランニング

都市計画・まちづくり

道路空間再編の将来イメージとして、道路拡幅をVRで可視化し、
回遊行動の変化をVR上でアンケートを行った。

▲表2 弊社が関わったPLATEAUユースケース一覧(2023年2月時点で公表のもの)


▲図3 環境アセスプラグインによる反射光の予測


▲図4 「ドローンによる建築物外壁検査の支援」にて環境アセスプラグインを使用した事例(太陽光の反射継続時間をヒートマップ表示)


▲図5 「ドローンによる建築物外壁検査の支援」にて環境アセスプラグインを使用した事例(反射結果の表示(全光束))

■おわりに

今回は UC-win/Roadプラグインによる PLATEAUユースケースへの取り組みについてご紹介しました。環境アセスプラグインを例に取り上げましたが、防災や自動運転といった様々な分野をカバーするプラグインもリリース しており、これらの活用によって 多分野での ユースケース開発 に貢献してまいります。 今後の開発に ご期待下さい。

●注釈

※1 PLATEAUトップページhttps://www.mlit.go.jp/plateau/
※2 PLATEAUユースケース一覧https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/
※3 PLATEAUユースケース開発ガイドhttps://www.mlit.go.jp/plateau/file/libraries/doc/plateau_1st_step_ver01.pdf
※4 TOPIC 1|3D都市モデルでできること[2/2] 3D都市モデルの特徴と活用法https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/tpc01-2/


(Up&Coming '23 春の号掲載)



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